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東京は人が多い。

 今日も電車は満員で、汗や香水が混じった嫌な匂いで気分が悪くなった。東京の人の多さには呆れる。渋谷に行けば遊びに来る人、買い物に来る人で賑わい、信号を渡るだけでひと苦労だ。浅草に行けば土産を買う人、食べ歩きをする人の多さでろくにお参りもできない。東京を離れたらよい話なのだが、一度この便利さを味わった者がこの地を離れるのはなかなか難しい。そうだ。人のいない場所に東京よりも便利な"僕の街"を作ろう。

 まずは自分の家を建てる。拠点ができたら次は生活必需品を買う必要がある。スーパーマーケットを作ろう。ここに来れば何でも買える。次は役所や警察署、消防署、病院などの私たちの生活を支える機関を作る。街にどんどん活気がついていく。みんなのために娯楽施設も作った。遊園地、映画館、動物園などバリエーション豊富だ。そうするうちに更に街は大きくなったため、交通機関も作った。この時点で街のスケールは東京に並ぶほど大きくなっていた。せっかく自分の街が大きくなったんだ。東京よりもいい街にしてやろう。空飛ぶ車を開発し、空の道路を整備した。東京にはまだないオリジナルの娯楽施設も作った。街はより一層巨大化し、そして気がついた時には東京の人口を超えていた。

この時、僕は初めて人が都市に密集している理由に気づいた。

 今日も僕は、満員電車で多くの人に押し潰されている。僕の作った街は人口1000万人を超えた。

僕の街は人が多い。

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