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人混みの中のマイルドヤンキーを見て何が幸せかを友人と考察する

これは2021年10月18日0:30頃、中央道で岐阜から東京に戻る車中で繰り広げられた対話です。
岐阜で共にバイクで峠を走り、現在埼玉に住む一つ年上の山田くん(仮)と僕との結論を見つけられない数十分間。
だいたい大月手前から八王子あたりの間の文字起こし。


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以前東京に出てきてる友人らと新三郷のコストコへ行って、そこで見たBBQの買い出しをするマイルドヤンキー家族を見て、あれが幸せなのかという話題を山田が切り出したところからこの対話は始まる。


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山田「まあいわゆる20代でエスクァイア、30代でハイエース、40代でアルファードみたいな、定期的に家族でBBQやってマジで飽きないのかって思うよ。家族がいて稼いだ金で、いわゆる自分たちが作ったわけではない楽しみをひたすら買って享受して」

駒月「(爆笑)」

山田「何かを作り出さずに、やれディズニーランドだったりコストコだったりユニバとか」

駒月「他人が作ったものを買ってると」

山田「そうそうそう。ていうものを享受して生きてるわけよ。そいつらはそれをなんとも思わず、その行動をし続けるやん。俺がもしそうだったら、20代でコストコ行ってみんなでBBQする、30代でコストコ行ってみんなでBBQする、40代でコストコ行ってみんなでBBQするって、この人生ををずっと続けんのって、20代でもう悟り始めてんのに、彼らはそこに戸惑いがないじゃん」

駒月「そうっすねぇ」

山田「本当にそいつらは幸せやと思うよ。逆に言うと。それで笑っとれるわけやから。将来はとか考えず。ビジョンがあるかは知らんけど。必死に毎日追われとるわけでなく。アルファードのカスタムを楽しみ、BBQに勤しみ楽しみを享受する」

駒月「あいつらはそもそも追われてるという感覚を知らないんすよ。だから今ある仕事をなんとなく続けて、これを続けるのが普通だよねと。大成功に手を伸ばすわけでなく、今の会社がいつなくなるとか危機感を持つわけでなく。ただ娯楽は子供を育てること、週末何かをすること。それがBBQみたいな。それもひとつの形でありながらも、目指す先が死しかない。死あるのみやないっすか。それは俺も不思議に思っとるっすけど」

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駒月「僕ら夢見とる人種やないっすか。それじゃないほうが多分幸せな部分の方が多いんすよ」

山田「そうやねぇ。本当にさ、すごい印象深く残る。そいつらの行動が。それが悪いわけじゃなく。『この肉うまそうじゃーん』とか『すごいでかいお肉だねぇ』とか。母親は子供を抱えながら。お父さんを嫌がるわけじゃなく、『それ貝とか食べれないから』みたいな。そういうのを和気藹々と普通のファミリーとしてやってて。そいつらはそれを30代40代50代と続けていくんじゃん。それ飽きんのか!?と思って」

駒月「(大爆笑)」

山田「飽きるやん!普通。だって都内に車持って2年おるだけでももうやることないなと思うんよ。俺はだから大黒PA行くのやめるわけよ。車の使い方を原点回帰して、新しいとこ行ったり。新しいとこ行くと幸せってのを体現できるものこそ車やから、正しい使用用途にしていこうと。そういうマインドに変わっていった。彼らはそういうの一切ないじゃん」

駒月「そうっすね」

山田「彼らはディズニーランドとユニバとコストコがあれば幸せ。一生」

駒月「それって結構今までの生活からもちろんきてるものもあって。それは何かって言うと、僕らは作る側になってるわけじゃないですか。だから作れるんすよ楽しみを。多分。作れるし、作っとる人の考え方もわかるし。で、それはたくさん作れる・ちょっと作れるの違いじゃなく、作れるか作れないかなんすよ。マイルドヤンキー家族は作れないで何十年過ごしてきたから、何かを作ってくれた人に対して無意識に消費するっていうことがもう解としてそれしか持っていない」

山田「なるほどね」

駒月「僕らは例えばディズニー。交通費含め一人1万、1万5000円くらいで。ディズニー行くの選択肢はなくなるわけやないっすか。じゃあその代わりなにするかって、バイクでもいいけど、1万もなくても同等の非日常的な楽しみ方ができて。それを自分で作れる、計画できる。それを作るってのもクリエイティブってワケではなくて」

山田「工夫して遊べるってことね」

駒月「そうそう。自分を楽しませるための選択肢があいつらはあまりにも少ないってだけです」

山田「つまり自己分析が足りないと」

駒月「そうっすね。自分を喜ばせる方法をあまり持ってないので、テレビでやってたとこに行くし、SNSで話題のとこに行くし。あいつらそこがどれほど楽しいかの検証をしに行ってるだけなんすよ」

