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粉奈丸ベスト3 いい思い出編

粉奈丸がオールタイムベスト的に、22歳という浅い経験の中で感じたことを書き溜めたもの。
そのうち書き足すかもしれません。

ベスト食事体験

1位 まかないの自作からあげ

仕事をしていて、まかないを頻繁に任された。

余りの廃棄食材がわかりやすく出る店じゃなかったけど、まかないはかなり自由度が高い。
ちょっと食材を新しく買うくらいは許されていて、どちらかと言えばお昼ご飯担当でしかない。
ここで自分の料理の個性をゆっくり魅せるのは、なかなか楽しかった。

初めてまかないを任された日のこと。
からあげが得意だったから、こだわって、最初だから許されるうちに時間をかけてからあげを作った。

自分の中で確立したレシピのある、自分の中で傑作のからあげ。
醤油の味が濃く、カリっと衣が厚く、少し大きく、ナツメグスパイスの効いたロマンのあるからあげ。
誰が食べても美味しいとは言わないかもしれないけど、自分の好きが伝わるからあげ。
たぶん料理が好きなのも、こういうこだわりが認められる感じがするからだ。

この時は油が、揚げる場所が違った。
詳しくは言えないけど業務用のフライヤーがあって、油替え直前のタイミングならこういうことが許された。なかなかルールの緩い飲食の会社だった。

美味しすぎた。
尊敬していた人に「十分に美味い」と言わしめた。
自分の中で一番の食事体験が、自分で調理した自分の好きな物だったことに小さな誇りを持てた。

料理を褒められて、それだけで自分の体験の価値も倍々に増すような。そんな気もした。

2位 深夜の初一蘭

深夜遅くまで起きていた。
いつだったかもはや覚えていないけど、父親に「ラーメンを食べに行こう」と持ち掛けられた。
兄と僕を連れて、国道を抜けて、その時は24時間営業だった豚骨ラーメンのチェーン店「一蘭」に行った。

良くない自覚がある父親として、仲直りみたいな意識もあったのかもしれない。ただただ息子と深夜に豚骨ラーメン屋に行ってみたかったのかもしれない。僕らも博多で生まれ育って、それなりに豚骨ラーメンには馴染みがある。そんじょそこらの豚骨ラーメンチェーンがね……

いや、うますぎるんかい。

誰にも見られていない。特に話すこともない。ただグッと来る小麦と旨味が元にある匂いが湯気からしている。
なんか、美味いな、と思った。
「なんか」だった。

雰囲気による美味しさの増幅を感じたのもこの時が初めてだった。
ちょっと美味しすぎた。それからしばらく、一蘭には行っていなかった。

久しぶりに行くとそうでもない。
人の味覚ってそんなもんだ。
いち知覚のひとつでしかないのだろう。

3位 海辺のシーフードヌードル

不登校だった。
別に個性とも思っていなくて、ただただそういう経歴だった。

子供と接するのが好きな、テニスと釣りと散歩が趣味のオジサンみたいな小学校教師に、プライベートで遊びに連れていってもらったことがある。
理由はよくわからない。療育的な側面は多少あるにしても、説教臭いオジサンじゃなかった。

