ガリョキンproで考えたこと④構図Part1
マンガ家の染谷ユウです。
前回に引き続きジャンプの
マンガ賞にある作画部門の
ガリョキンproで賞に入るために
工夫したことを解説します。
前回の記事はこちらからどうぞ。
今回は作画面での
コマ割り、構図、セリフ、
に絞ってお話したいと思います。
要点としては
読者に負担をかけないように
どうやって読みやすく工夫するかについて
考えたことをまとめていきます。
※第8回のガリョキンproの
ラブコメ部門のネームが
見れましたらそちらを
先に見た方がわかりやすいです。
※元ネームが不正解とかいう話ではないです。
※元ネームを悪いと言いたいわけではなく、
あくまでも個人的な解釈と考えで記事を書いてます。
※元原作者の方は私が中学生の頃から大好きな漫画家さんなのでリスペクトしてます。(だから応募したい!と思い、作画しました)
①単ページの見せ所を決める
ガリョキンproの面白いところが
セリフ以外はコマ割りも構図も
演出も変えてOK!というところです。
せっかくならそのままのネームを作画するより、
より読者が分かりやすく&楽しめるように
工夫したいと思いました。
基本的なマンガの教えで
パラパラとマンガをめくった時に
同じようなコマが続くと読者は
どこを重要視して読めばいいのか分からず
飽きて読み飛ばしてしまいます。
キャラの行動でもセリフでもストーリーでも
”分からない”という感情が続くと
読者はそこで読むのをやめてしまいます。
読者に『とりあえず大きいコマ読んで
おけばどうなってるか分かる』
というようにするために
お話全体だけではなく
1ページ単位で
このページで一番見せたいシーンは
ここと決めてコマの大きさを
四捨選択していきます。
読み切りや連載各話でも
一番見せたい伝えたいシーン(見せゴマ)は
見開きにしたり1ページ1コマで描きます。
これを1ページ単位でも考えます。
このネームはラブコメでしたので
ラブコメの場合で一番見せたいのと言えば
ヒロインの表情、ヒロインのスタイルなので
ネームを見た時から見せゴマの大きさは
いじりませんでした。
逆にその見せゴマ以外を
引いたり、小さくしたり、シンプルに
したり、見せゴマが引き立つように
配置します。
②情報を可視化してみる&各ページ解説
元のネームから情報を削りすぎないように
一コマごとの情報を書き出しました。
元のネームから読み取れる情報から
更にその情報がより伝わりやすく
絵だけでも伝わるように
自分の引き出しから情報をプラスしました。
<2ページの場合>
加筆修正したところ
●1コマ
暑いというのをセリフだけではなく、
女の子に下敷きを持たせたり、
半袖の袖をまくってみせたり、
仕草や小物でどのくらい暑いのかを表現しました。
今更ですがカバン描くの忘れてました(笑)
●2コマ
主人公の表情のコマ追加しました。
プールに行こ!というのは
主人公にとって初情報だったので
それを主人公が理解するための間を
作りました。
元のネームでも間がありましたが
一旦このコマを新しく追加したのは
このマンガの視点は男の子であると
伝わりやすいかな?と思ったからです。
●3コマ
プールに行くという初情報を主人公が
理解するための間のコマでも
ありますが、
いろんな情報を伝えるためのコマでも
ありました。
・時間帯(夏休みの補習帰り?のお昼)
・場所(現代とわかる住宅街、服装、自転車)
・二人がどこにいるかの位置関係
が元のネームから読み取れたので
ここはあまりいじりませんでした。
追加したのはヒロインは自転車乗ってるので
主人公にも自転車追加しました。
あと元のネームで描いてある
セミの鳴き声のジ~ワという効果音から
暑い夏という情報があるので、
小さい男の子が虫取りカゴ持ってたり
家族づれが歩いてたりするのを追加すると
モブでも季節感を出すことができます。
大切な情報が詰まってますが
次のコマの主人公の情報の方が
優先順位が高いと思ったのと、
読みやすくするために
この背景の3コマ目は小さくしました。
●4コマ
セリフにもある非モテを絵だけでも分かるように
ドキドキの効果音を追加(余裕のなさ)
顔を赤らめてる表情を元のネームより強調しました。
ヒロインを意識している主人公というのが
一コマで見て分かるようにしてみました。
あとセリフが詰まってて
もしかしたら読者が読みづらいかも
と思って最後のセリフを
次のコマに移動させて次のコマに
流れやすいようにしました。
そのセリフを誰が喋ってるか
分かるように主人公の顔も描きました。
<3ページの場合>
まずは情報の可視化しました。
●1コマ
ヒロインを見て顔を赤らめる主人公の顔を追加しました。
好きな子の水着を見てドキドキするのは
リアルな男子高校生によくあるリアクション&
水着に見慣れてない主人公の非モテ感を
出すためにこのコマを追加してみました。
ラブコメといえば主人公がドキドキすれば
読者もドキドキする。
というのを意識すれば描きやすいです。
●2コマ
元のネームですと
ヒロインを前から見た構図でしたが
あえて主人公視点から見たヒロインに
してみました。
そしてネームから不穏な空気を
漂わせてるヒロインでしたので
あえて全顔を見せずに
横顔にすることによって
何かを隠しているヒロイン
という演出にしてみました!
正面顔だと気持ちが100%伝わりやすく、
(ワンピースのドン!と名言を言う時みたいな)
横顔や一部顔の部分が隠れていると
気持ちを一部隠しているといるという
演出になると学びました。
完全に顔が見えないように描くと
気持ちを全てシャットアウト&
隠してるというふうに
私は認識しています。
この後のコマでもヒロインが顔を隠すように
元のネームでも描かれてますが
主人公(読者)に気持ちを悟られないように
しているヒロインだったため&
謎を残して次のページへ誘導するため
なのかなと思っています。
(真相は原作者の稲垣理一郎先生に聞くしか…。)
あとヒロインをより輝かしく見せるために&
主人公立場(読者)の優越感を出すために、
ヒロインに見惚れてるモブを周りに
追加すると良さそうです。
よくラブコメマンガのあるあるで
周りのモブが騒いでたり、噂してたりするのは
可愛いの説得力が増すからです。
●3コマ
セリフと主人公の表情が重要かな?と
思ったのでヒロインを描きませんでした。
背景はベタフラッシュ入れて
”やべ!バレた!?”っていう主人公の顔に。
●4コマ
このコマ追加したのも
”好きな子本人からまさかこの質問が…!”
という主人公から見たら初情報でしたので
情報処理する主人公のコマを追加しました。
元のネームですと『…』のセリフが
その情報処理してる”間”だと思いますが、
あえて主人公の表情を追加させていただきました!
●5コマ
ここは元のネームから何も変更しませんでした。
ヒロインたちがプールに入っていくという
位置関係を見せるためのコマと
主人公が好きな人がいると伝えるシーン。
●6コマ
ヒロインが顔を沈めてるコマ。
元ネームを見た時ヒロイン視点になった流れを感じたので
ここを主人公から見た構図にしました。
●7コマ
水面から出るヒロインのコマ。
元のネーム通りに顔は見せないのを守りつつ、
少しサービスシーンを入れたい私の欲が出ました…。
ボディラインが分かるような構図にしてみました。
と今回の記事はここまでにして
次回は続きのページの解説をしていきます。
ここまでお付き合いいただき、
誠にありがとうございました。
よければスキを
押していただけると
今後の活力になります…!!
前回の記事にスキのリアクション
ありがとうございました!
届けたい対象の方に届いて
とても嬉しい気持ちになりました。
次で最後の記事になりますので、
最後までお付き合いいただけると幸いです。
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