山田「ほんとそう思う。パンフレット通りの旅がしたいと」

駒月「作れる人作れない人って理論は昔っから信じてますね」

山田「ちょっとそれはスッキリするなぁ」

駒月「だからホリエモンとひろゆきの意見が分かれてるわけで。何かって言ったら、ホリエモンはスマホとタブレットさえあれば仕事ができる。ひろゆきはPCが必要だと。二つの違いは、スマホとタブレットだと消費側に回るしかないんすよ。視聴者側に回るしかなくて、作り手側には一生回れない。ひろゆきはそれを危惧してそれじゃいけませんって対立してるわけで。それを僕らは作り手側にいるからこそ、あいつらの消費行動に興味があるんすよ」

山田「なるほどー。俺がそういうとこに目が行っちゃうのもそういうことか」

駒月「多分そうっすね。逆に僕らからすると作れない側の行動って未知じゃないっすか」

山田「ほんとやて。なんでこいつらこれを何十年も続けて幸せなんやろってほんと思うもん。俺がおかしいんじゃねーかなって焦ったもんね。20代でコストコに飽きてしまったらどうしたらいいんやろって」

駒月「確かに」

山田「今なんか、もぐぴ(駒月のハンドルネームの略称)はまだコストコ1回目やからいいかもしれんけど、俺もうショップタオルとステーキ肉しか買うもんがない。あんな肉でかくなくていいし、何時間もかけて行く必要もない」

※ショップタオルとは、車バイクの整備に必須のアイテム。キッチンペーパーの上位互換

駒月「別に肉買うだけなら、徒歩1分のデカエー(スーパーマーケットBig-Aの略)行って」

山田「ホットドッグも別にマックでいいし」

駒月「そこの要素として一番でけーのが子供やと思ってて。子供って最高の娯楽やともう思ってて。僕らってバイクとか車が故障することを楽しんでるじゃないっすか。子供はすぐ故障するんすよ。怪我するし病気するし、何かしら厄持ってくるし、上手い行くこともあれば上手く行かんこともあって。それが少なくとも18年続く娯楽なんすよ。それが毎日起きるってのは多分めちゃくちゃ面白いやろなと思って。それのためなら作り手側に回らないとという思考は頭から排除されるかも」

山田「目の前のことで精一杯やしね。俺のエスプリで精一杯やし」

駒月「詰まるところ精一杯になれるものが欲しいわけじゃないっすか。そう思うと子供って結構でけーんじゃねーかなって思うっすけどね。まあかと言ってそれとBBQめちゃくちゃして飽きないってのはまた別軸の話やと思いますけどね」

山田「まあでも子供の場合は常に別のイベントが発生するやん。BBQしても。子供は更新性のあるものやから。例えばBBQでも食うものが一緒でもそれに対する反応が違う」

駒月「子供はもうSNSのタイムラインなわけですよ、毎秒毎秒。突然こけたとか、風邪ひいたとか、飯うまそうに食うなとか、今日サッカーしてきたとか。そのただのタイムラインの具現化なんで。そう思うとめちゃくちゃおもしれーんじゃないかなって」

山田「しかも今は第三者から反応もあるしなぁ。それが増幅される」

駒月「自分でも楽しめて、ある程度の承認欲求も満たせて。それ20年続けりゃ立派な大人と見られるわけで」

山田「社会的地位もあるしな」

駒月「僕らロータスやドゥカティを20年維持したところで誇らしげではないじゃないっすか。別に、大して。僕もああいうの見て結構いろいろ思うことありますけどね。シンプルに家族羨ましいなーって思うこともありますし。マイルドヤンキーねぇ…。ショッピングセンターとかコストコでいろいろ見てるだけで面白い。ブチキレてる母親とか見るのめっちゃおもろいっすもん。なんであんなおもろいんやろ」

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-----十数分後-----

山田「なんとなく止まってると澱み始める、空気が」

駒月「あーすげーわかるっすね」

山田「なんか刺激を与えて換気しないと空気が吸えない」

駒月「僕が今孤独が辛いのは安定の裏返して、毎日好きなもん食えるし、バイクだっていつだって乗れるし、仕事も好きなだけできるし、帰省もいつだってできる。だから視界が澱んでんすよ。明らかに。それが嫁持ちとか、マイルドヤンキーは、必要以上に不安は感じるやろうしなんかしら思うことはあるでしょうけど、それが息苦しいとかそういう思考はないと思ってて。僕らは相当贅沢っすよ。彼女おったらおったで邪魔って言うし、おらんならおらんでなんか言うしみたいな」

