特定保守管理医療機器における保守サービスの概要と請求管理上の注意点

1、はじめに

ハードウェア機器は破損しやすく保守サービス業者と契約するのが安心です。この点、医療機器は不具合の心配はもちろんとして人命への危険性もあり、ハードウェア機器以上に適切な保守の実施が不可欠です。

本稿では特定保守医療機器に絞って基礎知識と保守サービスの概要を説明します。そのうえで特定保守医療機器の保守サービスにおける請求管理の注意点も取り上げて解説します。

2、特定保守管理医療機器とは?

全ての医療機器は、一般医療機器、管理医療機器、高度管理医療機器の3つに分類されますが、これらのうち保守・点検及び修理に専門的な知識技能を要するものを特定保守管理医療機器といいます。

具体的には、体外型心臓ペースメーカーや除細動器、透析装置などで国内では約1000種類が指定されています。

医療機器のクラス分類は2002年の薬事法改正の結果、人体に及ぼすリスクの程度に応じて規定されたものですが、特定保守管理医療機器はクラス分類にかかわらず、使用が長期に及び重大な不具合や感染の生じる恐れのある医療機器について特に指定したものです。

3、特定保守管理医療機器の保守サービス

特定保守管理医療機器は定期的な点検が医療法・薬事法によって義務づけられています。

理由は、人命にかかわる医療機器は安全確保のために必要な機能を常に満たしていなければならないからです。いつでもベストな状態で利用するためにも保守・点検は必須です。

保守実施時には専用の機材やシミュレーターが必要となり、専門知識を備えた担当者による作業の実施が求められます。

保守点検には日常点検と定期点検があります。日常点検とは使用者による使用前の点検であり、毎回の使用ごとに1回は実施しなければなりません。日々の簡易な動作チェックです。

一方、定期点検とは専門業者による作業であり定期的な実施が必須です。専用の検査機器や治工具を用いて担当者が入念にチェックを行います。具体的には、安全装置・機構の動作確認を行ったり、劣化部品があれば交換して機材の細かな修繕にも対応します。

特にバックアップバッテリーの交換は重要で、気付かずに劣化が進むと人命にかかわります。定期点検時に消耗度合いを確認するのは不可欠です。また、ソフトウェア及びハードウェアのアップデートも保守作業に含まれます。

4、請求管理上の注意点

経理担当者の大きな負担となっているのが請求管理業務です。業務フローとしては請求の締め、請求書の発行と送付、入金確認、消込作業となります。

特定保守医療機器の保守サービスは特殊な業務ではありますが、請求管理は
一般的な業務フローと同様です。

注意点としては、①請求書発行時と②入金消込時の厳密な確認作業が必要ということを指摘できます。理由は、特定保守医療機器の保守サービスの場合、点検ごとに部品の交換や修繕が必要となり、請求内容の定型化が難しいからです。

これは消込作業時にもいえることで入金に対応する点検作業がいつどこで実施されたものか十分に確認したうえで消込を行わなければなりません。

5、最後に

特定保守医療機器の保守サービスは特殊な分野ではありますが、請求管理のフローは一般的な業種におけるそれと変わりません。

だからこそ細かな作業が多くなり、請求過誤や消込の遺漏を防ぐために細心の注意が求められます。しかし、契約件数の増加に伴って作業量も増加します。

当然ながら人的リソースに依存していると致命的なミスを誘発することになりかねません。そこで、業務規模の拡大に合わせて、請求管理のシステム化が検討すべき経営課題となるのは自然な流れといえます。ミスの許されない業務だからこそシステム化を進めて属人的なミスを防止していくべきです。

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