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#10 『もりおか』のはなし【前編】 1987年1月17日(土)

【R-18指定:18歳未満の方はご遠慮下さい】

※以下の文章には、暴力や性的表現等、未成年には有害な情報が含まれる場合があります。


このお話は、こまちんがまだ22才…

身長168cm、体重52kg、胸囲98cm、腰回78cmの頃の話です。

今は、見る影もないですが…

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話を始める前にこの物語のもう一人の主役となる『もりおか』なる人物の人となりについて軽く触れておきましょう。


『もりおか』は、こまちんが働いていた、当時の職場の一年後輩になります。


結構、男前です。

ですが、笑うと少しバカっぽいです。

ナハナハって笑います。

古いですが、ひょうきん族のたけちゃんマンみたいです。

喋ると本当に馬鹿です。

まるで小学生と話している気持ちにさせてくれます。

黙っていれば嵐の二宮、喋るとジミー大西というところでしょうか…

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半年ほど同じプロジェクトで仕事をした後、納品も無事に終わって打ち上げの日…

場所は、大阪梅田、東通り商店街あたりだったと思います。

二次会、三次会と行くうちに電車も無くなり、同世代のメンバーが8人ほど残りました。

みんなタクシーで帰る余裕も無いとのこと…


今のように漫画喫茶やインターネットカフェなど当然ありません。

ただ当時、レンタルルームと言って、一泊二千円ほどで泊まれる、その名の通りの貸部屋がありました。

四畳半か六畳程度の絨毯敷きの部屋に古い空調があって、後は一切なんにも無く、各階共同のトイレとシャワーがあり、毛布等は別途レンタル料が必要というようなシステムでした。


とにかく真冬でとても寒かったので、みんなで500円ずつ出しあって二部屋借りて、一部屋四人ずつで雑魚寝しようということになりました。

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壁際で寝転んでいたこまちん。

ふっと、寝返りをうった際に手が壁に当たります。

『コツン…』と音がしました。

すると反対側の壁から『コツン』と、返信が…

薄い壁です。

不思議に思って、また『コツン』と叩いてみると…

また向こうから『コツン』

またこちらから『コツン、コツン』

向こうの壁からも同じように『コツン、コツン、キャッ…』

『ん?』

またまたこちらから『コッコココッコッ…』

向こうから『コンコン…キャハハハ~ッ』

『おっ、おっ、おんなやぁ~』

思わず声をあげるこまちん。

むっくりと起き上がる、もりおか他二名。

『行くで~っ!もりおかぁ~っ!!』

『はいなぁ~!あんさん!!』

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酔いも手伝い、ここぞとばかりに飛び出す、もりおか、こまちんの『もりちん』コンビ…

すかさず隣の部屋の扉をノックするふたり…

『ハァ~イ♪』

ふっと顔を覗かせる一昔前のキョンキョンにも似た小柄な美女…

ここぞとばかりにテンションが上がる、もりちんコンビ…

扉のすき間から奥を覗けば更に確認出来る美女数名!!

『ワ★キョ♀ポ§~』

言葉にならない音をあからさまに発しながら…

いろいろと盛り上る、もりちんコンビ…

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『あのぉ~、僕らぁ~、隣の部屋にぃ~おるんやけど…一緒にお話でもせぇへん?』

いきなり中年親父バリの粘っこい乗りで誘うもりおか…

『エッ、ハナシ、ナニ?』

『いゃぁ~、だからぁ~、ぼくらぁ~、話をねぇ~』

意味無く同じ言葉を語尾だけのばして、執拗な粘りを見せるもりおか…

『エッ、ナニ?』


通じていない…?

もりおかをセンターからバックに追いやり、ミドルシュートを試みるこまちん…


『ナンボなん?』

『ヒトリィ~♪イチヂカァ~ン、イチ、マンイェ~ン♪』

『ヒ@デ♂ブ♀ッ☆§…』


再度、言葉にならない音を発しながらニラみあう、もりちんコンビ…

一旦、ゴール前を離れ作戦会議を開くふたり…

『もりおか、ナンボ持ってる?』

『160円っす…』

『こまちんさんは?』

『510円…』

ガンツ先生に評価されるロボコン程度の所持金しか持たないふたり…

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『もりおか、みんな起こそっ…』

『はいっ!!』

諦めるという発想を考えられないふたり…

熟睡中だった2名に蹴られながらも、ノリで全員を叩き起こす一番後輩のもりおか…

とりあえず、6名全員に理路整然と状況を説明するこまちん。

半睡状態の2名も含めて、もりおかが一つ覚えのように繰り返す…

『いやぁ、ホンマ美人ですねんっ!』

『いやぁ、ホンマ美人ですねんっ!』

『いやぁ、ホンマ美人ですねんっ!』

と、壊れたように繰り返される言葉に全員が異様な雰囲気で盛り上がりを見せる。

誰からともなく…

『みんなぁ、とりあえず有り金、全部出そうや!』

何故か集まる。

計二万二千六百七十円!!

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えっ?みんなお金持ってたの?

宵越しの金を持たない主義のこまちん…

宵越しの金という言葉を知らないもりおか…

『ほんなら、全員が幸せには、なられへんけど、代表ふたりに幸せになってもらおかぁ~!ここは、いっぱつジャンケンやぁ~っ!』

声の大きさで出資額の少なさをごまかし、ジャンケンの一言で出資額のビハインドを無くすこまちん…

『ジャ~ンケ~ン!ポン!!』

勢いに乗って一切の疑問を感じずジャンケンに参加する高額出資者たち…

『おぉぉっ!しゃぁ~っ!!』

力強いガッツポーズを見せながら感極まるもりちんコンビ。

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『あぁ~~』

『くっそぉ~』

『いぃなぁ~』

出資額の差に疑問を抱かず素直に悔しがる高額出資者たち…

みんな、とてもいいひと…


人生の運をすべてつぎ込んだかのような勝利を手にし、160円と510円という所持金で美女とのイチヂカンを手に入れた奇跡のふたり、もりちんコンビ…

早速、自分の部屋からその他二名をもう一部屋の方に追い出し、更に二千円を支払って、もう一部屋を確保。

準備は整った!

と、残金二万六百七十円を握りしめ、喜び勇んで先ほどの部屋へ…

と、そこには…

部屋の扉の前に丸椅子を置き腕組みをした、松重豊バリの見るからにアチラ方面のお兄さんが、デンと構えているのであったぁ~!!

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※次回、#11 『もりおか』のはなし【後編】に続く…


>>>> 次回予告 <<<<

いきなり状況を理解せずに吠え出すもりおか…

もりちんコンビの運命やいかに!

また、明確に記された、日付に隠された意味とは…

もりおかに襲い来る悪夢のような出来事とは…

次回、乞うご期待!!


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