その人は、学校に行きなさいとは直接言わなかった。親から信頼されているのか、たまに2人で外に出ていた。

うっすらハゲていて、40代かも50代かもわからなくて、ただほがらかだった。
にこやかに楽しむさまを見せつけた。

僕はテニスにも釣りにもハマらなかった。散歩は10年経ってからハマった。
今思うといい人だった。

ある日の釣り堀みたいな海辺みたいな場所で、日清のカップ麺、シーフードヌードルを食べた。
シーフードヌードルはその時に初めて食べた。

兄がシーフードを苦手とするからか、家には基本的に置いていない。
自分には買う権限がない。
当時小学5年生だ。
少しだけ期待が高まる。

お湯はどう沸かすんだ、と思っていると携帯用コンロを取り出して、どこからか取り出した水を火にかけた。

何を話したのかは覚えていない。話していないのかもしれない。

お湯を注がれて、ただ待った。
15時だったかの仄暗く寒い曇り空で、潮風を浴びる。
別にこんなオジサンに話すことはないな、と思っていた。

少しだけ期待を寄せて暖を取るように持ち、割り箸で麺を啜った。

こんなに美味しかったのか、と思った。
この人はいい人なんだろうな、と思った。

今思うと、いい人だった。

ベストツボ笑い

1位 完璧に酔っぱらった友人が私の世界の見方をしていた時

笑いすぎて死ぬかと思った。
体感で15分間笑い続けた。

ホームパーティーというのをやってみることになった。それも結構最近のことだ。

アルコールを入れる人は入れて、僕はほんの少し注がれた日本酒みたいなものとノンアルコールサワーでごまかしていたと思う。
ピザとスーパーの惣菜とお菓子で、年上の友達に混ざって時間を楽しむ。
あんまやったことないな~とは思っていたが、こういうのはテンプレートに沿うほど楽しいのかもしれない。

男5人で、昼から夕方まで友達の家にいた。

ジョンウィックだったかの映画も見終わりやることがなくなって、自分が持ち込んだボードゲームをすることになった。

内容もそこそこに笑ったが、死ぬかと思ったのは内容じゃない。
5人中の1人が特にベロベロに酔っぱらっていて、それでいて普段のゲラ度の50倍くらいゲラになっている。なんでも笑うし、真顔が笑っているような状態。

尋常じゃないくらい笑みを浮かべている。
ちょっと危険なぐらいニコニコしていた。
そんなデフォルトでビリケンさんみたいな感じだったっけ。

アルコールの呼気と笑気とも言えそうなそれに包まれた、あまり換気のきいていない友達の家のリビング。

私の世界の見方は、大喜利に対して秘密裏にワードを当てはめるようなゲームだ。
5人プレイの時は山札から2枚、親以外から選ばれた4枚の単語カードが配られる。
1つの面白お題に対して、捲られた6枚の面白単語から選ぶゲーム。

だいたいどうやっても面白くなるけど、「面白いことで笑いましょう」という雰囲気が共有されていないとやりづらい。
酒の席にはうってつけのゲームだと思う。

その人が親になって4回目くらいのある時。
その「提出したカード」が何故か増えていた。

意気揚々と「ななまいめぇ~!」と何にも気づかずその人が声を上げ、右手には謎のカード。
他全員でその場をいったん止めて笑い転げた。

振り返ってもそんなに笑えることではない。

おかしい、なにかがおかしい。笑気、笑気、息を吸っても吐いても笑いが止まらない。一旦後ろを向いて、腹を抱えながら止まない笑いを抑えた。なんならちょっと太ももを殴った。

「笑い死ぬかもしれない」ってこれか、と思った。あとから友人に聞いても「(粉奈丸)がそんなに笑ってんの初めて見た」と言われた。

もちろんアルコールによって理性が鈍っているからに他ならないんだけど、「魔物に吞まれる」みたいな感覚があった。

2位 こんにちパンクール「長文回答」

Youtubeで申し訳ないけど、実際ツボ笑いってそんなもんよ。
ここからはエッセイじゃなくて、よかったコンテンツみたいな。

悪ノリの極致。
それを大喜利得意な人間がやり続ける。

顔芸も含めて最高に笑ったけど、この動画が上がったのもかなり最近だ。
ジョンともさんの顔が真面目なのに面白いから、大喜利ブラックジャックも面白かった。

笑い続けるって体験において、単体の面白さというよりは「つられ笑い」が圧倒的に強い。17分ある動画だけれど、一本の映画を見たくらいの満足感が得られた。

3位 オードリーANN「前前前世」

これはもうあんまり語るべきことがない。

上手くいかないことばかりの中学3年生、ラジオアプリの存在を知った僕はリアルタイムで深夜にこの会話を聴いた。

この人達ってすごいわ、と思った。
前フリみたいになる会話もずっと面白い。
ラジオスターだ。
こうやってお喋りしてぇよ~と思う人、この世にいっぱいいるとは思うが、出会えはしない。

誰とはしゃいでも辛くなる時に、布団の中で耳から入ってくるこんな会話にいつも救われていた。


こういう○○ベスト3を何個か編纂して分けたので、とりあえず最初に手入れの必要ないものだけ上げてみました。

こなまるでした。

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