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航空機事故から学ぶ:書類より重すぎた機体

2003年1月8日、米国北Carolina州CharlotteからGreen Villebergへ向かう予定のエアミッドウェスト航空の運航によるUS Airways Express 5481便Beech1900D型機(N233YV)は、19名の乗客を乗せて午前8時半過ぎにRWY18Rから離陸を試みた。機長は25歳の女性で副操縦士は27歳の男性と、若手二人が操縦していた。8:45am離陸後gear-upしたところ、機種が54度まで急上昇し、失速して、1,100ftの高さから滑走路脇のUS Airwaysの格納庫横へ真っ逆さまに墜落炎上した。

空港消防隊により鎮火したが、21名全員の死亡が確認され、事故から5時間後にはNTSB(連邦政府運輸安全委員会)調査官らによって事故調査が始まった。滑走路上に異物があり、それによってプロペラが損傷していなかったかを確認したが、問題なかった。事故機から回収されたCVRとFDRには極端な機首上げ以外に異常は認めなかった。直前に離陸したUS AirwaysのCRJ機のwake turbulenceに巻き込まれていなかったかも検証したが、先行機は事故機の機首上げ地点から遥か前方で離陸しており、関連はなかったと判定された。

elevetorケーブルの長さが異なり、turn buckleの調整が誤っていたのではないかとの疑念が生じたが、このケーブルは1,200時間ごとにチェックされており、事故前9回の飛行では問題なかった。但し、この調整を行った下請けの若手整備士は、25ある点検項目のうち上司の指示で9か所を省略していたことが判明した。

地上職員への聞き取りでは、乗客の手荷物が全体的に重く、機体の動きが重そうだったと証言していた。離陸前の計算では積載量は17,018LBで許容重量の17,120LBより少なかったが、乗客の最近の体重を医療機関へ問い合わせるなどしたところ17,700LBとなり、580LB過積載であったことが判明した。NTSBは過積載のところgear-upによりC/Gが後方へ移動して、過度のpitch-up姿勢につながったものと結論付けた。

この事故から14か月後、それまで乗客1名当たりの平均体重は175LBと設定されていたが、これは1936年に制定されたものであり、今後は200LBとするよう変更された。また体重や機内持ち込み手荷物の重量は実測するよう勧告された。更に機体整備の手順については、下請けまでマニュアル遵守が徹底された。

Beechcraft1900Dのような小型機では、満席になると肥満の乗客やズタ袋のような大きな手荷物を機内へ持ち込まれると、最大離陸重量を超えるのではないかと心配になります。燃料もreserve分まで積めているのか疑問です。米国のように大柄で肥満体の乗客が多い国での運航は、安全に直結した事項であり、実測するのが最も確実な解決方法です。チェックインカウンター前を大きな体重計にしたら良いのに。

暑い日に最大離陸重量で離陸する時には、wing-levelで慎重にそーっと機首上げして操縦しています。自分自身のルールとして、フラップやランディングギアを動かした直後から機体姿勢に異常が生じたら、直ちに元の状態に戻すことです。580ポンドは260kgほどですから、weight & balance envelopeから僅かに外側であった筈。書類上問題なくても、若い男女が細心の注意で最大に近い離陸重量を離陸させたら、何とかならなかったかと悔やまれます。

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