パブコメ送りました:湖南市「読書の魅力」種まきプラン(案)に対して


先日、第2期湖南市教育振興基本計画(案)のパブリックコメント募集に対して意見を送ったところです。

今回は、湖南市「読書の魅力」種まきプラン(案)(第3次湖南市子ども読書活動推進計画(案))に対してパブリックコメントを送りました。

この案自体は次のファイルです。文書と資料が分かれています。

私が送った意見は次のようなものです。

■レファレンスサービスについての情報の周知
 案のp.9に、「図書館における推進」の「施策の方向」が示されています。
 この部分について、私は「図書館におけるレファレンスサービスが事実に関する知識を得るために有用であることが、より多くの子どもに知られるようにする」という趣旨を追加することを提案します。
 図書館のレファレンスサービスの有用性は、いまだ広く知られていないと思われます。レファレンスサービスは、子どもの好奇心に対しても、日常の生活においても、役に立つ情報をもたらしてくれるものです。これに関して、国立国会図書館が中心となって運営している、レファレンス共同データベースは、レファレンスサービスの事例の情報を提供しています。以下のURLで参照できます。(ご存じかもしれませんが念のために示します。)
https://crd.ndl.go.jp/reference/
https://twitter.com/crd_tweet
 このデータベースに、以下のような事例が掲載されています。これらは、日常で感じる困りごとや好奇心に対応してくれる有益なサービス提供の例だと思われます。
「葬儀に参列してショックを受けた子どもに読む絵本を教えてほしい。」
「宇宙は何色か知りたい。」
「東京(コミケ)に今度行くんですけど、行くにあたって準備するものはありますか。」
「6歳の息子が、サンタクロースはいないと父親に言われてしまった。本人はいると信じたい気持ちもあり、悩んでいる。なんとかできないか。プレゼントを渡す直前の母親より。」
 こうした図書館の機能をぜひ広く紹介していっていただきたいです。
■電子図書館の利用促進
 案のp.9に、「図書館における推進」の「施策の方向」が示されています。この中に、「誰でも、いつでも、どこででも利用できる読書環境の充実」という項目があります。また、案のpp.18-19で、「障がいのある子どもに対する推進」の「施策の方向」について触れられています。
 この部分について、私は「湖南市電子図書館の利便性について情報提供を図り、また、必要に応じて操作方法の説明を行なう」という趣旨を追加することを提案します。
 湖南市電子図書館では、湖南市立図書館の利用者カード保持者に、電子書籍の形式で図書を貸し出すサービスを提供しています。この利用の際にデバイスが必要ですが、パソコン、タブレット、スマートフォンに対応しているようです。
 この電子図書館のサービスは、利用環境さえあれば、「誰でもいつでもどこででも」利用できるものです。特に、種々の事情で(場合によっては障がいのために)、図書館・移動図書館まで行って本を選ぶことが困難な子どもにとっては、電子図書館こそが図書を利用できる貴重な機会となるでしょう。
 なお、提示されている案では、全体的に、デジタルデバイスに関する見解をなるべく示さないようにしているようです。デジタルデバイスの悪影響を懸念する意見もあるかとは思いますが、これについても、「デジタルデバイスの悪影響がありえるとしても、それでもなお便益があると考えられる方々に、特に情報提供等をしていく」という注記をすることで、より幅広い合意が得られるのではないかと考えます。
■図書館の利用が無料であることのPR
 案のp.19で、「外国籍の子どもに対する推進」が述べられています。
 この部分について、私は「外国籍の子どもや保護者に対して、日本の公立図書館での閲覧・貸し出しは無料だということを強調してPRしていく」という旨を追加することを提案します。
 私が個人的にブラジル国籍の方と話していたときに、その方が「図書館サービスは有料だ」と考えていたことがわかりました。その後調べてみたところ、確かに世界的に見た場合に、図書館サービスが有料である場合もあるということがわかりました。このような、国・地域の事情の違いからくる誤解によって図書館の利用が妨げられることは、不幸でしかないでしょう。それが子どもの読書の妨げになるならなおさらです。
 ぜひ、日本の公立図書館のサービスに関する、正確な情報の提供を進めていただきたいです。
(参考:クーンツほか編、山本順⼀監訳、竹内ほか訳『IFLA公共図書館サービスガイドライン第2版』2016年:pp.51-52)
■予算増額のみが目標であることの確認
 案のp.23の「第3次計画指標の設定」の項目で、「指標2 学校図書館における1校あたりの年間新規購入冊数」を設定しています。
