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#12 あっちこっち丁稚のはなし 昭和58年

みなさんは、『あっちこっち丁稚』という吉本コメディを知っているだろうか?

こまちんが小学生の頃、毎週日曜日のお昼時は、この番組を見ながら家族で昼食をとっていました。

大正時代の木金堂というカステラ屋さんが舞台で、旦さん役に前田五郎、御寮さんに山田スミ子、丁稚役が木村進、間寛平、坂田利夫という配役で、伝次郎というセントバーナード(着ぐるみ)が出てきたりして…

山田スミ子が前田五郎をおもいっきりビンタするシーンや同じく山田スミ子がキレて大声を出した時に赤フン姿の男が平泳ぎで登場するシーンなどは今でもよく覚えています。

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家族で日曜のお昼を食べながら、親父がこまちんと妹によく言ったものです…

『お父ちゃんのいとこはなぁ~長崎で有名なカステラ屋さんやってるんや…そやから、悪さばっかりしとったらこのテレビみたいに丁稚奉公にやるからなぁ~』

小学生とはいえ、こまちんもその頃は高学年。

確かに悪さばかりしていた頃でしたが…

『今の時代に丁稚奉公はないわぁ~』

と、話を聞きながら心で笑っていました。

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それから時が経って、こまちんが高校を卒業して、どこの大学からも丁寧なお断りのお手紙を頂き、晴れて夕陽ヶ丘の一年限りで卒業したい学校に入学した頃…

突然、高校2年の妹が家出をする。

妹の中学時代の同級生数名が家に帰らない状態となり、その親達を中心に大騒ぎとなった。


その時、親父がお袋とこまちんに真顔で言った…

『○美は帰ったら長崎に丁稚奉公に出す!』

『………?』(二の句を告げずに黙り込むお袋とこまちん)


ギャグか?

緊張を和らげようとしているのか?

おかしくなったのか?

大体、何の話だ?

そういえば小学生の頃そんなことを言っていたが…

現代に丁稚はないだろ~(数々の『?』を繰り出した末、結局、小学生の頃と同じ結論に達するこまちん)

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妹の家出が発覚した日から数日後、こまちんは、友人たちの協力を得て居場所を突き止める。

あるアパートで友人数人でたむろしていたが、一人が熱を出して帰るに帰れなくなり、一日経ってしまった。

その時点で更に帰り辛くなってどうしようか悩んでいた…


妹とその友人が銘々に説明をする。

『○美、とにかく一緒に帰ろ…』

『だってお兄ちゃん!○美帰ったら、長崎に丁稚奉公に出される~っ!』

と、言って泣き出す妹…


『!!』

えっ? そこ? マジで?


ありえへん…(親父が言い出すまで、昔そんなことを言っていたことさえ忘れていたこまちん…小学生の低学年で見事に恐怖として刷り込まれていた妹…大体、それが本当だったら既にこまちんは何回も丁稚になってるよ…)

『俺が一緒に謝ったるから、長崎に連れていかんとって呉れって頼んだるから…帰ろっ!』(親父と妹のあり得ない時代錯誤と共通認識に、今の時代に丁稚なんて無い!とかの説明さえ面倒になるこまちん…)


友人に車で家に送ってもらった、こまちんと妹…

車の中でとにかくあの怒り狂った親父を何となだめようか…

『家の敷居は跨がせん!』

とか、言ってたしなぁ~、と考え込むこまちん。


妹を背に隠すようにして玄関を開けると案の定、腕を組んで仁王立ちの親父。

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(うわぁ~こわぁ~どうしよ~)とこまちんが思った瞬間、兄を斥け親父の前に飛び出し妹が一言

『お父さん、ごめんなさい…』

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『えぇんや、えぇんや、お前が反省さえしとったらお父ちゃんは何にも言わへん!』

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えっえぇ~?

何ですかぁ~それぇ~!

その阿吽の呼吸わぁ~!

どっ、どういうコトぉ~?

長崎のカステラ屋の丁稚奉公はどこ行ったんやぁ~!!


まっ、そもそも『あっちこっち丁稚』って、コメディやしなぁ~

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