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あの毛その毛

ふと寝ころんだ時に奴はいた。

髪の毛なら、グデンと平たく畳の上にいるから平行では見辛い。
掃除機をかけている時には、垂直から見下ろすので、髪の毛の存在にはすぐ気づく。

だがしかし、『その毛』的3次元な存在だからして、寝ころんだ時にも高さで主張しており、いやが上にもそこにピローンと見える。
そして、垂直方向、上から見下ろしてもそこに『その毛』がある。

安心してください。穿いていますから。
なんならボクサーパンツなので、隙間もほぼ無いはずです。
夏場は短パンでそこには隙間はあるけれど、先ずウォールマリアであるボクサーパンツは越えられないはず。

だが、人類は敗北する。

冬場にスエットを履いていても、床に『その毛』は居た。
ウォールマリアを突破したとしても、太もも、ふくらはぎにはトラップとして絡まる毛がある。

しかし、それでも人類は敗北するのだ。

100歩譲って、重力に逆らわず床にいる『その毛』を認めたとしても、
どうしてたまに発生源より高い所にいるのか。
例えば、机の上などに木目かと思っていたら、そこに3次元の『その毛』が居たりする。
どうやって、彼らは下から上へと移動が可能なのか。

もっと妥協をすれば、脱衣所や服を着替える場所に落ちているのならまだしも、全く関係のないソファの上にも『その毛』はいる。
瞬間移動が出来るのか?
はたまた、人間の見ていない時には自らの意志で移動するのであろうか?

それとも、仮説として『その毛』は生殖をしていて、股間以外でも発生をしているのだろうか?

もしこの仮説通りなら、絶対にあり得ない場所で発見される『その毛』にも納得がいく。

エロ0%の小難しい本にも挟まっていた事がある。
股間から抜け落ちる、と言う定説だけではその存在に説明がつかない。

そして、自生するのならば人類はどんどん『その毛』に追い込まれていくのではなかろうか?
考えてもみて欲しい、満員電車で目の前の人の方に『その毛』がチョロっと出ている所を。
カッコいい男性、綺麗な女性の肩から天に向かって、セーターやウールの毛と一緒に黒い『その毛』が出ているのだ。
誰がその人に『その毛』が出てますよ?取りましょうか?なんて言えるのだ?

もし、自分で気づいたのならもう外に出るのが嫌になる。
もちろん、教えられるなんてもっと嫌だ。

しかしいつ、どこに『その毛』がいるのか、皆目見当がつかない。
隣の人にボールペンを貸したら、腕時計に『その毛』がちょろんと出ているかも。
硬貨で払ったら、一緒に出て来るかも。
神出鬼没、予測不可能。

『その毛』が。

人類が『その毛』に支配される日は近い。


自己肯定が爆上がりします! いつの日か独立できたらいいな…