見出し画像

銀シャリ『引越し』

好きな漫才ネタを書き起こして、なんで好きなのか考えてみようの巻です。

今回は銀シャリの『引越し』。THE MANZAI2013で披露されてたネタです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
鰻:最近俺お引越ししたんやけど
橋本:「お」付いてもうてるけどね。自分を敬うタイプかな
鰻:失敗した
橋本:どうしたどうしたおい
鰻:騒音がうるさいねん
橋本:引越しに騒音問題はつきものですからね
鰻:住んでるマンションの前にでっかい道路走ってんねんけど、車の音うるさいねん
橋本:あー車の音ね
鰻:ファーン
橋本:鈴鹿?鈴鹿に住んでる?難波やんな?速さでうるさいんや。てっきり交通量でうるさい思ってたからさ
鰻:うるさいよ。ほんで朝起きたら、近所で飼うてる鶏もうるさいねん
橋本:ペットのトラブルもありますからね
鰻:クックドゥドゥルドゥ
橋本:アメリカ?
鰻:難波や
橋本:難波やんな?コケコッコーでいいから。あと、クックドゥドゥルドゥて俺聴こえた事ないで鶏。ドゥドゥルドゥはもう鳩の領域やからあれ。
鰻:聴こえたんや
橋本:ドゥドゥルドゥてすごいよ?ドゥドゥルのあとドゥ来るからね?すごいで
鰻:聴こえたんや、うるさいもん
橋本:そんだけうるさかったら引っ越したらええんちゃうの
鰻:最近引っ越したばっかりやねん。ほなまた敷金礼金パンプキン払わなあかんやん
橋本:パンプキンいらんわ。なんで大家さんにカボチャ持っていくねん。戦時中か。
鰻:なんて?
橋本:いや、敷金礼金だけでいいがな
鰻:なんて?
橋本:いや、敷金礼金パンプキン言うてたがな
鰻:なんて?
橋本:そんだけ耳悪かったら騒音気にならんやろ!どこでも住めるやろ、その耳の奴は!
鰻:騒音問題それだけちゃうぞ
橋本:まだあんの?
鰻:マンションの右隣や。右隣が消防署や。よう出動しよんねん。
橋本:治安悪いな
鰻:カンカンカン!ウーカンカンカン!や
橋本:消防車ってそういうもんですからね
鰻:消防車行ったら救急車も行くやろ
橋本:そら救急車も行くでしょうね
鰻:ピーポパッポッピッポッパッポッピー
橋本:なんやそのスキャットマンみたいなんは。ピーパッパッパラッポみたいなん
鰻:救急車の音やん
橋本:救急車はピーポーピーポーやん。なんやそのピーポパッポッピッポッパッポッピーいうのは
鰻:そんなもん、なんか道がガタガタやったんちゃうんか!
橋本:ほな消防車もカーンカカッカカッカッカッカッカーンにならなおかしいやろ!
鰻:消防車は違う方向から出たんやろ!
橋本:なんで違う方向から出んねん
鰻:そっちの方が早いからや!
橋本:ほな救急車も早よ行かなあかんやろ!どういう了見やねんそれは!
鰻:それだけちゃうぞ
橋本:まだあんの
鰻:マンションの左隣や。左隣が警察署や
橋本:どういうとこ住んでんねんまずそもそもが
鰻:よう出動しよんねん
橋本:まぁね、パトカーの音とかうるさいかもしれませんね
鰻:タッタッタッタッタ
橋本:所轄まさかの!?捜査員の足音でうるさいんかい!パトカーでうるさいんちゃうんかい
鰻:ウー言うてる警察官はおったけどね
橋本:それ柳沢慎吾さんだけや。あの人警察官でもないしやな別にほんで
鰻:それだけちゃうねん。道路挟んで向かいや。向かいが一貫教育の学校や
橋本:子供達多いからそれはうるさいかもしれんわ
鰻:小中大のやつや
橋本:なんで高校無いねん!一番アイデンティティを植え付けるジェネレーションですよあれ!3年間ズッポリ抜けてんのすごいな!なんちゅう学校やそれ
鰻:それだけちゃうぞ。マンションの真裏や。真裏が寿司屋。うるさいねん
橋本:それは他の消防車とか救急車に比べたら全然
鰻:アイヨー!
橋本:やとしてもやん。言うても室内の
鰻:ヘイラッシャイ!
橋本:やとしてもやん。やとしても人の声やし
鰻:ヘイラッシャイ!アイヨー!
橋本:どういう状況なんそれ?お出迎えしてすぐ握ってるよね?ということはお客さん的には「マグロー!」言うて入ってきてるやん。客の食い意地がすごいな!
鰻:めちゃくちゃうるさいよ。救急車の音がこれや(手で示す)アイヨー!(はるか上を示す)
橋本:そいつが「火事だー!」って言えやそれやったら。そいつが「火事だー!」言うた方が早いわ。
鰻:ヘイラッシャイ(救急車よりちょい下を示す)
橋本:それ一番大きい声出せや
鰻:てやんでい(一番下を示す)
橋本:いつ使うねんあれ!寿司屋のてやんでいいつ使うねん!
鰻:てやんでい!(顎を擦る)
橋本:だいたい鼻やろあれ!なんで顎持っていってんねん。すごいなおい
鰻:それだけちゃうぞ
橋本:まだあんの
鰻:道路挟んで斜め右左や
橋本:斜め右左は真向かいなんちゃうんか!?高校3年が無いのでお馴染みのあの伝説の学校なんちゃうんかい
鰻:それがガソリンスタンドや
橋本:ガソリンスタンド?
鰻:オーライ!オーライ!オーライ!
橋本:やとしても人の声やから
鰻:アイヨー!
橋本:弟子っ子働いとるやん!酷使しすぎや弟子っ子
鰻:レギュラー一丁!軽く炙りで!
橋本:爆発するわそんなもん!またピーポパッポが来るぞ
鰻:それだけちゃうぞ
橋本:すごいなお前
鰻:住んでるマンションの上や
橋本:上?
鰻:上がお前、コンビニや
橋本:上コンビニなん!?一番下コンビニはわかるけど上コンビニなん?なんやそれ変な!
鰻:店員が元気やから声がうるさいねん
橋本:人の声のうるささなんか知れてますからね
鰻:テテテテテテーン!テテテテテーン!(入店音)
橋本:あれ自分で言うてんの?
鰻:ヘイラッシャイ!
橋本:また弟子っ子働いてるやん!すごいな弟子っ子
鰻:いい新人入ってるよ!
橋本:いい新人紹介されても気まずいだけやから
鰻:ピー!ピー!(バーコードリーダー)
橋本:それも自分で言うてんの!?魂のレジ打ちです。すごいな
鰻:千円入ります!
橋本:一万円やろ大体お前!千円入ります!千円入ります!千円入ります!千円入ります!なるやろがい!
鰻:お前か一番うるさいのは
橋本:なんやお前は。そんだけうるさいんやったら覚悟決めて引越せや!
鰻:アイヨー!
橋本:それええねん、もうええわ
(4分15秒)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

