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アイドルから女優への転換点。歌手としても一段とレベルを上げたエポックメイキングとなった作品

「Wの悲劇」

この映画の主題歌である「Woman "Wの悲劇"より」は、松本隆&ユーミンのゴールデンコンビが創り出した至高の一曲であり、転調で音程がふわついたサビメロを難なく歌いこなす薬師丸ひろ子の歌唱力と相まって永く聴き継がれていく名曲であることに異論を挟む人はいないだろう。

薬師丸ひろ子は歌わないアイドルだった。初主演の「翔んだカップル」やその後の「ねらわれた学園」でも主題歌は他の歌手が歌っている。

大ヒットした「セーラー服と機関銃」も当初は来生たかおが「夢の途中」として挿入歌となることが決まっていたが、それを急遽、薬師丸ひろ子本人に歌わせることに変更となり、題名も「夢の途中」から「セーラー服と機関銃」にして出したのだ。

結果、これが薬師丸ひろ子の歌手としての可能性を引き出し、以来「元気を出して」などの名曲を出しながら、現在も定期的にコンサートを開きアルバムを出しているのだから、世の中何がきっかけで運命が変わるかわからないものである。

そういう意味でいえば、「Wの悲劇」は女優、薬師丸ひろ子がアイドルから女優へと転換点となった作品であり、興行収入的にも見事に乗り越えたといえるものとなった。

169分と長尺でありながら、ダレるところもなく、劇中劇という舞台俳優としての演技とそれ以外の演技との切り替えが難しい点をしっかりとこなしている。

薬師丸ひろ子のファン以外の人が観ると彼女の大根ぶりが鼻につくというレビューもあるが、これは舞台俳優としては劇団の研修生で配役をもらえるかどうかという設定の役なのである。

その大根ぶりは、映画の後半で見せる真に迫った演技をみれば、むしろ狙ってそうしているのであることがわかり、短時間で急速に演技力が増していったことをわかりやすく演じていて結構侮れないのだ。

どんなアイドルであれ、アイドルを卒業して次のステージへと向かおうとする。あるものは上手く切り替えに成功し、その後も活躍できるが大抵の場合失敗して過去の人なることが多い。

そんななか、薬師丸ひろ子は、その立ち位置や役割を柔軟に変えつつ現在も現役バリバリで頑張っている。そういう意味サバイバル能力が非常に高い女優さんなのである。

因みに作品の内容については、アマゾンのレビューをご覧になってください。特筆すべきは三田佳子さんの「私は女優」であるという振舞を見事なまでに体現して見せつけてくれた点です。これは必見ですね。若い世良正則さんもいい味出してますけどね。

#映画
#Wの悲劇
#薬師丸ひろ子

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