山田「贅沢やなぁ」

駒月「ほんと贅沢っすよ」

山田「まあないものねだり」

駒月「そうっすね。詰まるとこそれは人生に対する焦りなんすよ。現状維持は悪やから。」

山田「いや悪だねぇ」

駒月「それは自動的に育つ子供ってツールを持ってないからじゃないかって僕は思っとるっすけど」

山田「でも子供できたら現状維持マインドになる?」

駒月「あー。まーーーー。子育てが必死なレベルになればなるんやないっすか。他に考えれる猶予がないのなら。いや、てなったら辛い。それしかできんって辛いなぁ。いや、マインドは変わらんっすよ。子供ができたとて」

山田「子供ができたって俺らはコストコへは行かない」

駒月「そうっす。絶対にそうっす」

山田「てことは片っ端からコストコじゃない楽しみ、やれキャンプ、やれサイクリング。そういうパパの方が子供はよく育つ」

駒月「いやーいいと思いますよ」

山田「あーだからマイルドヤンキーの子供はひねくれとんのか」

駒月「確かに」

山田「価値観が乏しい」

駒月「でもそれ言ったら俺もそうっすよ。いろんな体験をさせてもらえなかった家庭なんで。家族でテーマパークとか行ったことないし。おとんもおかんも嫌いやったでかわからんけど

山田「それで一つ違うのは、いろんなことを親がさせてあげるってのはさ。親から提案するものと子供が自発的に始めるものと2パターンあんじゃん。それが両方ともあまり許されないと乏しい。子供がなんかやりてーてなった時にほったらかしてでもやらせるとか」

駒月「俺まじでなんもやってこんかったっすよ。与えられてもないし、自分でこれやりたいって言ったこともないし」

山田「でも自分で遊びをやっとったわけじゃん。なにかしら」

駒月「まあ遊びはやっとったっすけど」

山田「PCとかさ。俺はチャリやっとったし、ラジコンもやったり」

駒月「うちにあのPCが1台なかったとしたら俺はゾッとしますよ。あの頃からPC触っとったから今職があるわけで」

山田「やっぱ家庭環境大事」

スマホ「1km先、高速道路ループコイル式オービスです」

山田「その話になると、リセーさん(駒月家長男)の飯食わせとけば育つ、あとは自由にやったらってのはいい」

駒月「でもほんまの自由を与えられるってのはめちゃくちゃ財力がある場合だけっすからね」

山田「子供がチャリ欲しいーって言ったら買ってあげられるようにはなりたいなぁ」

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-----オービスの話-----

駒月「僕も長期的な目標ってやっと立てたっすけど。岐阜帰るなり鈴鹿住むとかあるっすけど。それすると必然的に意識高い仕事論になるのでめっちゃくちゃしたくないんすよ。今の仕事をいかにオンライン化するとか、どこでも働けるように自分の技術をつけるとかって話がめちゃくちゃ嫌なんすよ。詰まるところそれは人生の大部分を仕事に持っていかれてるってのが現状と自分で言ってるわけじゃないっすか。それってすげー惨めで」

山田「なんも考えずに行きたいよね岐阜に」

駒月「マジでなんも考えたくないっすね。仕事どうにかなるやろーみたいな。でも僕ら無理っすよ。生活コスト高いんで。だから仕方なく2,3年かけて準備するしかない。僕ら後2,3年で好きなようにできるようになったら30っすよ。岐阜に帰ったところで自由かどうかはわかんないっすけど」

山田「まあ親の介護とかもあるからなぁ」

駒月「そうなんすよ。今帰ったら俺担当になるから嫌なんすよ」

山田「あれそうなの?」

駒月「多分そうでしょ」

山田「俺は長男やから弟に任せるわけにはいかんのよね。今弟が岐阜におるもんで」

駒月「よー長男で東京行ったっすね」

山田「俺その辺あんま考えてなかったほんとに。長男らしくない。でもなんかあった時は弟と協力してなんとかしなあかんなって。割とでも俺の頭ドライやから介護必要なら勝手に老人ホーム入ってくれよって。親は親で一人の人間で、俺は俺で一人の人間やから、そんな肩入れするつもりねぇぞって感じ」

駒月「確かに。どっかで見たっすけど、無償の愛は子から親にしかないらしいっすよ。親から子へ無償の愛はあるわけがない。親って子から無条件に愛されるからいいんすよ」

山田「得してんな」

駒月「得してますよね」

山田「子供が親の介護せなあかんみたいな話。これはまあご先祖さまがいるみたいなマインドでいくと俺もそういうマインドがあるけど。あんまこう言うこと言いたくないけど、自分が死ぬことはわかっとるんやから自分でどうにかしろよって。今その練習期間みたいなもんやん。一人で住んで、彼女見つけて一緒に住んで二人の収入でやりくりするみたいな」

