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忘れっぽい人の最後の手

「テスト2週間前」という響きは、不思議と懐かしい。塾講師をしていると、生徒に「今日からテスト2週間前なんです」と言われることがある。その度に、心の中で「なつかしっ!」とつぶやいている。

そんなわけで、いまの時期はちょうどテスト期間とのこと。塾も通常授業は一時中断で、テスト対策へと移る。


ある生徒の手の甲。黒のマジックかボールペンで、遠目だとシールが貼られているのかと思うくらいに、びっしり文字が書かれていた。その日のToDoリストなのか、テストの提出物を忘れないためなのか。何が書かれているかは分からないのだけれど、一教科勉強が終わるごとにそれを確認していた。


本当に忘れたらまずい提出物があるときは、手に書いていたよなぁと。「テスト2週間前」という響きより、もう少し心の奥の方に収納されていたような懐かしさを感じた。

ただこの方法は、それほど多用していたわけではなくて、いざというときだけだったような。実際書いたことがあるのは、3回くらいだろうか。


この「手に書いちゃう」というのは、忘れっぽい人の最終手段のような気がする。


いまは、忘れてはいけない予定を手帳に書き込むようにしているけれど、書き込んだことで満足して、たまに見返すのを忘れてしまう。それで冷や汗をかいたり、初歩的なミスをしたり。そう考えると、「手に書く」ってある意味知恵みたいなものだったのかなと回想したりする。


けれども、22歳の手の甲に文字が連なっているのは、少しばかり不気味な気もするので、しっかり手帳を見返す癖をつけねばと。ただ、手の甲に文字が書かれてるって、これぞ学生という感じがして、いいなぁと思った。

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