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ビリヤニの基礎 その5 〜 簡単レシピにみるビリヤニの考え方

ビリヤニの基礎も今回で最終稿となりました。今回はまとめとして、これまでに触れたポイントや、組み立てを考える上での構成要素を振り返りながら、前回作ってみたレシピを考察してみたいと思います。

1. 簡単ビリヤニの構成要素たち

ビリヤニで検索すればたくさんのレシピがヒットする中、何が簡単なのか少し考えて「材料、特にスパイスの入手の敷居を下げる」「調理技術が問われない」「調理時間を短く」を重視することにしました。その上で、「ほんとビリヤニ」らしい美味しさを感じるためのエッセンスは、無理のない範囲で入れようと考えました。

1.1 スパイス

入手性を考慮して、地方のスーパーでも見かけるSBのカレー粉が主軸です。最近瓶入りのガラムマサラもよく見かけるので、それくらいなら大丈夫そうかな?ということで加えました。黒胡椒はカレー粉以上に入手性が高く、いいアクセントになるのでこれも加えます。

ホールスパイスは迷いましたが、「ほんとビリヤニ」らしさのために少しだけ加えることにしました。一緒に食べてもあまり気にならないクミンシードと、煮込み物ではよく見るベイリーフの2種です。料理が好きな家庭にはすでにありそうな入手性です。

しかしこれらはカレー粉以外は、無きゃ無いでどうにかなります。分量も「一人前カレー粉小さじ1」くらいのルーズさでも、複雑さの妙味は薄れますが、美味しく仕上がります。

実はカレー粉なしの、黒胡椒のみでも食べると結構美味しいです。これだけだとさすがにビリヤニと呼びにくくなるのですが、店で出す時は具材やトッピングを工夫することでバランスを確保したりもしていました。

まずは「美味しくするためには、スパイスってそこまで身構えなくても良いんだ!」と考えておいて良いと思います。

1.2 米

米はとにかくバスマティ米を推しました。入手性が大幅に犠牲になるのは心苦しいのですが、米の食感も見た目の特殊性も風味のビリヤニっぽさ度数も圧倒的です。ビリヤニを初めて炊いてみるのであれば、良質のバスマティ米さえ入手できればもう6割は成功しています。

その上で、よく触れられがちな水加減に関しては思い切って切り捨てました。レシピが長くなったり、作業が複雑になったりするのを避けたかったというのもありますが、そもそも多少の水分量の差はあったとしても美味しいからです。

米の浸水は、その他の作業を行なっていたら結果的にかかる程度の時間でよしとしました。その代わりに、生炊きだけは絶対に避けるように、レシピ中も「鍋の蓋の隙間から蒸気が出る程度の火力を必ず維持」と釘をさしています。

1.3 ボディ素材

カレーやビリヤニを作る上では至極一般的な「玉ねぎ」「トマト」などを、すりおろしやジュースなどの液体状にして使うことで、より敷居を低くしてみました。

全部一緒くたに突っ込むっていう手もあるのですが、今回フライドオニオンも省くので少しでも甘み分を強めたいなと思い、ニンニクや玉ねぎは色付けるようなレシピにしています。味の方向性は中道的ですが、ニンニク・生姜がしっかり目に効くので、少なめスパイスを補うパンチ力があります。

ヨーグルトは無くても成立しますが、米を炊く上ではどうせ浸水の時間がかかりますので、その間の具材のマリネ素材として一緒に入れることにしました。

1.4 具材

入手性や価格の安さも踏まえ、鳥もも肉にしました。本来骨つき肉が美味しいですが、全体の調理時間の短さや食べやすさで、今回は見送っています。レシピ3.7の加水後に多少長めの時間を取れれば、手羽先や手羽元と置き換えても良いでしょう。

また、米の浸水や下ごしらえでどうせ時間がかかるので、その間の時間を使ってヨーグルトとガラムマサラと塩でマリネをしています。グレービーの塩気はこのマリネで全量をまかなうので、よく混ぜないと塩がかたよってやたらしょっぱい箇所ができます。時間が短めなことも計算しているので、長めにマリネする場合は塩を減らし、グレービーを煮込む前に塩を加える感じが良いでしょう。

1.5 トッピング

王道とも言えるフライドオニオンはその手間を考えて諦め、さらに入手性の観点からパクチーも切り捨てました。塩味の揺れが予想されるのでどうしても青味は欲しく、今回はレタスにしました。レタスが高い季節の場合は、水菜などの手に入りやすい生の葉物で置き換えても良いと思います。

また、今回はかなり割り切ったスパイス構成なので、生ハーブ的に生玉ねぎと生姜を加えて「食べる箇所で風味が違う」というビリヤニらしさの担保を狙っています。

辛味は今回は控えめだと思いますが、カレー粉やガラムマサラの中身はメーカーによってまちまちな上に「量もだいたいで良いです」と言ってしまっているので、少し味を散らすためにレモンを添えました。

2. 押さえるべきポイントたち

今回レシピとしては、少し塩が効いた感じにしました。健康状態に問題が無いのであれば、おそらく誰が食べても「味が足りないな」という印象は持たないかと思います。旨味材料(鳥もも肉)も重要ポイントにしたがって、米の重さの1.5倍を入れています。

生炊きを避けるための米を炊く火加減に関しては「米を茹でていたフライパンでそのまま湯煎」という、かなり強引な手法で鍋底の焦げ付きと火力の維持を狙っています。水蒸気が鍋底にグラグラと当たるとちょっと騒がしいですが、薄手のステンレス鍋やアルミの雪平鍋などに有効な方法です(試作は18センチのアルミの雪平鍋で作りました)。厚手の良い鍋がある場合は、直火の弱火で良いと思います。

1時間で仕上げることにこだわらなければ、米をグレービーに乗せた後にもう少し長め(2〜30分程度)に火を入れたり、火を止めてしばらく(10分程度)蒸らしたりすると、より米がのびのびしたり、余計な水分がとんだりして、よりふわっとした仕上がりになります。この辺りは食べているうちにも似たような変化が出るので、雰囲気はわかるかと思います。雰囲気がわかる前に食べ終えてしまった場合、それは美味しいサインなので大成功です。

グレービーの調理はかなり大雑把で、「焦げない程度」「ケチャップ程度の硬さ」くらいの指示しかしませんでした。本当は米を載せる前の具合が気になるところなのですが、「沸騰を維持」と書いているので、そこから想像される状態になっていてくれるに違いない、と信じることにしました。

3. まとめ

ということで、5回に渡ってビリヤニの基礎について触れました。改めて見るとわかるように、「本格的なビリヤニのわかりやすい解説」ではなく、「料理として食べると美味しいことを目指した時、ビリヤニはどこに目を向けると良さそうかという提案」を目指しています。

入り口はともあれ、思わず瞳が輝くくらいの「ビリヤニって旨い!」を一度体感できれば、あとは自然と足が向くようになると思います。

ぜひお試しを!

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