前代未聞の「マヤ文明ファンタジー」!? 『言葉の守り人』(ホルヘ・ミゲル・ココム・ペッチ/吉田栄人訳)を刊行します

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現在、国書刊行会から刊行されている空前絶後のマヤ語文学新シリーズ「新しいマヤの文学」全3巻(編訳=吉田栄人)

2月に刊行しましたシリーズ第1回配本、ラテンアメリカ×フェミニズム小説『女であるだけで』(ソル・ケー・モオ)が、大変多くの方からご好評&ご高評をいただき、なんとこのたび重版が決定いたしました!
夫を殺してしまった貧しい先住民女性オノリーナの辿る物語。「女であるだけで」受ける苦しみと、女たちの連帯を、パワフルな語りの力によって描き上げた、いまこそ読むべき傑作です。

そんな「新しいマヤの文学」のシリーズ第2回配本として、このたび2020年6月18日、ホルヘ・ミゲル・ココム・ペッチによるマヤ語によるファンタジー作品『言葉の守り人』を刊行します。

今回は、第1回配本とは打って変わって、ファンタジーです。
マヤ語で書かれ、マヤ神話の呪術的世界観に根差し、実在のマヤの森を舞台にした本作は、前代未聞&世界初紹介のマヤ文明ファンタジーであると同時に、言葉をめぐる物語でもあり、さらに少年の成長譚でもあります。

ある日のこと。
主人公の少年である「ぼく」は、マヤの賢人であるグレゴリオおじいさんに呼ばれて、口頭伝承の語り手である「言葉の守り人」に選ばれる。
だが、「言葉の守り人」になるには、神や精霊の棲む森へと出かけて、修行を重ねる必要があった。
「ぼく」はおじいさんとともに、修行のために幾度も森へと足を運ぶことになる。
そこでは、森に現れる不思議な鳥たちとの出会い、風の精霊の召喚儀式による修行、蛇神が見せる夢と幻影の試練が、「ぼく」を待ち受けていた……
「ぼく」は森の中で不思議な体験をしながら、おじいさんから〈言葉の守り人〉を継ぐために必要な、世界と言葉のもつ秘密を少しずつ教わっていくのだ。

神々や精霊たちが棲まう、神話の森での呪術的修行を通して、「ぼく」は、マヤの世界観に根差した伝統的なマヤ語の言葉が持つ大切な意味、そして、もっと普遍的なところで、言葉の持つ力とは何かということについて学び、悟っていきます。
そうした過程を経て、「ぼく」は真の「言葉の守り人」へと成長していくのです。

先日、茨城大学教授の青山和夫さんらが参加する国際調査チームが、メキシコ・タバスコ州の最古にして最大のマヤ遺跡であるアグアダ・フェニックス遺跡を発見し、大きな話題となっておりますが、本作『言葉の守り人』でも、森の奥に眠るマヤの遺跡が登場します。
マヤ遺跡とマヤ文学の関係について、訳者の吉田さんは、次のようにおっしゃっています。
「忘れ去られ森の一部と化してしまった古代遺跡であっても、現代の先住民にとってそれはやはり古代とのつながりを取り戻す場所です。ただ、その古代とは自らの存在を見つめなおすためのゼロ地点であり、未来を照射するための消失点です。その意味において森の中の廃墟はマヤの古代遺跡として蘇る(カー・シーヒル)のです」

作中には、全編にわたってマヤ神話のモチーフ、マヤの暮らしやさまざまな文化、マヤ語による呪文やオノマトペが散りばめられており、シリーズの中でも特に「マヤらしさ」を感じられる1冊です。

作者のホルヘ・ミゲル・ココム・ペッチ(Jorge Miguel Cocom Pech)は、メキシコ先住民作家協会の会長も務めた現代マヤ語文学を代表する作家で、本作は、彼が過ごしたメキシコ・カンペチェ州の実在の森を舞台に、実際に「おじいさん」から教わった口頭伝承をも取り込み、物語にしたものです。

ファンタジー、幻想文学、ラテンアメリカ文学のファンはもちろん、元々メキシコでは児童文学としても出版されたことから、小学校高学年くらいの方にもオススメ。また、マヤ文化に興味がある方には特にオススメです。

クラフト・エヴィング商會さんによる素敵な装幀&描き下ろし装画でお送りする紙版はもちろん、第1回配本に引き続き、今回も電子版をばっちり配信予定です。

どうぞお楽しみに!

                     文=国書刊行会編集部(昂)



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