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自宅でひとりの時間

退院から2日、夫は仕事に行き、私は退院後初めて誰も見守りがいないひとりの時間を迎えた。

薬を飲んでいても痙攣が起こることもある、
痙攣したらすぐに病院に来なさいよ、

と、主治医からも注意を受けていたから、自宅で誰もいない時に痙攣を起こしたらと不安になる。
未だにはっきりと覚えている。身体が勝手に固まって、首と眼球が左に向いたままガクガク動いて、息ができなくて、でも意識はきちんとある。あの苦しさがいつ起こるか分からないのは、どうしようもなく怖い。

幸い、夫の職場は自宅から徒歩3分のところにあるため、少しでも体調がおかしかったら、連絡をすれば駆けつけてくれる約束になっている。
しかし痙攣中は話せないから、1度私が電話して、夫がかけ直した時に応答がなければ緊急事態と判断、と決めてある。

家が近いから、お昼休みになると様子を見に帰ってきてくれる。2人で家で昼食をとって、1時間後にまた職場に戻るのだ。

私はiPhoneを使っていて、メディカルIDに夫を登録してある。緊急時にはiPhoneのロックを開かなくても、誰でもここから緊急連絡先に電話をかけられるようになっている。
しかし、電話をかけるには、メディカルIDマークをタップし、連絡をとりたい相手の名前をタップ、この2回の操作が必要。しかも、画面を見ながらでないと確実に操作ができないのだ。

痙攣中、身体が自分で上手く動かせない状況で、いくら意識があってもこの操作は確実にできない。
夫婦で考えた結果、ワンタッチダイヤルができる、高齢者用のらくらくフォンを契約しよう、と結論が出た。今日早速仕事帰りに、近所の家電量販店に見に行ってくる、と夫は午後の仕事に向かった。

またひとりになった私は、入院中に連絡をとっていた友達やパート先に、退院報告のLINEをしまくった。あまりのスピード退院に驚く人も多かった。「職場復帰待ってるよ」と、優しい言葉もかけてもらい、安心した。
パート先の人はみんな優しくて、嫌味な人がいなくて、今まで働いた全職場の中で1番居心地が良い。迷惑をかけてしまったけれど、必ずここに復帰しようと思った。

真剣にLINEをしていても、薬の副作用の眠気にはまだ慣れない。夕方6時にアラームをかけて、昼寝タイムに突入した。自分でも驚くほど、昼間も夜もいつも寝ている。

昼寝から覚めると、ご飯を炊く。
今までは、夫はフルタイム、私は朝から夕方のパート勤務だったから、基本的に私が夕飯を作って夫の帰りを待っていた。しかし、今はそれが出来ない。

座っているのもしんどい、歩くのもしんどい、立ちっぱなしなんてもってのほか。しかも、私が手術した前頭葉は、判断力や性格をコントロールするところ。こんな状態の人間が、1人で火を使って料理をする訳にはいかない。
2週間後の受診までは、私はご飯を炊くだけ、夫に料理をしてもらうことになった。

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