見出し画像

ボードゲームのイマジナリーライン

まえがき

個人的なことから書き始める。
スチール(写真)は高校生ぐらいから一眼レフをメインでスポーツや人物写真を撮影してきている。写真部ではなく陸上部だったから写真は独学。好きな被写体はサッカーとバドミントン。ビデオ撮影は自分もプレーするフットサルの試合、友達のバンド演奏、職場で偉い人の社内用コメントの撮影・編集というぐらいで、趣味の延長ぐらいのレベルに過ぎない。
ボードゲームに熱中したことは無く、とある日、第2回電王戦を観てから将棋に興味を持ちだす。将棋を指すのは手軽な趣味だが、まさか、そこからコンテンツ配信までやるとは思っていなった。しっかりと映像の勉強をし出したのは2019年の連珠 名人戦五番勝負の時から。映像と写真は共通点が多いので理解していくのも簡単だ。とはいえ、あくまで素人の趣味レベル。

たぶん、この数年、他分野から将棋等の世界に足を踏み入れた人は多く(子供のころから将棋漬けではない人たち)、それぞれに、それぞれの違和感を少しづつ持っているように思う。私の場合は、それが写真や映像だったということである。(他にもあるが今回は映像の話)

この問題は多分、過去数十年にわたり将棋コンテンツ制作の方たちの中で議論されてきているだろうことだ。経験は暗黙知となり現場で共有されていると思われるが、新参者の素人には何の情報もない。ネット上でも探せない。だったら、まずは私が書き留めて、他者の意見を引き出そうではないか。

ボードゲームの映像

ボードゲームにおいて一番標準的な映像といえば、ゲームを真上から撮影する「天カメ」映像である。囲碁・将棋などのテレビ番組で見たことがある人も多いだろう。

スライド1

自分が立ち上がって上から見下ろしているということを想像してもらえると分かりやすいと思う。つまり、自分が下(上の写真だとプレイヤーA)である。そして着席すると対面のBを見ることになる。これがいわゆるイマジナリーラインである。
そして、同時に A-B の横である C の位置から見た映像を右側に配置している。これは違うイマジナリーラインを加えた合成映像。この映像配置はボードゲームにおいては標準的であり、プロアマ問わず何かのボードゲームのプレイヤーであればすんなりと頭の中で理解できる。しかし、知らない人からすると???である。

「そんなの誰でも分かるでしょ」

というように思ってしまったボードゲーマーは気を付けた方が良いです。
2つの視点を合成している自然の映像ではないので、違和感を持つ方が人間として正しいのです。視点を変えたいのであれば、転換しなければならない。

サイドビュー

だったら、単一画面だけにすれば良いだろうということになる。
ボードゲームは上下で座ることが多く、そうなると普通の視点で映像を撮ろうとするとカメラが置けない。片方が透明人間になるか、体にカメラを埋め込むかをしないとならない。
解決方法としては横から撮影ということなるが、この場合、どっちが先手番なのかが分からくなる。テロップ等での対応が必要となる。

スライド2

将棋の場合、「ふつうは右が先手だよね」というのを指導棋士三段 藤田一樹さんに聞いたことがある。なお、上の写真は左が先手(右が後手)である。
左側は後手だが、なんと左利きであったため時計の位置も好都合だった。

対局者単独映像の合成

続いて、対局者単独の映像を天カメに合成した場合の例。

スライド3

この場合も2つのイマジナリーラインが出てくる。
加えて、どの位置に両対局者の映像を入れ込むかの映像構成の問題が出てくる。
下の対局者は上側 or 下側?
上の対局者は上側 or 下側?
私も毎回悩み、都度、現場で何人かに意見を聞いて決めるようにしている。

転換映像の必要性

上からの映像だけだと観ている側は疲れる。
そのために転換映像を入れることがある。

スライド4

この写真はバックギャモン名人戦準決勝の映像で、コマラボにて配信を行ったものである。別カメラを配置してスイッチングできるようにしていたが、ゲームのスピードが速くて使うタイミングが難しかった。周囲の情報が分かると人間は落ち着くものだ。次の決勝ではうまくスイッチングできるだろうか。

天井カメラの設置

スライド5

ボードゲームに天カメは欠かせない。
しかし、設置には苦労する。天井の言葉の通り、天井に設置できれば苦労は少ないが、多くの場合は借りた会場での競技となるため、写真のようなポール、あるいは三脚のようなものを使って設置することになる。
真上から垂直に設置しなければ映像は台形となってしまう。単純だが調整は案外難しいし時間がかかる。四辺がしっかりとした直角90度になっていることは人間の目にも優しい。加えて、盤が180度水平であることも重要。

さいごに

ボードゲームは、ゲームのボード、対局者、対局時計、周囲の風景など、伝えたい要素を一つの画面に集約させて構成することになる。そうすると、必ずイマジナリーラインを超える、無視するということとなる。そして、イマジナリーラインを超えるということの説明をすることなく、イマジナリーラインを超えた状態として初期段階から映像表示させることとなっている。
これは本来とても不親切なことであるため、映像制作者は映像的な説明(転換映像など)を使わなければならないと、ずっと頭の片隅にある。
5G の時代がくれば、単一画面ではなく視聴者側で視点を変えられるようになるのかもしれない。だが、どこにカメラを置くのか?という物理的な問題は残り続け、イマジナリーラインの問題は解決しないだろう。

単純でシンプルだが悩ましい問題。それがボードゲームのイマジナリーラインである。

(@totheworld)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?