 この部分について私は、これが単に予算増額を要求する努力をするための目標の設定であることを明示した方がよいと考えます。また、そのように明示するか否かに関わらず、このような目標の設定が本計画にとって適切なのかどうかは行政内部で検討していただくとよいと思います。
 上記の目標設定は、「限られた予算の中で、購入する図書の単価を下げて、購入冊数を増やす」というものではないと理解されます。そうであれば、この目標は、単に図書購入のための予算の増額を目指すものです。それは市長が市議会に提出する予算案に反映され、それが市議会で可決されることで実現できるでしょう。この過程で、教育部局が努力するのは、市の内部で予算案に自分たちの予算を反映させるべく、他部署と調整し、また、市議会議員を説得することだということになります。他方で、この過程で他の部署が求める予算を削減すると、市民生活の他の(子どもの読書以外の)側面の厚生が低減する可能性があります。このように、この目標設定は「市民の他の利益を犠牲にしてでも、本計画のための予算を優先するべきだ」と本計画が主張していることを意味します。換言すれば、上記のような予算の調整プロセスで「妥協させられたくない」という主張になってしまっています。
 このように、上記の目標は、市民の多様な利益を調整しながら集合的決定を行なう部分に直接的に踏み込んでしまっているという意味で、すぐれて政治的な目標です。上記目標設定をするであれば、市の内部でその意味の理解を共有しておいた方がよいと思われます。そして、その理解の上でこうした目標を設定していることが理解されるように、単に予算増額を要求する努力をするための目標の設定であることを明示しておくことを提案します。
■学校司書に関する計画指標の操作化・解釈の妥当性
 案のp.23の「第3次計画指標の設定」の項目で、「指標5 学校図書館を活用した授業実績」を設定し、その説明として、「学校司書の活用状況および子どもたちの学習における図書の活用状況を読み取ること」ができる旨が記されています。
 この部分について、私は、この指標から「学校司書の活用状況」を読み取ることはできないので、この説明を削除し、必要であれば別に、例えば、学校司書の対応回数を、種類別に集計してそれを指標とすることを提案します。
 現在の表現にのっとると、「学校図書館を活用した授業」で学校司書が活用されていないこともありえます。また、本案のpp.14-18の記述によれば、学校司書は、授業で活用されるほか、より広く学校での読書活動の推進にあたるのだと理解されます。ですから、「学校図書館を活用した授業」以外の側面で学校司書が活用されていることもありえます。要するに、「学校図書館を活用した授業実績」は、「学校司書が活用されていること」を意味しません。概念の操作化・指標の解釈に問題があります。
 学校司書が活用されている度合いを知りたいのであれば、それをストレートに測れる指標を考えた方がよいでしょう。そこで、私は、学校司書の対応回数を種類別に集計しておいてそれを指標とすることができるだろうと考えます。
 もしかすると、案で述べられている「学校図書館を活用した授業」とは「学校司書が活用されているもの」だ、という暗黙の前提があるのかもしれません。もしそうなのであれば、明示的に「学校司書を活用した」授業実績が指標とされるべきだと思います。
■主体的判断能力の形成に資する書籍の収集・紹介・レファレンス
 この計画案のなかで、全体的に、主体性や主体的な読書の重要性が幾度にもわたり強調されておりました。例えば、pp.13-18の「小学校・中学校における推進」の項目内では、次のような記述があります。p.13では「課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくむとともに、主体的に学習に取り組む態度を養う」という目標を掲げています。p.15では「自主的な読書習慣の定着に課題があると考えられます」と記されています。同じくp.15に「(学校司書は)子どもたちの読書活動や学習が主体的に進んでいくようにサポートをします」とあります。p.17には「主体的に目的を持って読むことのできる自立した子どもを育てる指導を推進していきます」という記述があります。
 これらについて、私は、本計画の基本方針に、「従属的でない主体的判断のできる個人を育成するという観点から、個人が抱く主体的な疑問を尊重してその解決に資するような、図書館等でのサービスの利用を促す。この際、どのような主体的な疑問も尊重される」という考え方を明記することを提案します。
 社会を構成する人間は、人の言うことを聞きさえすればよいのではなく、自分で判断することが必要になります。その能力を子どもが形成していくことが必要で、そこに読書が果たす役割も大きいと考えます。
