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SAPPORO DANCE BOAT PROJECT 2021

10月17日(日)15時開演
SAPPORO DANCE BOAT PROJECT 2021
会場:扇谷記念スタジオ シアターZOO

概要

コンタクト・インプロビゼーション(以下、C.I)を観に行きました。このダンスについて、当日パンフレットにはこのように書かれています。

1960年代にアメリカで生まれたふれ合いを通じて他者と関わる、コミュニケーションとしてのダンス。

出演者には、noisieeeee ⇄ project で私と共同代表をやっている、成田さんもいます。途中休憩をはさんで2つのプログラムの上演。
前半は、札幌を代表するC.Iのユニット、micelleの作。
後半は、京都からMonochrome Circusが演出。
この企画は、4年目だそうです。

札幌の秋、来たり。

午前中は家でのんびりと過ごしていた。窓から日光が絶え間なく入ってきて、秋の晴れは気持ちが良いな、と思っていた。
最近は常に換気がされていて劇場が寒いので、何となく薄手のニットを選ぶ。
外に出ると、思わず肩を丸めるほど冷たい風が、びゅうびゅう吹いていた。
ヒートテックも着てくればよかった。
札幌の秋は、着るもの選びがとても難しい。

『しょく。act2』

出演者は2人。土の入ったプランターが印象的なモチーフだった。
「しょく」とは何なのか、ずっと考えながら観ていた。
まず思い浮かんだのは、「食」。途中、納豆巻を食べる場面がある。くるくると手を動かして、納豆からひく糸を切ろうとする動きがおもしろかった。またある場面では、片方が土の入ったままのプランターを頭からかぶり、そのまま座って土がさらさらとこぼれ落ちていく場面がある(落ちていく土や、土が自身の表面を滑っていく感覚と踊っているようで、とても好きな場面だ)。プランターが顔に見えて、土が吐瀉物に見えた。

次に思い浮かんだのは、「蝕」。2人があの場所に来て、留まる理由はお互いがいるからだと思った。あの無機質な空間に留まることは、彼らにとってよいことではないのかもしれない。一見互いに無関心そうではあるけれど、それは裏返すとずっと互いを気にしているということ。どうしてそのような捻じれのある関係になったのかはわからないけれど、二人の関係は倦怠感をまとってはいるが、実はとても動的で、お互いに蝕み、蝕まれながら、踏ん張りをきかせて留まり続ける数十分間だった。「蝕む」という言葉にはネガティヴなイメージが先行するが、私たちは少なからず他者の何かを蝕んで/影響されて生きているのだと思う。
さすがに思い付きに寄せすぎた考察かもしれない。

次に、「植」。私には、2人が発芽前の種に見えた。年齢の異なる二人が、栄養を蓄えたり、互いを気にしたりしながら、土の中で来るべき時を待っているような。

この3つに共通するのは、「循環」だ。2人の関係も、2人と観客の関係も、植物も、人間も、エネルギーが循環している。それも、堂々巡りではなく、螺旋のように少しずつ変化していく。片方が同じムーブメントを何度も繰り返す場面で、リフレインしつつも、毎回違ったように。

『FLOOD』

「コミュニケーションとしてのダンス」を、「関係性の構築と展開のダンス」と言うことができるならば、この作品は、相手との関係性を構築しようとし、失敗し、再び試みるような、静かながらも足掻き漏れる声が聞こえるような上演だった。
ルールが次々と変わっていく中で、様々な他者との関わり方/関わらない仕方が見られた。どれも上手くいきそうでうまくいかない。
しかし、どのルールが良いとか、優劣のメッセージ的なものはなく、ただ10名弱のダンサーによって淡々と実験されていった。
終演までに「全員が上手くいった」瞬間があったのかはわからないが、どのルールにおいても失敗がネガティヴに捉えられていないところが良かった。
冒頭、1人ずつ、ポーズを取りながら相手に触れ、重心をかけていく場面で、相手がいることで身体の使い方がどんどん変化していっているはずなのに、同じポーズを取り続けているのがおもしろかった。
循環をせき止めるのは、非常に負荷のかかることだ。


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