映画「鳩の撃退法」考察


「鳩の撃退法」のネタバレを含んだ考察です。ご注意ください。

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映画「鳩の撃退法」をようやく見ました。

最初見た時、なにこれ、完全な肩透かしを喰らった!?と思ってしまいました。

実は私、これをどんでん返しものとしての紹介記事をどこかで読んだのですが、え?どこがどんでん返しなの?と最初全くわからなかったのです。

一応色々と考えながら見ていたつもりだったのですが、最後に、え、だからなに???と、全くすっきりしませんでした。

これは、何か映画の見方を間違えた???

そうか、これは、一部が事実で、一部が津田のフィクションでできている映画だったのか!

そこで、映画の内容をもう一度整理してみることにしました。


津田は、幸地に会った時から、

事実と事実から、間に何が起こったのか想像する

ということを話し、実行しています。

なので、どこからどこまでがフィクションなのかということについては、津田がその場にいたシーンは実際にあったこと(事実)ではないか、それ以外のことがフィクションなのではないかという解釈をしました。

この前提で考えていくと、

デリヘルの送迎のバイトをしていたのは事実
古本屋や店主、そこで会った母子の存在は事実
幸地秀吉にコーヒー屋で会ったのは事実
(だけれど、名前は聞いてないし、仕事も水商売と想像しただけ。しかし、のちにスピンのマスターの名前として、沼本が幸地秀吉と名前を出したので幸地秀吉という人は存在はする)
郵便配達の晴山君を送ったのは事実
社長から、津田が使ったお札で床屋が大変な目にあったことを聞いたのは事実

...などなどわかるわけですが、ここで一つ大事なことに気づきました。

床屋の義姉が一万円札を借りに来たくだりですが、これ自体は、社長から聞いた話なので事実だと思うのです。

が、その義姉の顔が、高円寺のバーのママと同じ坂井真紀さんだった!

...これは、何かの大ヒントなのではないかと思いました。

つまり、

津田が直接会ったことのない人の顔は、津田の想像上のものでしかない

わけです。床屋の義姉に会ったことがないので、高円寺のバーのママと同じような顔で想像していたということですね...。

ということは、本通り裏のボス・倉田健次郎のことは、チラチラ噂に聞いて、そのうち恐れるようになるにもかかわらず、

実は津田は倉田の顔を知らない

のです。

これ、大きなポイントなのではないかと思いました。

つまり何が言いたいのかと言うと... 津田は実は倉田健次郎に会っているのに気づいていないだけでは???

もっと言っちゃうと、

倉田健次郎って、幸地秀吉なんじゃない??

ということです。私はこう考えてから、あぁ、と色々納得がいきました。

スピンのマスター(幸地秀吉)でありオーナー(倉田健次郎)で、どちらかが源氏名?ビジネス名?みたいなものなのかなと。

その示唆として、デリヘルの社長が、銀幕女優の名前を女の子たちにつけていたりするのかな???なんて思ったりもしました。

だとすると、津田もペンネームなのか? それとも津田が本名で、ペンネームは別にあるのか、そう言った話もあってもよかったのかな? もしかして、幸地が読んでいた「蝶番」の作者?なんておもってたりするのですが…

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さて、夏に倉田健次郎が床屋で、津田のことを嗅ぎまわっていたというくだりがあります。
倉田健次郎が床屋に散髪に来たのは事実なのでしょう。
しかしこれは、偽札事件ですっかりおびえた床屋から聞いた話で、かなり事実にバイアスがかかっている可能性が大です。しかも、映像は、津田の想像した倉田の顔で進んでいきます。

が、このシーン、実は、

ピーターパンの本が気になっていたコーヒー屋で会った男、幸地=倉田が、また津田に会って本を借りたかったから会いたかっただけなのでは?

という風に見たら、全然不自然じゃなかったのです!

これで考えると、津田は、倉田が欲しがっているものとして、偽札の三千万円+二万円と、その二万円をはさめていた本をおまけのように差し出すわけですが、

その倉田が欲しがっているものは、なんのことはない

ピーターパンの本がメインなのではないか。
(つがいの鳩云々は、できれば二万円も持ってたら返してねーくらいの意味しかなかった?
また、寄付団体に持って行ったりしていないようなので、倉田は二万円が偽札とはわかっているようですね)

津田は偽札事件に巻き込まれてそれでドンから追われているように感じて、おびえて街から出ていくまでしますが、

実は、倉田(幸地)は、ピーターパンの本が借りたかっただけだったのではないか???

だからこそ、偽札事件やら失踪事件やらは、あるにはあったけれど、実は津田とは何の関係もなくて、実は、津田が、倉田(幸地)にピーターパンの本を貸して返してもらっただけの話だったところへ、津田が全てを想像で膨らませて書いていただけではないか?と思いました。

こうすると、物語の見え方が、全て変わってきます。

実は津田が振り回されることになった全ての起因は、本の貸し借りにあったのだと。本当にそれだけ。あとは基本的に全部フィクション。

また、最後のシーンで、倉田が幸地の陰のように見えなくもないシーンがあるのですよね。
そもそもあのシーン、会ったことない倉田が、津田の想像と同じ顔をしているのもおかしな話です。なので、あそこはその直後の倉田と幸地の会話も含め、津田の想像であると考えました。でも2人が会話してる想像してるから、津田は2人が同一人物とは気づいてないのかなー。

そうすると、あ、この話、めちゃくちゃ面白い!と感じるようになりました。

しかしながら、

・ では何故幸地はコーヒー屋に来なくなったのか?

→ 幸地はこれで少なくとも奥さんと別れる決意をして家を売り、他のところに引っ越したようなので、朝帰りの時間潰しをする必要がなくなった?とも考えられますが、本が借りたかったら、一度くらいコーヒー屋に来ればいいのに...と思わなくもない。

・ 新聞で行方不明になっていた家族の名前は何と記載されていたのか?
あの男の顔だったのか??

→ 顔写真や名前は、うちのテレビの画面でははっきりしなかったので、幸地なのかはわからなかったのですが、津田がショックを受けているので多分そうなのでしょう。が、奥さんの名前が奈々美と言う長さではなかったように思いました。ただ、不動産屋の女が話をしているので、奥さんが妊娠をしていたというくだりも事実っぽいです。ただの離婚なら、失踪事件にはならないと思うので、そこはどうなのか???と。

・ また男女の死体が上がった事件が、失踪や偽札と関係あるのかは断言できない気がします。

これらはちょっとひっかかっている部分ではあります。

個人的には、一家失踪事件は、幸地の奥さんの駆け落ち(ただ、相手が晴山かどうかは確実ではないかな?)と関係あるように思います。

あと、晴山と言えば、加賀まりこが、晴山を送って欲しいと頼んできた時に、私に会ったことは言わないでと言っていたのは、あれはなんだったんだろう???と思います。

というわけで、諸所まだ解決していない部分はありますが、

倉田=幸地

これは、かなり確信を持っています。

まだ、何故、津田がタイトルを「鳩の撃退法」としたのか、ここには行き当たらず...なので、真相の半分以上わかってないのかも知れませんが...。


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