発達障害日記0819(『ペリリュー ―外伝― 3 ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 』の話

・戦争漫画の話なんですけど。『ペリリュー ―外伝― 3 ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 』という作品。

 わたし、この作品が大好きで。
 外伝、と言うからには本編があって、そちらもすごく好きだったけど、外伝になってますます面白い。面白いと言うのが正しいのかわからないけれど。

・ひとつの出来事が、関わったたくさんの人や土地に大きな傷をつけていく。あまりにも影響が大きいから、その目線は本当に多岐に渡る、・・・渡ってしまう

 本編は11巻完結。戦争に前向きではない青年を主人公に、丁寧な取材から得たグロテスクな事実、関わった人々の心の動き、それらを(最終的には)良質なエンターテインメントに仕上げていて、そのバランス感覚がすごく好きでした。
 第二次世界大戦におけるペリリュー島の戦闘、というものを、わたしはこの作品を読むまで知らなかったんだけど。日本兵においては、情報と兵站が断絶したゲリラ戦。ペリリューの昔からの住民からしてみれば、侵略国同士の戦闘に選ばれてしまった土地。アメリカ兵からすれば、豊富な物資はあるものの知人・友人が目の前で死んでいく激戦地。日本に残った妻からすれば、妹からすれば、生存者の孫からすれば。
 戦争の社会影響はあまりに大きい。何せ社会構造の中にがっちりと殺し・殺されることを組み込んだシステムで、ひとたびそれが始まれば何人たりともそこから逃れることはできない。それが社会構造というもの。
 『ペリリュー ―外伝― 3 ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 』は、その時代の人ひとりひとりにスポットを当てる。その時代に生きた人であれば、絶対に戦争の影響を受けている。例外は、ない。

・作者の武田一義氏のインタビュー記事を読んだことがある。その上でこの題材を描くことに敬意を表したいのです。

 戦争に関わる膨大な資料の読み込みや、少ない生存者への取材など、すごく誠実に物語のウラを固めていることが伺えて信頼がおけるなって。
 そして同時に、関係者に直接関わるがために描きづらいこともあると思う。
 柳田國男が、日本各地の風習や信仰について紹介する際に、「とはいえこの地方の人たちがそのような人々の末裔と言っているわけではない」というような、少し弁明めいたクッションをはさむなと思っていて。これはフィールドワークをするときの基本である、とは、大学の史料学なんかでも読んだことがあるのだけど。
 それでもそれを踏み越えて伝えないといけないことがある。描くのはとてつもなく難易度の高いことだと思う。
 それでもこの題材から逃げずに描き続ける、その気力に深い敬意を表したいと、そう思うのでした。あと面白いので。

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