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【提言実現】日本の歴史上初の医療的ケア児のための法律、ついに成立!!

 本日2021年6月11日、我々が実現に向けて努力し続けてきた念願の「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」(以下、「医療的ケア児支援法」)が全会一致で成立しました!!

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 医療的ケア児支援法とは、医療的ケア児を育てる家族の負担を軽減し、医療的ケア児の健やかな成長と家族の離職防止を目指す法律。

 医療的ケア児本人はもちろん、家族の負担にも着目しているところも大きなポイント。

 僕は仲間たちと2015年に「全国医療的ケア児者支援協議会」を設立し、医療的ケア児を取り巻く環境を変えるために提言活動を行ってきました。

...苦節6年。ついにこの日を迎えました。

 今日は、医療的ケア児とその家族にとって歴史的な日です。

 そして、医療的ケア児支援法は医療的ケア児を育てている家庭はもちろん、これから子どもを産み育てる世代にとっても大切な法律。

 日本がより子育てをしやすい社会になるための大きな一歩です。


【障害児保育園ヘレンの視察から永田町子ども未来会議設立】

 新生児医療の発達とともに医療的ケア児は増加し、現在では約2万人。

 医療的ケア児の親は昼夜を問わずケアに追われ、精神的・肉体的にも追い詰められるだけでなく、預け先も少なく、預けたとしても親の付き添いを求められるため、就労を諦めなければならない人もたくさんいます。

 まずは預け先の解消に努めようと、僕たちは2014年、日本初の医療的ケア児のための保育園「障害児保育園ヘレン」を立ち上げました。

 そこに荒井議員を始めとした超党派の議員に視察に来てもらったことが、(医療的ケア児支援法作成に大きな役割を果たす)「永田町子ども未来会議」の設立につながったのです。

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 「永田町子ども未来会議」は超党派の国会議員や厚生労働省や文部科学省などの官僚、医療関係者、福祉事業者、当事者団体が集まり、医療的ケア児の支援に必要な施策や制度を検討する勉強会(実質上の議連)です。

 僕も全国医療的ケア児者支援協議会の事務局長として参加し、提言を行い
続けてきました。

 永田町子ども未来会議の活動により、2016年に児童福祉法の改正案が成立し、法律の中に医療的ケア児に関する支援が初めて明記されます。

 しかし、支援はあくまでも「努力義務」規定にとどまったため、自治体の取り組み姿勢によってサービスに差が出ることが懸念されていました。

 また、障害児の預かりを拡充していくためには、法律の整備と同時にサービス報酬改定も進めていく必要がありました。

 しかし、2018年の障害福祉サービス等報酬改定は、医療的ケア児の預け先が拡大するには程遠い改定内容に終わります。

 医療的ケア児を取り巻く課題は、医療・福祉・教育・保育など多岐にわたるため、縦割りのままでは解決できません。

 支援を拡充するためには、厚生労働省・文部科学省・総務省の力を結集する必要があり、省庁をまとめるための法律の必要性が明らかになりました。

 そこで超党派議員立法として医療的ケア児支援法案の検討が始まりました。

 議員立法は内閣法と異なり、成立率は1割。

 この針の穴を通すようなプロセスを経て、この度成立。

 ここまで来れたのは、現場の事業者や当事者の話を真摯に聞き、一緒に戦ってくれた議員の皆さん、官僚の皆さんのおかげです。

 (同時に、今年度のサービス報酬改定も、ある程度満足のいく水準に引き上げられました。これで医ケア児を受け入れる通所施設も増えていくでしょう。ダブル勝利!)


【医療的ケア児支援法のポイント】

 さて、医療的ケア児支援法のポイントを簡単に解説します。


①医療的ケア児への支援が「責務」に

 医療的ケア児支援法の成立により、各省庁および地方自治体は、医療的ケア児への支援に「責務」を負います。

 責務規定とは、これまでの「努力義務」よりはるかに強い規定です。

 また、医療的ケア児支援法の施行に伴い、各自治体に地方交付税として予算が配分される予定です。

 各自治体が予算を持ち、強制力のある中で医療的ケア児を支援する事業を進めていくことで、これまで地域によってばらつきのあった支援体制の格差是正が期待されます。

②保育園や学校での看護師等の配置

 これまで、施設に子どもが通えたとしても、親の付き添いを求められ、仕事を諦める保護者さんたちがいました。

 今回成立した法律により、各自治体は、医療的ケア児が家族の付添いなしで希望する施設に通えるように、看護師やたんの吸引等を行うことができる保育士、介護福祉士等の配置を行う必要があります。

自治体が支援を拡充する必要のある施設

③医療的ケア児支援センターの設置

 都道府県ごとに「医療的ケア児支援センター」が設立されます。

 医療的ケア児とその家族が困りごとがあった際には、ワンストップで対応できるようになります。

 たらい回しにされ何度も市役所を訪れることがなくなります。

支援センター

【法律が成立しても、一部課題は残る】

 法律の成立はとても嬉しいことです!

 でも、あくまでも法律成立はスタートにすぎません。

 今後は、各地方自治体が主導権をもってきちんと進めていく必要があります。僕たちもこれまで培った障害児保育・支援の経験を活かして、自治体を全力でサポートします。

 そして、まだまだ法律だけでは解決できない問題もあります。

 医療的ケア児支援法には、18歳以上である医療的ケア者を含めることができませんでした。

 医療的ケア者を法律用語として定義し、調査を通じて実態を把握することが必要です。

 その結果を踏まえ、3年に一度の福祉の報酬改定や本法律の見直しに反映させていきます。

 また、医療的ケア児の学童保育の不足はこの法律ではカバーできません。早急な法整備が必要です。

 このあたりも、これから継続的に声をあげていかねばならないところでしょう。

【「永田町の良心」の勇退】

 最後に、、

 永田町こども未来会議を中心的に引っ張ってきた、荒井聰議員。

 荒井議員は、なんと今期で引退してしまいます。

 彼のヘレン訪問から6年。
 この人なくしては立法はありませんでした。

医療的ケア児先進都市の豊中市に一緒に視察に行ったり。

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 一緒にコロナ禍で枯渇した消毒液を、全国の医療的ケア児の家庭に届けたり。

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 僕は荒井議員に、本当の政治家というのはこういうものだ、という姿を教えてもらったと思います。

 それは「どんなに票にならなかろうが、そこに痛みを抱えた人々がいるのであれば、リスクを取って現実を変えに行く」という姿です。

 野党という弱い立場にありながらも、敵である与党議員と対話し、互いにリスペクトしあい、周囲を説得して、かたつむりのようにゆっくりと、けれども確実に議論を前進させていく。

 官僚に対しても決して声を荒らげず、むしろいたわりながらも、「あなたなら、やれるんじゃないかい?」と背中を押す。

 そうした姿の中に、「政治家として生きるとは」ということが、全て込められていました。

 荒井先生、言葉にならない、万感の思いと感謝をここに表します。
 あなたがいなければ、この法律は成立しなかった。それだけは言える。

 そして、あなたの志をこれからも引き継いで、僕たちは走っていきたいと思います。

 医療的ケア児家庭が、あたりまえに笑って暮らせる、新しい時代を創るために。

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