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ビヨンド・ミートを食べてみました

ビヨンド・ビーフ

 ビヨンド・ミート(Beyond Meat, BYND)はまだ日本では事業展開していませんが、昨年ナスダック上場を果たしたこともあり、今や知る人ぞ知る代替肉業界の新星です。同社は植物由来の素材から肉と同じような味・食感の食品を製造することで知られています。私も友人から同社の存在を聞きつけ、出張中にふと立ち寄ったスーパーで見かけたので、そのラインナップのひとつであるビヨンド・ビーフをピックアップして食べてみました。売価は当時のレートで約3000円でした。結構値が張りましたが、アメリカで買うと1500円くらいのようです。同社からは、パテやソーセージに成形された既製品も発売されていますが、ビヨンド・ビーフはその中で最も自由度の高い「PLANT-BASED GROUND(植物由来ミンチ)」です。パッケージは、植物的なイメージを押し出すわけではなく、抑制的でシンプルなデザインです。あたかも10年前から存在していたかのような落ち着き具合です。

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 ビヨンド・ビーフの成分は次のようになっています。

水、エンドウ豆タンパク質、圧搾キャノーラ油、精製ココナッツ油、米タンパク質、天然香料、ココアバター、緑豆タンパク質、メチルセルロース、片栗粉、りんご抽出物、塩、塩化カリウム、ショウガ、レモン果汁、ひまわりレシチン、ザクロパウダー、ビーツ果汁(着色料)

大豆とグルテンを排除した植物由来の素材の使用を徹底している一方で、必ずしも添加物フリーというわけではありません。メチルセルロースは増粘剤、レシチンは乳化剤として広く使われている食品添加物です。日本では大豆レシチンが広く使われているようですが、ビヨンド・ビーフは「No Soy」なので、同じ効果を発揮するひまわりレシチンを使用していると思われます。

調理していく
 パッケージ裏には、メキシコ料理(タコスなど)やパスタソース、ミートボール、ハンバーガーのパテに使うのがオススメとあります。他方で、これをそのままボイルして食べたり、油揚げにすることはオススメしないとありました。とりあえず、食品の味を直に確かめるために最初はミートボールにして、残りは薄くパテにしてサンドウィッチにしてみました。

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 パッケージを開けたときに肉を再現してるんだろうなあと思わせるやや人工的な香りがしました(自然香料をブレンドしているのでしょうけども)。最初は似ているものが見つからないような不思議な香りでしたが、よくよく考えてみると牛丼みたいな香りがします。練りものっぽいのでちゃんと成形できるかどうか心配しましたが、十分に粘度があってそこら辺は心配無用でした。ころころ丸めてフライパンで焼いて完成です。見た目は写真のように完全なるミートボールになりました。適当に玉ねぎを添え、途中でマヨネーズ、醤油、中濃ソースを追加して食しました。
 食べてみて驚いたのは、肉汁らしきものがちゃんとあるところです。フォークを刺した段階でじゅわっと出てきました。また、噛んだ瞬間のプリッとした弾力は、一般的なミートボールと同じだと思いました。しかし、噛んでいるうちに食感が肉とは違うことがわかってきました。おそらくは脂肪分を再現しているのだと思われますが、それが口の中で主張してきてパサパサしてきました。舌触りの悪さが微妙だなと思いました。味は最初に香ってきたものと同じですが、確かに肉っぽさがあります。そうはいっても、これは肉ですと言って出されても騙されないと思います。味は許容範囲なので食感さえもうすこし肉っぽければ違和感なく食べれると思いました。

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 ところが、薄くパテにして焼いてサンドイッチにしてみると(バンズがなかったので)、本物のハンバーガーを食べてる感じになりました。単独で食べたときのゴツゴツ感が他の具材によってカモフラージュされていい感じに収まってます。ソースも相まって、ビヨンド・ビーフそのものの味気なさも改善されました。これで出されたら肉かビヨンド・ビーフかはわからなくなるでしょう。より美味しく食べるなら、ミートボールよりハンバーガーにして食べるのが良いと思います。

他の製品との比較

二・ミャーサ
 ビヨンド・ビーフがあった棚に同じような商品が置いてあったので、これもついでに買って、味を比較してみました。ロシアの「二・ミャーサ」(直訳すると、「肉ではない」という意味)という製品で、ご覧のようにビヨンド・ビーフの代替品です。価格は当時のレートで540円程度なので、ビヨンド・ビーフよりは圧倒的に安く、近くに置いてあった牛肉のバーガー用パテと比べて100円高いくらいです。

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 成分は次のようになっています。ご覧のように、ビヨンド・ビーフと比べると使われている素材の多さと食品添加物の多さが目立ちます。グルテン・フリーでもありません。

