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台所で宇宙人を育てる方法

るーぷす、という名のひかる生き物と出会う真夏のシンクの横で るーぷすは翡翠みたいな色をして満月にだけ透明になる るーぷすはお湯が嫌いで水が好き昼下がりにはゼリーを食べる ゆびとゆび合わせてみたらなんとなくはにかんでいる通信は不可 青い火を遠巻きに見て炒飯のできあがる頃口笛を吹く キッチンで育てる宇宙ピーラーをかざせば星がひとつ生まれて

    • MAHOU Dining Bar OSMAND

      週末のマジックバーは煌めいて推しマジシャンの技に見惚れる 別世界。この現実のその先にみえる扉を開けてしまえば 魔法ってあるんだこんなしょぼくれた日々をキラキラが包み込む トリックを見抜こうとしてその人の綺麗な指にはまるマジック 困らせてごめん最初に指差したカードが何か思い出せない しゃぼん玉が水晶に変わる瞬間にはじけて消えていくわだかまり

      • 冬を抱く

        珈琲を淹れてゆっくり待つ晴れ間 はじまる前の静けさを恋う 一生の半分は冬うらがわの国から届く海の絵葉書 温めてほしい衝動おにぎりの中のたらこが少しふるえる いつの日か思い出になる人なれど記憶を焦がす冬の手のひら 湯たんぽに湯をこぽこぽと注いでは小さくなってゆく冬を抱く

        • じゃりじゃり

          はつ雪のあとしばらくは降らなくて思ったよりも浅かった傷 抑揚に戸惑いながら真冬日の片隅に月やっと明るい こんなにも浸みていくんだ明け方にじゃりじゃりになるほどに溶かして ファスナーを閉めて綿雪ひと頃の歌の記憶がない私たち スヌードは赤いのがいい朝霜の残る浜辺につまさきで立つ 諦めてしまった甘さ長い長い冬を悼んで花びらは降る ほどほどに積もればいいね二人乗りリフトは等間隔に流れて 青空だ。凍りつくのも解けるのも訳もわからず奪われるのも 白のなかに白を散らして白鳥

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