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東京01

 10年以上前、地元の設計事務所から、東京のゼネコンへ数ヵ月出向したことがあった。

 目的は、そのゼネコンが持っている耐震工法技術をものにするため。ゼネコンからしたら、こちらに、その構造計算を覚えてもらい、今後手伝ってもらうため。

 所員数名の小さな設計事務所に勤務する私にとっては、大きな会社も、東京という大都市も、初めての経験であり、あこがれ。ゼネコンの単身寮を借り、通勤ラッシュでさえ新鮮だった。

 建築の設計は、意匠、構造、設備と専門に分かれる。私の担当は構造だ。
 構造設計部は、気難しそうなおじさま多め。というか、頭の中はPCのようにくるくる回転していて超賢いのだけど、シャイで人としゃべるのは苦手な人が多かった。その中で、きちんとコミュ力のある人が出世しているようだった。
 意匠設計部は、美意識が高いので、ナルシストっぽい人もいた。王子様風の男性が、白シャツのボタン多めに開けて、セクシーさをアピールしてたな。ちゃんと清潔感もあった。
 (これは、私が10年以上前に見た、とある設計部に対する偏見で、一般的なゼネコン設計部がこうだというわけではない。)

 自分にとっては、全てが新鮮でキラキラしてた。

 綾瀬はるか風の、育ちのよい感じの事務のお姉さんがいて、同じ女性ということで、社内で面倒をみてもらった。上品で綺麗で優しくて、何度かお洒落なランチにも誘ってもらった。恋愛相談なんかもしちゃったりして、同性なのにドキドキして楽しかった。
 彼女は持病を持っているということを話してくれた。そのせいで、仕事や結婚に対して、積極的になれないようだった。私は、結婚したいんだけど、なかなかうまくいかない彼氏の話を聞いてもらった。

 出向の仲介役は、ゼネコンで働く、所長の同級生だった。南極基地にも行っていたという彼は、現場所長を経験し、当時は営業。背が高く、目力も腕力も半端ない。阿部寛風でカッコよくて、道ならぬ恋をするならこんな人がいいな、と妄想してたことを白状する。
 会社の人達ともんじゃ焼きを食べに行き、彼に、キラキラデコったもんじゃのヘラストラップを買ってもらった時は嬉しかった。何年かペンケースに取り付けて宝物にしていた。

 そして、仕事の内容はいろいろ大変だったわけだけど、それは『東京02』へつづく。