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商業bl感想『メロンの味』

メロンの味 絵津鼓
(2023.9.16記)

まずこの文を投稿するかどうか本当に悩みました。
作品の中身を話す感想というより、作品を読んだ後私がどう感じたかとかの部分が強くなってくるので、今回のこの文に関しては作品の感想として読むのは推奨しないです!!
上下巻読み終わった直後、なんともいえない気持ちになりました。
このお話をどうにもフィクションとして捉えることが出来ず、馴れ初めや世界観などからは十分ファンタジー(私は日頃からBLはファンタジーと言っています)と考えることも出来るはずなのに、妙に生々しくて温く皮膚に張り付いてくるような独特な空気を感じました。
以下から本作のネタバレをしていきますのでまだ読んでない方はご注意ください!また、これから綴る文の中で私の自己解釈や考え方について述べる部分がたくさん出てきますので、気を悪くされたら申し訳ありません。
上巻割と楽しく、ギャグの感じもテンポ良くて、絵津鼓先生独特の間が心地よくて好きだな〜なんて思いながら読んでたんですけど、下巻になり様々なことが明かされていくにつれてこの話は自分が思っているような話ではないかも、と気付きました。
人間は苦しんでいる人を見ていられないから、無意識に、自分が楽になるために当人に向かって良くなる "期待" をしてしまう。それ以外に何をすればいいかわからないから。自分が普通で相手が普通じゃない状態だと思いこんで、そんな状態からあまつさえ "救おう" としている、考えれば考えるほど偽善の状態。
それは相手のことを見下す行為だし、苦しんでる人を救おうとする自分に酔ってるだけ。「何かしてあげなきゃ。自分にできることはなんだ」って探して、それを行ったとして、自分が行ったものに相当する対価(例えば相手の苦しみが薄れるなど)がなければ、自分は色々やったのに響かなかったんだなと勝手に落ち込む。
また理解してくれない、何をやっても無駄、響かない。
『どうしてまた飲んでくれないの?本当に治したいって思ってる?これ以上一緒に居たら私も病んでしまう…』
木内さんの元カノがどのような方だったかはわからないけれど、木内さんが好きで木内さんを救いたくて、薬を勧めたり服薬指導をしたりしていたのは真実だと思う。でもやっぱり私が好きになれないのは、「あなたのために私はこんなにも色々やってるのになんでわかってくれないの?」という考えがきっと内心あったんだろうなと思ったから。やってきたことは相手のためというよりも自分のための自己満足なのに。
その挙げ句にあなたと一緒にいると私まで駄目になりそうだなんて。確かにそうする他なかったのかもしれない、それも自衛の一種、だけど残された方は何を考えて生きていけばいいのか、そんなことを考えると救われないし浮かばれない、苦しめてる。
勝手に自分に酔って、勝手に気持ちよくなって、自分の偽善が響かなくなったら、自分のかけた魔法の効果が切れてしまったら、投げ出して相手のせいにする。
相手に寄り添うってなんだろう、ナカジョーくんみたいに肯定も否定もせず急かさず、ただ何も言わずそばにいるだけでいいのかな。でもきっとそうできる人間は数えられるほどしかいない。あくまでも私の自己解釈ではあるけれど、何か抱えている人間には手を差し伸べたくなるのが人間心理、踏み込みすぎず上手くやっていくことができたナカジョーくんだったからこそ木内さんは楽だったのかな。
そう思うとあの2人の関係性ってすごいなって思いました。
『本当は死んじゃいたいんだ』
『全部がグレーに見えて、頭ではわかっていても生きていくために生きられない』
ここの一連の文は全部すごく心に残ったし、今後生きていく上できっと忘れることはないだろうなと思います。
生きてて特別その時辛いことがあったわけでもなく、突然涙が出てくる、この意味も考えなければいけないなと思ってて。
これを心に傷を負っているからで片付けていいのかなって。
でも寄り添いすぎることは時に相手を傷つけるということもわかってるから、そうなるとやはりナカジョーくんの対応が1番なのでしょうか。
何に着目してもそこにしか着地しない。
私の視野や考え方が狭いのかもしれないけれど、この話はただ「辛かった、悲しかった、切なかった」だけじゃ終わらせられないと思います。
この話の中では最後は2人は寄り添い合うことができて、2人だけの形を見つけ歩み寄っていくわけで、これをハッピーエンドと解釈する人が多数派なのも分かってます。
だけど、この作品が本であり、表現されたものである以上、たとえBLコミックスであろうと作者から読者へ伝えたい何かしらの意図はあると思ってます。
それに関して私の予想や個人的な考えをああだこうだ言うつもりは今回はありませんが、最後の先生のあとがきから先生も同じような経験があったと推測できる、つまりこれはやっぱりファンタジーなんかじゃないんです。
私のような人間が我が物顔で語るのは違うかもしれないし、不快に思う方もいると思います。
でも私のような人間でも考えさせられるような、そんな凄い作品だったなと思います。
これから先この本のことは一生忘れないと思うし、忘れてはいけないなと思います。
色々ごちゃごちゃ言ってますが、本当に本当に大好きな作品でした。

https://x.com/konatrium/status/1703025742286897195?s=46から引用

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