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早春賦「春は名のみの 風の寒さや」

「立春」からはや1ヶ月が過ぎ、今日は「啓蟄」。冬ごもりしていた虫が外に這い出てくるというが、吹く風はまだ冷たい。這い出してきた虫もまた土の中に潜り込んでしまいそうだ。
雛祭りも終わったというのに、庭のハナモモはわずかしか咲いていない。かつてはこぼれるほどに花を咲かせたのに、樹勢が衰えたのか、いまは寒風の中に寂しく枝を伸ばしている。

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ふと「早春賦」の歌詞を思い出した。

 春は名のみの 風の寒さや
 谷のうぐいす 歌は思えど
 時にあらずと 声もたてず
 時にあらずと 声もたてず

作詞は吉丸一昌という人で、大正の初期に長野県安曇野を訪れ、雪解けの風景に感銘を受けてこの詩を書き上げたそうだ。時期的には立春を過ぎたころだと思われるが、「春は名のみの 風の寒さや」という詩句は、今日もまだ当てはまる。
しかし、日はずいぶん長くなった。ハナモモの木のそばで毎年咲く白いクリスマスローズが、今年も一輪花開いた。

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「早春賦」の三番は、次のような歌詞である。

 春と聞かねば  知らでありしを
 聞けばせかるる 胸の思いを
 いかにせよとの この頃か
 いかにせよとの この頃か

季節の春は、やがて必ず訪れる。今ほんとうに待ち望むのは、平和の春だ。「せかるる 胸の思い」を抱きながら、遠国の平和の春を祈る。

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