 とりわけ、日本国民であれば18歳で選挙権を得ますし、その他の各国民も同様の年代で政治的判断を迫られますが、こうした政治的判断は、極めて高度な主体的判断に相当します。主権者として、ルールを変更するかどうかを含めた判断を迫られますから、既存のルールに縛られた考え方しかできない人間は主権者として不完全です。
 他方で、湖南市においては既成の秩序に子どもたちを「従わせる」という考え方が強固であると理解されます。このままでは子どもの主体的判断能力が養われがたいと思われます。これは学校教育全体の問題だと考えますが、とりわけ図書の活用という知的な観点において、主体的判断能力の形成に資する方策をとることが大切だと思われます。
 具体的には例えば以下のような方法がありえます。
・スウェーデンの教育実践などに関する書籍を小中学校に導入し、その内容を紹介する。
・「どうして学校の先生はエラそうにしてるの?」「学校の校則を守るべきかどうか知りたい」といったまさに「主体的」な疑問について、図書室・図書館がレファレンスサービスで解決しうることを、子どもたちに紹介する。
(上記について、例えば、以下の文献が参考になると思われます。
川崎一彦ほか『みんなの教育 スウェーデンの「人を育てる」国家戦略』ミツイパブリッシング、2018年:特にpp.154-173
山崎聡一郎『こども六法』弘文堂、2019年
内田良『学校ハラスメント』朝日新聞出版、2019年)
■「感想の自由」の保障
 この計画案のなかで、全体的に、主体性や主体的な読書の重要性が幾度にもわたり強調されておりました。例えば、pp.13-18の「小学校・中学校における推進」の項目内では、次のような記述があります。p.13では「課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくむとともに、主体的に学習に取り組む態度を養う」という目標を掲げています。p.15では「自主的な読書習慣の定着に課題があると考えられます」と記されています。同じくp.15に「(学校司書は)子どもたちの読書活動や学習が主体的に進んでいくようにサポートをします」とあります。p.17には「主体的に目的を持って読むことのできる自立した子どもを育てる指導を推進していきます」という記述があります。
 これらについて、私は、本計画の基本方針に、「子どもが本を読んで抱くどのような感想も許容され、尊重される。いわば『感想の自由』が保障される。単に内心の自由を保障するというのみではない。社会的に事実上、感想の自由が制約される、という事態も防ぐ」という考え方を明記することを提案します。
 本計画案にあるように、主体的に読書を進めて楽しむことが望ましいとすれば、各自が読書をする際に、自分なりに感想を抱き、そこに喜びを見出して、それが次の書籍を読む内発的動機になる、という循環があるとよいかと思います。
 ここで私は、「自分なりの感想」が大切であると強調します。
 学校教科としての「国語」において、出題される問題にはわかりにくいものがあります。例えば小説を読ませて「この人物のこの場面での心情として適切なものを選べ」という問題の「正解」は、必ずしも論理的に導かれるものではありません。また、論説文等についても、極めて難解な文章が題材とする問題がしばしば出されて、「この部分はどういうことか」を答えさせることがあります。
 私はこれらについて以下のように考えます。まず、小説の理解において、ある作品内での人物の心情の解釈が制限されるべきだと思えません。また、論説文においても、「この文章は難しい。悪文だ。もっと簡単にわかりやすく書ける」という感想を読者がまず持って、表明できることが重要かと思います(例えば授業や読書感想文において)。どのような文章作品に対しても、感想が自由であるべきだと思います。
 他方で、読者の語彙の不足や文法上の理解の不足によって誤読が生じることは望ましくありません。この点は言語教育の重要な点だと考えます。また別の観点から、「感想」に多様性がある、ということそのものを、例えば教室内で共有することは、非常に意義があると考えます。
「感想の自由」がないと次のような事態を生むと思います。
「中学2年生のAさんには、国語教育で示される、登場人物の心情の読み取りに、いつも納得ができません。Aさんの感想はいつも先生が述べる『正解』とは異なります。この経験の積み重ねによって、Aさんにとって、小説を読むことは苦痛になりました。Aさんには、小説の並んだ図書館の棚は、自分には理解できない量子力学の問題集が並んでいるように見えます。読み方の『答え』がどうしてもわからないのです。だからAさんはもう図書館に行かないつもりです。」
 そうではなく、どのような感想も許容されるのだ、ということを子どもに伝えることが肝要かと思います。

真剣に検討してもらえたらありがたいですね。。


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