水、タンパク質・脂肪乳剤(水、ひまわり油、じゃがいもでんぷん、メチルセルロース)、エンドウ豆タンパク質、小麦由来グルテン、小麦でんぷん、トウモロコシでんぷん、天然食用着色料(赤米)、香料、スパイス(パプリカ、玉ねぎ、ニンニク)、塩、ブドウ糖、ビーツパウダー(マルトデキストリン、ビーツ果汁コンセントレート、pH調整材(クエン酸))、茶エキス、酵母エキス、燻製天然香料、うまみ調味料及び香料(グルタミン酸ナトリウム、コショウ)

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 パッケージを開けると、ビヨンド・ビーフとは異なって、強めのソーセージの香りがしました(燻製の天然香料が使われているからでしょうか)。二枚あったので一枚はそのまま食べてみました。ビヨンド・ビーフにあったプリプリ感はない一方で、具材のパサパサした感じはありません。舌触りで言えば、二・ミャーサの方がハンバーグっぽいです。ただ、でんぷんを使っているからなのか、ヤマイモか納豆を食べてるみたいな粘り気があって違和感が残りました。ハンバーガー風サンドイッチにしてみても、このネバネバは消えませんでした。ビヨンド・ビーフのゴツゴツ感はバーガーにしてカモフラージュできるとしたら、二・ミャーサのネバネバ感はそれでも残るので問題ありと思われました。味自体については、調味料が比較的多く使われているので確かにビヨンド・ビーフよりも旨味を感じました。

 製品100グラムあたりの栄養素を比較してみるとこのような感じです。参考に同様の牛肉製品のデータも載せてみました。ビヨンド・ビーフは高カロリー高脂質であるようです。二・ミャーサはパッケージにも類似商品と比べて「高タンパク、低脂質、低カロリー」と謳っていて、確かに低脂質・低カロリーなのは間違いなさそうです。

ビヨンド・ビーフ/二・ミャーサ/牛肉
・カロリー:220,5 kcal/99 kcal/240 kcal
・タンパク質:17.6g/16.6g/16g
・脂質:15.9g/1.2g/20g
・炭水化物:2.6g/5.4g/-

 この二つでどちらが良いかと言われれば、私ならビヨンド・ビーフを選びます。使用される添加物が少ないところがひとつのポイントです。食感については、ボソボソするのは今後改善の余地があるとしても、最初のプリッとした歯応えは捨てがたいところですし、ハンバーガーにして他の具材と混ぜたり、ソースをつけたりすれば旨味の少なさも含めて十分にカバーできると思いました。価格については結構高めなので、これから下がっていくことを期待します。

ビヨンド・ミート社について

 現CEOのイーサン・ブラウン氏が2009年に設立したビヨンド・ミートは、カリフォルニアに本拠を置く会社で、植物由来の肉の製造に特化しています。2019年5月にはナスダックに上場しました。主力商品はビヨンド・バーガーです。私が食べたのはビヨンド・ビーフですが、確かにバーガーにして食べた方が美味しかったですね。
 製品の売り上げは小売か外食産業によるもので、米国内での売上に対して海外での売り上げはまだまだ少なく、今後の海外展開も期待されるところです。

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 調べてみると、ビヨンド・ミートには以下のような理念があるようです。実際、ビヨンド・バーガーの製造過程における省エネや排ガス、土地利用の少なさがアセスメントで明らかになっているとのことです。このような企業の提示する価値観も成熟した社会の消費文化においては結構重要なところだと思います。

我々のブランドのコミットメントである「愛するものを食べよう」は、次の強い信念を表現するものです。つまり、弊社の植物由来の肉を食べることで、その消費者の方々は、自らの好む食品をより楽しむことができる。そうすることにより、健康や気候変動、資源保護そして動物福祉に関する問題の解決に寄与することができる。(2020年3月末決算報告書より)

 同社の2019年度年次報告書を読んでみると、売上高は2018年3月末の1,280万ドルから2019年12月末の9,850万ドルへと急激に拡大していることがわかります。概ね営業利益や純利益は赤字が続いているものの、2020年3月末の四半期決算では純利益が約180万ドルの黒字となり(営業キャッシュフロー自体は赤字ですが)、低迷気味だった株価は持ち直しました。

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 売上高の上昇に対して売上原価を抑えることに成功しているようで、粗利率は16.1%(2018年3月末)から38.8%(2020年3月末)へと着実に改善しています。研究開発費や販管費も売上高に対してそこまで伸びているわけではないので、競合とも十分に渡り合っていることがうかがえます。それでも1株当たりの純利益はたったの0.03ドル(2020年3月末)なので、現在の株価から判断すると、想像を絶する期待を受けているもののそれ相応の実績はまだまだ未知数な会社と思われます。
 最近では上海のスーパーマーケットで、同社の主力商品であるビヨンド・バーガーの販売を開始し、中国でさらに販路を拡大すると報じられました(bloomberg)。日本への進出も期待したいところです。「〇〇バーガー」などのファストフード店でビヨンド・バーガーを食べられる日が来るかもしれません。

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