禁忌肢を含みそうな問題への対応【113B21・改】

113B21
緊張性気胸に対してまず行うべき治療はどれか。
a 鎮痛薬投与
b 抗不安薬投与
c 人工呼吸器装着
d 緊急胸腔鏡下手術
e 胸腔ドレーン挿入

【正解】e

【解説】
緊張性気胸はショック(閉塞性)に移行する重篤な病態です。
早急に適切な対応が求められます。

低酸素血症を合併することもあり、
気管挿管に踏み切るケースもしばしばありますが
一点だけ注意が必要です。
それは、陽圧換気で病態を悪化させてしまうという点です。

したがって、緊張性気胸の低酸素・ショックを改善させるには、
第一に「胸腔ドレナージ」を行うことが最重要かつ最優先です。
胸腔ドレナージさえしてしまえば、陽圧換気をしてもOKなので
手技の順序が極めて重要になるのです。

したがって、113B21は、場合によって選択肢cが禁忌肢になります。


【113B21・改】
呼吸が不安定なフレイルチェストに対してまず行うべき治療はどれか。

○ 鎮痛薬投与
○ 人工呼吸器装着
○ 胸腔ドレーン挿入


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【正解】
人工呼吸器装着

【解説】
オリジナルの問題は「緊張性気胸への対応」が問われていますが、
国試で登場頻度の低い「フレイルチェスト」に変えて改題しました。

フレイルチェストの治療は「外固定」と「内固定」です。
人工呼吸器を使えば陽圧換気ができるので「内固定」の条件を満たします。

緊張性気胸は胸腔ドレナージ無しには陽圧換気をしてはならず、
それに対し、フレイルチェストは陽圧換気が治療に直結します。

病態は一見似ているようで、介入が全く異なるので区別が必要な二項対比です。
「胸腔ドレナージ」は気胸のキーワードだという認識で
選択肢から外すことが重要なのだと思います。

もちろん、臨床では緊張性気胸とフレイルチェストの合併例が
一定数は存在していますが、
設問で「フレイルチェスト」としか書かれていないので
この改題では素直に「フレイルチェスト」の問題としてアプローチしましょう。

ちなみに、医師国家試験で「人工呼吸器」という用語が登場したら、
「気管挿管→人工呼吸器」というニュアンスだけではなく、
「NPPV」の概念も含まれることに留意しましょう。

NPPV: 非侵襲的陽圧換気療法

選択肢に禁忌肢がいかにも含まれていそうな問題ですが、
「患者に害を与える選択肢かどうか」ということを
最後にチェックしたら良いのだと思います。

●参考
羊土社「医師国家試験の取扱説明書」民谷健太郎 著
□ p183 #37 二項対比で鑑別する
□ p62-63 緊張性気胸とフレイルチェストとを例示しています