DX人材育成講座 3日目
デザインの本質
デザインは見た目を作ることではない。デザインとは機能そのものであり、ユーザーに望む行動をとってもらうことだ。いかに人に働きかけるか、これがデザインの本質である。
例えば、新型コロナ対策として手指の消毒を促すケースで考えてみる。
床に黄色いテープを貼って消毒液のところまで誘導する。このシンプルな工夫も立派なデザインだ。医療関係者が望む「手指を消毒してもらう」という行動を促すために、床にテープを貼るという解決策を実装している。これもデザインなのだ。
実践例:駅ホームの自販機
例えば「駅のホームにある自動販売機の売り上げを上げる」という課題を考えてみる。
これは机上で考えても答えは出ない。その場に行って観察しないと、なぜ駅の自販機で飲み物を買う人が買うのか、買わない人が買わないのか、本質は見えてこない。
自販機で飲み物を買ってもらうという望む行動を促すには、まず困りごとを解決する必要がある。駅の自動販売機で「飲み物を買いたいけど買えない人」がいるから売り上げが低いという状況かもしれない。より良いユーザー体験とは、その困りごとを解決すること。つまりそういった人々が安心して飲み物を買えるようになることだ。
データに基づくペルソナ設計
よく誤解されるのが「ペルソナ」の概念だ。マーケティングでよく見かける「こんなお客さんがいたらいいな」という事実に基づかない理想像、これは間違い。
本来のペルソナは、観察したデータを切り貼りして作ったもの。
例えば、男性の行動を観察して「行動A」「行動B」「行動C」といったデータを集める。年代が違っても同じような行動パターンがあれば、それらを一つの人格として集約する。これが本来のペルソナであり、純粋なデータの集合体なのだ。
自分に都合のいいように設定された理想的な人物像は「ゴムのユーザー」と呼ばれ、自分の都合のいいように伸び縮みする架空の存在である。
ユーザー体験の5層モデル
ユーザー体験は5つの層で構成される。下から「戦略」「要件」「構造」「骨格」「表層」だ。これらは下から積み上げていく必要がある。
1. 戦略
利用者のニーズと製品の目的を定める。例えばiPodなら「簡単に屋外で音楽を聴くことができる」という目的がここに当たる。
2. 要件
戦略を実現するために必要な機能を決める。iPodの例では
3クリック以内にどんな曲でも再生できる
1000曲分の音楽を持ち運べる
といった具体的な要件が出てくる。
3. 構造
要件を実現するための情報の組み方を設計する。例えば、
トップ画面に情報分類(アルバム、ジャンルなど)を表示
アルバムをクリックすると曲のリストが表示される
曲をクリックすると再生する
という情報の流れを設計する。これが情報アーキテクチャの基本。
4. 骨格
詳細な画面設計を行う。アルバムのアートワークを並べるのか、曲のリストを羅列する形にするのか、といった具体的な表示方法を決める。
5. 表層
最後にビジュアルデザインを行う。ボタンの色や形、選択時の色、背景色、文字、画面上の配置などを決める。
これら5つの層は一気通貫でつながっていなければならない。戦略という目的があってこそ、表層のデザインも決まる。
すべては戦略から始まり、表層まで一貫性を持って設計されるべきなのだ。
デザインの真髄
デザインとは、ユーザーが本当に求めている願い、表面化しない根源的な欲求に丁寧に寄り添い、「本当はこうなったらいいのに」という理想を形にするプロセスである。それは見た目の装飾ではなく、機能そのものであり、人々の行動を適切に導くための総合的な設計なのだ。
建設業への応用イメージが湧いた
建設業においても設計業務はお客様の困りごとにていねいに寄り添い、こうあるべきという理想的な形を見出し、空間に落とし込んでいくことである。
そういった基本はやっていくうちになんとなく理解していくものだが、この講座ではっきりと言語化され、体系立てて理解できたのは非常に大きい。
おそらくこの前提があるだけで設計業務への理解が飛躍的に高まる。
今まで暗中模索だった業務フローが改善されたり、ヒアリング内容も変わっていくだろうし、そこにIT技術をどのように介入させて効率化、データ化していくべきかもなんとなくだがイメージできつつある。
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