0-1 ドラエモンとの交差点1

「ドラエモンを読んだことはない。アニメもほとんど見たことがない。」
たいていその発言をすると、「え~~あり得ない~~」と言うような反応をされることが多く、「人生損している」だの「非国民!」だのと言われることすらある。
確かに国民的アニメを見たことがないのだからその反応は全うなのだろうが、なんだか悔しい。そして悔しいが故、もうここまで来たら納得のいくまで嗜んでやろうでないのという野心が生まれたのである。
そう、齢30を超えて、今、『ドラエモン』を始めようとしている。
何かを始めるという経験は、20代を過ぎるとなかなか少なくなるよということを人生の先輩がおっしゃっていたのをふと思い出した。そうだ、せっかく始める経験が来たのだから記録しておこう。そういうわけで、『ドラエモン』を始めていく、その記録をここに綴ろうと思う。

とはいっても、私が『ドラエモン』についての全くの無知であるわけではない。作者は藤子F不二雄氏で、小学館から出版されているということくらいは存じ上げているし、水色のヤツがドラエモンであること、隣の黄色いトップスの彼はのび太であることくらいはわかっている。
断片的に『ドラエモン』との交差はあるのである。
では、私のこれまでの人生で『ドラエモン』がわずかに交差した点はどこか。

一番古い彼との記憶は、近所の小児科の待合室である。診察室のドアの横に小さな椅子が置いてあり、そこに彼と黄色い彼女(のちに妹ドラミと判明)が座っておられた。なぜか、手作りの名札が付けれられており、それで彼の名前がドラエモンであることを知った。
その時の彼の印象はあまり良くなかった。小児科にはたいていの場合、ぐったりした状態で来ていることが多いので、水色の彼に積極的に接触することはなかったし、なにより隣の黄色い彼女が手垢で黒ずんでいたので、
(これも汚いんだろか)
と母の膝枕の上でぼんやりと考えていたのである。
その後、別の耳鼻咽喉科医院でも同じぬいぐるみを発見し、どうやら有名なキャラクターらしいということは子供にも理解できたのである。

『ドラエモン』の周りのキャラクターを知ったきっかけも覚えている。
祖母の家にドンジャラなる子供向け麻雀ゲームがありその絵柄が『ドラエモン』だった。牌の柄が登場人物のキャラクターになっておりそこで、のび太はじめ、スネ夫、ジャイアン、しずかの存在を知った。しかし、それ以上に友好は深まらなかった。一、ゲームの絵柄として認識されたのである。

アニメの『ドラエモン』との接点は、映画の同時上映か観光バスの中のビデオの2点である。

当時、私は美少女な戦士に夢中であった。
ちょうど全盛期で映画も公開されており、それを父と見に行ったのである。
今はない三条の映画館。インターネットもない時代、映画館に行くことが楽しみだった。
なぜか美少女戦士と同時上映された作品が『ドラエモン』であった。複数のドラエモンが出てきた作品であった。

2点目の接点はこうだ。
当時、子供会のような集まりで観光バスで出かけることがあり、その際の道中暇つぶしとして車内備え付けテレビでビデオを流すことがあった。(今はないのかしらん)
そこでアニメの『ドラエモン』を拝見した。
そして、黄色い彼女が「お兄ちゃん」と言ってるのをみて、
(あ、この黄色い彼女は水色の彼の雌バージョンではなく、妹だったのか)
と合点がいったのである。なお、ストーリーは全く覚えていない。

その後、これらをきっかけに彼との積極的な関係が構築されることはなく、なんだかんだで時は過ぎていったのである。たかだか引っ越しのCMやお寿司のCMで見かけることはあったが、特にこちらから彼に近づくことはなく高校生まで成長したのだが…続く。

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