銀シャリのネタは全部好きですが、僕の中で銀シャリといえばこのネタなんですよね。
書き起こして思ったことをつらつら書いてみます。


最初の笑いまでのスピードがとにかく早いですよね

鰻:最近俺お引越ししたんやけど
橋本:「お」付いてもうてるけどね。自分を敬うタイプかな

かなり小さなボケですけど、橋本さんの細かいところを掘り下げるツッコミを印象付けながら笑いを取れる最速の掴みですよね。お客さんのハードルが上がる前に、とにかく早く笑いを取るというのは大事なんだなと思いました。

自分の部屋の周りで騒音がうるさいという展開のネタなので「じゃあ引っ越せばいいやん」という部分を早めに入れるのもよくよく考えるとすごい。

橋本:そんだけうるさかったら引っ越したらええんちゃうの
鰻:最近引っ越したばっかりやねん。ほなまた敷金礼金パンプキン払わなあかんやん
橋本:パンプキンいらんわ。なんで大家さんにカボチャ持っていくねん。戦時中か。

各所がうるさいという展開に早めに持っていってそっちのバリュエーションを多くも出来たはずだけど、この引っ掛かりを序盤に処理してるのでとても自然にネタが入ってくる。オチにも使えてますし。

鰻さんのボケを橋本さんがツッコミ過ぎるスタイルが銀シャリの最大の魅力ですよね。
銀シャリはどのネタも基本そうですが、鰻さんのボケ自体は誰でも笑えるものでそこまで捻ったボケはありません。
対する橋本さんのツッコミは一言目はしっかり否定訂正なんですが、二言目の追いツッコミで鰻さんのボケを掘り下げすぎるツッコミをします。

鰻:ヘイラッシャイ!アイヨー!
橋本:どういう状況なんそれ?お出迎えしてすぐ握ってるよね?ということはお客さん的には「マグロー!」言うて入ってきてるやん。客の食い意地がすごいな!

ここなんてまさにそうですよね。
M-1優勝して賞レースの枷が無くなってからのネタではこのネタ以上に橋本さんが自由にツッコミ過ぎているので一部の客しか笑ってないみたいな状況もしばしばありますが、それこそ銀シャリの魅力だと思います。

この『引越し』は構成も分かりやすくて、ボケもシンプルで、中盤から終盤にかけての盛り上がりもお手本のようで素晴らしいネタだなと改めて思いました。漫才の教科書があったらぜひ載せて欲しいですね。

近年はコント漫才や、ボケだけがコントに入ってツッコミが俯瞰でツッコむスタイルなんかが多くなってきてますが、やはり漫才はしゃべくりであって欲しいというのが個人的な好みです。

ネタの書き起こしって楽しい。またやろ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?