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In your shadow

掌から零れ落ちた
雪は静かに
春に向かう小川に流れて溶けてミルク色

冬の日差しは残酷に優しく
束の間の陽だまりにも容赦無く
それでも絶えること無く
注ぎ続けてくれていた
あなたの木漏れ日は
握り返すには
暖かく、大きすぎた

微笑みは消えて溶けて
春の風に紛れて馴染んで
頬を撫でて香り続ける
いっそ、跡形も無く
空の彼方へ消えてくれたなら
面影を追いかけて
草原を揺らす風の中で
立ち止まって振り仰ぐ空は澄みやかに

飲み干したカップの奥底から覗く
珈琲の染みから
あなたの微笑みが
瞳の輝きが、柔らかな眼差しが
舞い降りてくる

まるで優しさに浸された監獄

飛び立つ準備はできていたはずの綿毛は
素知らぬ顔して
進めないふり知らぬ素振り

レースの刺繍を
編んでは解いて
また織り上げてはことほぐふり

これからあなたが向かうのは
真空の世界
色も無く、無音の拡がり

どうか、どうか
瞳の奥に澄んだ
翠玉のきらめきは
どうか、消えないで
今日もお願い
その瞳を通して世界を見つめて
灰色の海を硝子で砕いて
翠で煌めきさして
眠りについてね

ビルを反射した光の中で
守る灯を失った街灯守りの
独り言は
反響して
巡る季節の中で
今日もあなたが落として消えた
きらめきのかけらを拾い続ける

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