オカルトの時代変遷

唐突ですが、私はオカルトが好きです。
この私が今話すオカルトとは、アレイスター・クロウリーが暴いた神秘のことではなく、少し下世話な内容です。

幽霊、妖怪、UFO、未確認生物、未解決事件etc...
わからない、だからこそ惹かれるものがあります。

ちなみに私のスタンスとして「全てを検証し、否定し尽くしたうえでなお、理解できないものが本物」という考えなので、「心霊写真だ!すげー!」「あの影は絶対巨大生物だよ!」みたいな態度はあまり好きではありません。
心霊写真というならば、目の錯覚や合成ではない根拠。
未確認生物であれば、既存生物ではないという根拠がない限り信じるわけにはいかないのです。


そんなオカルトが最大のブームを迎えていたのは1970年代。
私がまだ生まれていない時代です。

今の方々は知らない方もいると思いますが、当時「ノストラダムスの大予言」と呼ばれるシリーズ本が発売されました。
これはフランスの占星術師であるノストラダムスの予言を翻訳した内容で、「1999年7月に空から恐怖の大王が来たるだろう」というような予言が大きな話題を呼びました。
これにより、人類は1999年7月に滅亡すると思われていたのです。

実際はそんなことはありませんでした。
当たるも八卦当たらぬも八卦。というところでしょうか。

予言は発言内容や受取手によって、いかようにも変わるものであります。
例えば天気を"予言"したとします。
「明日は雨が降るぞ」と言った場合、晴れればハズレになるでしょう。
しかし「明日は雨が降るぞ。ただし一時的にだ」などと条件をつければ、にわか雨でもそれは当たりです。
また、「雨が降るぞ」という言葉自体は地域を限定したものではないため、受取手次第では「この地方は雨が降った。当たりだ」と捉えることもできます。

話を戻しましょう。
そもそもノストラダムスは1566年に没している人物であり、1990年代まで凡そ400年ほどの開きがあります。
当てずっぽうの予想をしても、誰かがたまたま、予言に似た行動を取ればそれは当たりとなり得えます。
そして受取手次第では「2年ほどズレているが、これは予言そっくりの行動だから当たりだ」と、至極曖昧に扱われてしまいます。

しかし、このことがきっかけで第一次オカルトブームが起こりました。
コックリさん、口裂け女、こういった都市伝説が生まれたのもこの年代のようです。


1990年代、いよいよノストラダムスによる人類史の終わりが見え始めた頃、テレビによるオカルトは最大のブームを迎えます。

心霊写真特番、都市伝説検証、ミステリーサークル。
色々な番組が幽霊やUFO、そして人類の終わりを面白おかしく騒ぎ立てました。

こうした中、起こっていたのがサブカルチャー文化と宗教の関係です。

オカルトといえば、宗教との関わりのイメージが強い方もいるかもしれません。
厳密にはオカルトとは神秘、超自然を指す言葉であり、宗教とは違います。

メディアではそういった線引きは当時(現代でも)曖昧で、オカルトブームにあやかってなのか、宗教家を囃し立てる傾向にありました。

その中にのちに日本史に残る大規模テロを起こす「オウム真理教」の姿がありました。

オウム真理教のことだけでとんでもない文章量になることと、今回はオカルトに絞った記事のため割愛しますが、知らない方(そんな方はいないと思いますが)に向けてかいつまんで話すと、「自分たち宗教団体に批判的な人物を殺害する。」「捜査の目を撹乱するため致死性の高い毒ガスを撒く。」「日本へ戦争を仕掛けるために、某国とのパイプを繋ぎ武器調達の下準備をする。」などをおこなっていた危険思想団体です。

このせいで宗教団体全てが、一時期危険思想集団と思われてしまいました。
とんでもないとばっちりです。

そもそも宗教とは、心の救いを求める者たちの集まりです。
オウムもそれは例外ではありませんでした。

心の拠り所のない、孤独な者たちの集まり。
それがいつの間にか、過激な思想を持ち、日本を敵とし、テロを起こすまでになりました。

オウムそのもの、宗教そのものが悪いのではありません。
現代でも"孤独"は誰しもが抱えているものなのです。

それに気づかない限り、いつ、似たようなことが起こるかわかりません。
肝に銘じておきましょう。


話が逸れました。

人類が滅びなかった1999年後。
こうしたオカルトブームの移り変わりにより、2000年代にはすっかりテレビにおけるオカルト番組はなりを潜めました。
UFOはCG加工され、心霊写真は合成され、アンビリバボーは感動体験談ばかりを流すようになりました。

そんなテレビオカルトブームの終焉の中、オカルトブームはウェブへと移りつつありました。

2000年代初期に最盛期を迎える2ちゃんねるのオカルト板による「死ぬほど洒落にならない怖い話を集めてみない?」スレです。

最初は実際に体験した心霊体験などに限らず、事件に巻き込まれた、事故にあったなどの、本当の意味で洒落にならない怖い話だったのですが、創作も次第に増えました。

例えば「コトリバコ」、「リョウメンスクナ」、「八尺様」などの長編は、創作として有名となり、2022年現在では、すでに独立した形として創作物の元ネタとすらなっています。

こういった創作物におけるオカルト全盛期が、同時に匿名掲示板2ちゃんねるの全盛期とも言え、2ちゃんねる衰退と共にこちらのオカルト板も衰退をしていきました。
現在は傑作が良スレなどとしてまとめられ、さまざまなウェブサイトで読むことが可能になっています。


2010年以降はオカルト文化そのものが完全な下火となり、八尺様はショタ食いのエッチなお姉さんとなり、リョウメンスクナは特級呪物などへ形を変えています。

では、オカルト文化は完全になくなったのか、といえばそうではありません。

YouTubeの流行により、心霊系、廃墟探索系 YouTuberが次々と動画配信へ参戦。

ゾゾゾ、オウマガトキFILM、デニスの怖いYouTubeなど、心霊スポットや不気味な場所を実際に撮影しに行き、配信や動画をアップロードするという方法で現代オカルトは形を変えて生きています。

反面、オカルトブーム初期ほどの超能力やUFOなどのオカルトはほぼほぼ扱われず、オカルト=心霊のイメージが強くなってしまいました。

こうして見ると、最初は本だったのが、テレビとなり、次にウェブ掲示板から動画投稿サイトへと、時代の移り変わりと共にオカルトの居場所も変わっていきました。

昔のような熱狂的なブームはもう過ぎてしまいましたが、今もオカルトはたしかに生き続けています。

オカルトという神秘、謎。
ただ怖い、不思議というだけでなく、いつの日かその謎が解き明かされる日が来るのを信じて、私は待ち続けたいと思います。

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