駒月「まあ自分を助けてくれる唯一の道具として子供作るのはなしじゃないっすけどねー」 

山田「やっぱ自分が元気なうちに好きなことするしかない」

駒月「マジでそうっすわ」

山田「東京来て岐阜の同じくらいの年齢のやつが工場とかで働いて得られる収入と同じくらいしか俺ないから。1000とかないから、平均ちょいくらいしかないから戻れと言われればすぐ戻るんやけどさ」

駒月「マイルドヤンキーの第一歩っすね」

山田「そうなったらなぁ。まあでも岐阜戻ったらなんか起業したいなとは思う」

駒月「なにやるんすか」

山田「なんやろねー。それこそガレージハウスでもいいけど。せっかく土地が広いんやから、みんなで集まれる場所作りたいし。でもそれ自分ちの庭をちょっと広く作ったマイルドヤンキーと変わらんけど」

駒月「まあ嫌いな人種に寄っていくっすからねなにかと」

山田「あーマイルドヤンキーめっちゃ好きやわ」

駒月「やばいやばい。マジ人生考えると悲しい」

山田「そもそも金に縛られるすぎとるんよ」

駒月「それっす。僕らの娯楽は金がないとできんっすからね。それだけは運が悪かったと思う」

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-----談合坂あたりの超減速-----

駒月「人生の目標30にしたのほうがいいっすよ」

山田「30?」

駒月「はい。30までにこれができてなかったらもう死のう!つって」

山田「なるほど」

駒月「そこになんか毎週の鎮痛剤みたいな娯楽を入れていくことはなんの意味もない。根本的な解決になってない。逆に考えて、自分がめっちゃ金持ちになるとしましょうよ。例えばその手段が起業とか東京でバリバリ働いてる人格やと仮定して。起業した時点でもう自由ではないじゃないですか。もう労働に100%ベッド。本来の自由をめちゃくちゃ遠回りしとるんすよ」

山田「あー」

駒月「なんの話やっけな。おっちゃんが釣りしてて、今日釣る分だけ釣って毎日楽しむと。そこにサラリーマンが来て、ほんで毎日釣りすんのめんどくないっすか?ってあなたが船を1台買えば魚がたくさん釣れるようになりますと。儲かり始めたら船をたくさん買って、釣り人たくさん雇ってめちゃめちゃ魚漁れるようにして、あなたは大金持ちです。そうなったら自由が手に入るので、あなたは好きなだけ釣りができますって話があるんすよ。最初からその遠回りいらないじゃないですか。そもそも釣りできてんだし」

山田「なるほど!」

駒月「釣りが好きで、一人で釣りしてたのに、挙げ句の果てに目指すとこがそこってなるなら、その途中過程いらないんすよ」

※正しいのは「釣り人の話 MBA」とかで調べたら出る。

山田「確かに」

駒月「僕ら今めちゃくちゃ遠回りしてんすよ」

山田「してるねぇ」

駒月「二十歳くらいでバイク乗ってたけど、なぜか金持ちになりたかったんかなぁ。東京来ていろいろやって岐阜帰ってきた。そしたらちょっと年老いた体力の落ちたおっちゃんがちょっといいバイク乗ってるだけって言う。それは寂しくないっすか?っていいう」

山田「チッ」

駒月「静かな舌打ちでしたね」

山田「まあ、密かにマイルドヤンキーが羨ましく思ってた理由がそこかも」

駒月「うん。さっきの話はまあ空想の話なので、給料とか税金とかってのはないけど、それに伴うのは日々の工場労働を耐えると言う前提ではあるんすけど。遠回り中っすね」

山田「まあどう考えても遠回り中やね」

駒月「ただまさひろさん(山田くんの名(仮))が唯一いいのは、配偶者候補を見つけたのはめちゃくちゃでかいんすよ」

山田「あー」

駒月「東京来て何年っすか?」

山田「3年くらいかなぁ」

駒月「それで配偶者候補見つけたってめちゃくちゃでかい収穫で。俺はそれ以上のことはねぇと思うっすけど」

山田「なんでなんでなんで?」

駒月「えーだから昨日のジョイフル(岐阜バイク乗りたちの集いの場)で言ったじゃないですか。岐阜で同世代で配偶者探すとしたら、ゴミの中から一番マシなゴミを選ぶみたいなもんで。そんないいものが残ってるはずがない」

山田「でも配偶者を見つけることがプラスになんのかな」

駒月「いやープラスでしょう。死を恐れてるからプラスなんやと思いますが」

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これ以降も山田くんは釣り人の話を食らってしまい、車中でも数日後までも考え込んでしまうのであった。

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