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#14 天王寺公園のはなし 昭和60年冬

あべのハルカスに、あべのキューズモール…

天王寺公園も『てんしば』と名を変え、綺麗な芝生の公園を中心におしゃれなお店やフットサルのコートまで…

子供の頃から慣れ親しんだ街も、今ではすっかり様変わりして素敵な風景になったもんです。

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さて、昭和60年冬…
当時の天王寺公園は今のように綺麗に整備されていなくて…


ちょうど学生の頃でお金もなく、遊びといえば通天閣界隈やジャンジャン横丁で小銭を握りしめ、パチンコやスマートボールをしては、串かつやどて焼きをあてに飲んだりとかしてました。

今は、この界隈もとてもキレイになっていますが、当時は、ニッカポッカをはいたおじさんやナチュラルトレッドヘアーのかたがたが明るいうちからとてもハイになれる、若い女性にはまったく無縁のとてもワイルドな楽しい街でした。

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そんなある日のこと、夜も遅くなったのでジャンジャン横丁から天王寺公園をぬけて天王寺駅のほうに出ようとしたら…

真っ暗な公園の中にほのかな灯り?
いや、火!?火ですね!!
燃えてますね…
焚き火ですねっ?!

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季節は冬…
寒~い夜だったのです。
公園内で青いシートのお家やダンボール製のツーバイフォー住宅にお住まいのひとたちが焚き火を囲んでいるのです。

気の弱いこまちんは目をそらしながらだんだん足早になる…
すると何やら香ばしい匂いが…
気になって、そぉっと顔をそちらに向けてみる……

えっ、そっ、それって、ハぁ?トぉ?
ポッポッ、って鳴くハト?
昼間、おっちゃんたちがパンくずやなんかあげて、手懐けている、あの鳩っすかぁ~?
(え~っ?あれって、食用に太らせてたのォ?鳩に人気の○○、じゃぁなかったのォ?)

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顔、そらしました。
さらに早足になりました。
(おっちゃんたち…食ってるし…宴会してるし…いっぱいいるし…)

『逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃぁ~』

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すると後方からタッタッタッって足音が…

すかさず走り出す青年こまちん…
(あっ、今より体重半分ですからね!当時はチャンと走れる体型でしたよ!!今は走れば即AEDが必要ですが・・・)

青年こまちん全速力!!

追走者…
(けっこう歳くったおっちゃんだった)

あっさりこまちんの横を通り過ぎ、ぐるっと回り込んで目の前へ…
(こまちん遅っ!っていうか何でそんなにおっちゃん足速いの?何食ってるの?あっ鳩か…)

明らかに先ほど横目でみかけた、鳩宴会の中にいた人だぁ~!!俺、どうなるんだぁ~?こえぇよぉ~(こまちん心の声)

そしたら息も切らさず鳩おじさんが…
『にいちゃん、たばこくんねぇ?』

『何だとぉ~!びっくりさせやがって~、この○○野郎っ!!』
(こまちん、やっぱり心の声…)

『あっ、よかったらどうぞ…』
(こまちん、実の声。素直に差し出すたばこ…もちろん箱ごと…)

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『ありがとね。』
と、おっちゃん箱から1本取り出してさり気なく耳へ、さらに1本を口にくわえると、残りは返してくれました。
バイバイしながら鳩おじさんは、笑顔で立ち去っていきました。
(なんともさわやかな鳩おじさん…)


『あのころの あのひとたちは いまいずこ』


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