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『夢夢』第1話

「夢夢」1話


『じゃあさ、叶えようね夢····』

「おう」

『約束だよ』

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「さぶっ...」

秋晴れで20℃近くあったのがつい数週間前とは思えないほど冷え込んだ冬の空を拝みながら、今俺は大学へと通学中である。

風がまるで針のように顔にぶち当たって来る中、イヤホンで白い恋人達を流しながら通学中である。自転車で...

本当はバスか電車でも使えれば暖房が効いた車内でそれこそ真夏の果実でも聞いてやろうかという感じだが、家が大学に下手に近い分寒い中をチャリで爆走中というわけである。

毎年冬になると思うのだが、この季節にミニスカートを履く女子はいったいどういうつもりなのであろうか、オシャレしたいと思う女の子は暖房機能が標準搭載されているのだろうか、俺もオシャレには気を使っているのだからその機能を搭載して貰いたいものだ。

ある公園を通り過ぎようとしたとき、明らかに暖房機能が備わっていない装いの女子を見かけた。 布団にくるまってベンチにうずくまっている。よし、大学へ向かおう。


???


布団にくるまっている??混乱する頭を押え、イヤホンを外すと俺はその公園へダッシュで戻ったのであった。


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「あの...大丈夫ですか?」

大丈夫なわけはないのだが、かける言葉が見つからなかった。

『んぅ...ざむぃでず。』

「なんか、あったかいもの買ってきましょうか??」

『おねがぃじまず』

俺はアウターを彼女の肩にかけるとコンビニまで駆けだした。

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なんで声掛けちまったんだ!大学は間違いなく遅刻!しかもこれ遅刻したら落単!終わった!! 

しかも、割と同い年くらいだった!話せん!話せん!女子耐性は俺にはない!ぁぁぁ!

「と、とりあえず肉まんと暖かい飲み物とカイロでも買ってくか...」

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「か、買ってきましたよ〜...」

『ありがどうございばず...』

彼女はそう言うと肉まんを舌やけどすんじゃねぇかと思わせるスピードで完食し、あったか〜いペットボトルで暖を取っていた。

『ご迷惑おかけしました。』

「ん、あぁ大丈夫だけど」

「なんで公園に...?布団もって...」

まぁ質問したいことは山のようにあったが、こいつが初めに口から出ていた。

『私、すごい酷い夢遊病持ちで』

「夢遊病??」

『寝てる時に動いちゃうんです。』

「はぁ...」

まぁ、そのくらいは知っているのだがそれとこれとどんな関係があるのか全くピンとこない

「というと...?」

『えっと、夢遊病でここまで来ちゃったみたいです。』

「は...?」

『私、一人暮らしだから誰も止めてくれなくて...気づいたらここに...』

いやいや待てよ

「えっと家は...どこら辺にあるんですか...?」

『えー...○○県の○○市です。』

「!?嘘でしょ!?それ県ひとつまたいでますよ!」

『え...嘘!?』

『そんな歩いたの初めてです...』

「いやそこじゃなくて...」

『あぁ!!!今何月何日ですか!?』

「えっと12月3日だけど」

『ど、どうしよう、私丸一日寝ちゃった...』

「え...?」

『12月2日が家賃の最終締切だったんです...お金無くて、3回連続家賃払えなくて...今度払えなかったら追い出すって...』

「でも、一人暮らしですよね?親からの仕送りとかは...」

『親、死んじゃったんです。』

「あ...」

『私のママ、シングルマザーで私の事育ててくれたんですけど、病気がちで...』

『それで...私の家貧乏だから、私も全力で勉強していい仕事に就いてお母さんの病気を治すためのお金稼ごうとしたんです...』

『でも私、中学三年生のとき、交通事故にあって...5年間目が覚めなかったらしいんです。』

『その時のショックでお母さん、どんどん弱っちゃって...』

『事故のその日の記憶もまるで抜け落ちちゃったみたいに無くなってて...』

「ご、ごめんもう話さなくていいから...」

気安く聞いてはいけない話だった。彼女にそんな過去があったとは...

「じゃ、じゃあさ俺の家来ますか?...」

『え?』

「いや!下心とかじゃなくてさ!ここであったのも何かの縁だし!俺も一人暮らしだし、ほっとけないしさ!もし良かったらなんだけど...」

ナンパみたいな文言しか出てきていないがこの男、とある理由で彼女とシンパシーを感じている。そのためどうしても彼女を放っておけないのだ。

『じゃあ...お邪魔しようかな?』

そういって涙目でにこりと笑う彼女の顔を見て俺は冬に似合わず思わず顔を赤らめてしまった。

『名前まだでしたね...私は遠藤さくら、21歳です。』

「あ、同い年だ 俺は志水○○です。」

『え?...志水○○』

『志水くんだよね!』

『全然、気づかなかった!さくらだよ!覚えてない?』

「あ、えっと...」

『中学のときいっつも一緒に勉強してたさ!』

「ごめん、俺さ...高校より前の記憶が無いんだ。」

『え...』

「俺も中3の春休みに事故にあったらしいんだ...それで頭を強く打ったらしくて、起きたら記憶がなかったんだってさ...」

そう、あの日俺は事故にあった。覚えてるのは2つだけ。

俺は強い意志で外科医を目指していたこと、それととある女の子と夢を叶える約束をしたこと。

外科医の方はもう叶いそうにない。事故のせいで右手に軽い障害を負ってしまった。

だから今俺の夢は、その女の子と出会うこと。もしかしたらその記憶自体、妄想、いや夢かもしれない...
でもいつか会える気がしてるから...

これは、俺が夢を叶える物語だ。

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