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負の感情から抜け出すには 〜音楽の力

自分の努力に対して、恩を仇で返すような仕打ちをされ、珍しく落ち込んだ。考えれば考えるほど気が沈む。暗く深い霧の中に迷い込んだようだった。

自分は何をしたのだろう。あの人はなんと器が小さいのだろうか。そしてこの器の小さい人から受ける影響はなんだろう。憤りさえ感じ始めた。子供が私の頭を撫で、慰めてくれた。少し癒やされた。

それでも不快な気分は留まったままだった。負の感情の渦に巻き込まれていきそうになる。

耐えかねて、偶然目にした坂本龍一の「美貌の青空」を再生した。1音1音が心に染み入ってきた。幾度となく聴き直した。静謐な音の揺らぎの中に、凛とした、芯のある何かを感じる。気づくと、あるメッセージを受け取っていた。

「人間は孤独である」

そうだ、人は本質的に孤独だった。どんなに望んでも完全に理解し合うことは叶わないのだった。そう考えたら、悩んでいたことが急に愚かしく感じられてきた。次第に、自分の心は落ち着きを取り戻した。

ところで、以前、坂本龍一が、音楽の魔術的な力を恐れていて、ナチスの音楽の扱い方を例に挙げ、危険な方向へ行かないように常に意識していると語っていた。娘の坂本美雨は逆に、音楽の持つ癒やしの力を信じていて、究極的には病気が治るほどの医療的な効果のある音楽を目指したいと言っていたのを思い出した。

父は音楽の暗黒の力に恐れ慄き、娘は魔力を信じる。父は、音楽の怖さを真に分かっていたからこそ、彼が音楽へ向き合うときの謙虚さや真摯さが生まれたのではないか。音楽への畏怖。

坂本龍一の曲を聴いていると、生きることや私という存在に対する根源的な問いが想起され、ささくれだった感情が大海に流されていくように感じた。

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