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すべての命の価値を等しくするためにービルメリンダ&ゲイツ財団・平井光城さん

みなさんこんにちは!国際協力サロンです。今回のnoteは、みなさんも一度は耳にしたことがあるであろうビル・ゲイツとその妻であるメリンダ・ゲイツが共同設立した財団、ビル&メリンダ・ゲイツ財団日本拠点のプロジェクトリード、平井光城さんです!

今回平井さんからは、普段なかなかお話を聞くのことのできないゲイツ財団の中での活動をお聞きすることができました。特に、現在深刻な問題である新型コロナウイルス感染症における、先進国と途上国の「ワクチン格差」に対するゲイツ財団の取り組みについてお話をいただきました。

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平井光城(ひらいみつしろ)
大阪市内で生まれ育ち、高校卒業と共に渡米。カリフォルニア州のリベラルアーツカレッジ Soka University of America で学士号を取得。卒業後は一時
帰国し、国連ボランティア計画、ARUN 合同会社、日本ダボス委員会でインターンを経験。再び渡米し、コロンビア大学国際公共政策大学院修士課程修了。 2016 年、経営コンサルティング会社ボストン コンサルティング グループ(BCG)に新卒アソシエイトとして入社し、主に金融・製造業の案件に携わる。2018 年より、ビル&メリンダ・ゲイツ財団日本拠点の 2 人目の職員として、主に拠点戦略・実行計画の策定支援、日本企業との連携促進、助成先との協業を担当。国内外の同僚や助成先のパートナーと共に、低中所得国の保健医療課題に対する日本発のソリューション最大化を目指す。


そもそも、「財団」って?

ここでは平井さんが所属するビル&メリンダ・ゲイツ財団を紹介していきたいのですが、そもそも「財団」ってなんでしょうか?

端的に述べると、「個人や企業などの出資により運営され、事業原資を出資資産の運用などで賄う団体」が財団になります。

財団によっても活動資金の調達方法は様々ですが、後述のように、ビル&メリンダゲイツ財団は個人からの出資の運用によって活動を成り立たせています。

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ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、ゲイツ夫妻の出資により設立されました。またビル・ゲイツの友人であるバークシャー・ハサウェイ会長ウォーレン・バフェットによる出資で事業が拡大。この3名の出資を含む資金プールを運用することで、持続的に財団の予算を賄っています。その額は年間5,300億円にものぼり、現在135カ国に拠点を置いています。

All Lives Have Equal Value
-すべての生命の価値は等しい

"All Lives Have Equal Value"を、ゲイツ財団はミッションとして掲げています。気候変動や教育の不平等など、世界の課題は枚挙に暇がありませんが、その中でも特に「途上国の保健医療課題」に注力しています。

先進国で治療可能・予防可能な病気等により、途上国の人々が命を落とすことが無い「すべての生命の価値は等しい」世界を築くことがゲイツ財団の掲げるミッションです。

それに従ってゲイツ財団は下記5つの部門に分かれ、「国際保健」に関わるあらゆる分野をカバーしています。

1. Global Development …栄養、母子保健、家族計画、緊急援助など
2. Global Health…マラリア、HIV、結核、肺炎など
3. Global Growth & Opportunities…水と衛生、トイレ、農業革命など
4. Global Policy & Adovocacy…政府関係、政策分析、アドボカシーなど
5. US Program…大学教育、高等教育など
*追記(上記に加え、Gender Equality部門も立ち上げ中)

これだけだとまだ明確に何をしているかがわかりにくいかもしれません。

一つ、Global HealthのHIVを例として出すと、下記のようにゲイツ財団はエイズ治療への間口を広げました。

「…より多くの人びとがエイズ治療にアクセス可能となったのは、ゲイツ財団が他のパートナーと協力して治療薬の生産、服用プロセスの最適化や、治療薬の世界規模での大量共同購入と価格交渉を推進し、薬価が大幅に下がったからでした。こうした必要性は明確なものの、儲からないがために企業が動こうとしない領域に投資し、マーケットを動かすことも我々の役割です。」

Business Insider "JICA、マッキンゼー、世界銀行経てゲイツ財団の日本人がたどり着いた「やるべきこと」", より。
https://www.businessinsider.jp/post-205361

これはあくまでGlobal Healthという部門の中の一例に過ぎませんが、活動資金、展開拠点ともに他に類を見ない財団だからこそ、薬の大量購入による薬の値下げなど、多くの人が受益するプロジェクトを行うことができるのがゲイツ財団の特徴の一つと言えるでしょう。

そして世界は今、HIVとの戦いよりも大きな感染症の危機に直面しています。

新型コロナウイルス感染症との戦い
「ワクチン格差」を防げるか?

ゲイツ財団はこれまでに類を見ない危機と戦っています。新型コロナウイルス感染症との戦いです。特に、先進国と途上国におけるワクチン確保量の差が大きな課題となっています。

つい先日、日本でもワクチン接種が開始しました。他にもアメリカ、イギリス、イスラエルなどの国が続々とワクチン接種を始めています。一方で、多くの発展途上国ではワクチンが十分確保されていない状況にあります。

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UNICEF "COVID-19 Vaccine Market Dashboard"より。
https://www.unicef.org/supply/covid-19-vaccine-market-dashboard

この表は国別のワクチン確保見込を示しています。すでに世界では90億回分のワクチンを生産する能力があるとされていますが、表を見ると、人口比でワクチンを十分に確保している多くの国が先進国であることがわかります。

実際、この表に並ぶ9カ国・地域だけでおよそ81.1億回分のワクチンを独占しています。

すでに世界では、「ワクチン格差」が如実に現れ始めているのです。

ゲイツ財団はこのワクチン格差を解消するために動いています。経済格差によって不平等に命を落とす人が現れないよう、世界全体から今年中にワクチン20億回分を確保し、途上国にも供給する「COVAX」をはじめとした多国間の官民パートナーシップを、様々なセクターのパートナーと共に支援しています。

ある研究によれば、先進国に優先的にワクチンを供給し続けた場合、33%の人が新型コロナによる死を免れることができますが、人口比に応じて全ての国に行き渡るように供給した場合では、61%の人が死を回避できます。

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Bill&Melinda Gates Foundation
“2020 GOAL KEEPERS REPORT COVID-19 A GLOBAL PERSPECTIVE”より。
https://www.gatesfoundation.org/goalkeepers/report/2020-report/#GlobalPerspective

感染症は、一つの国に留まるものではなくグローバルな問題です。そしてそれは、「全ての生命の価値を等しくすることで、多くの人の命を救える」ことを意味します。

かつてないほどにグローバル化の進んだ今の世界で、ゲイツ財団の使命が、多くの人の命を救う時が来ています。

「プロフェッショナル」であるということ

ゲイツ財団で働く平井さんのお話を聞いていて、個人的にとても心に残った言葉があります。サロンメンバーからキャリアに関する質問が飛び、それについて平井さんが答えている時でした。

「国際機関や国際NGOのような場所は、私たちがスキルを身につける場所ではなくて、ここまで培ってきたスキルを発揮する場所にならざるを得ないと思います。私たちの究極的なクライアントは、途上国で生死を分けるような環境にいる方たちで、正直人を育てる余裕はあまりありません。なので個人の自己実現や自己成長みたいなものを第一義的に持ち込むことは難しいです。勿論、やりがい搾取なんかにならない様に、組織は職員にしっかり応えていかないといけないですけど。」

全ての生命の価値を等しくするために、プロフェッショナルな心構えを持って挑む。ゲイツ財団の問題解決への姿勢の真剣さが垣間見えた一面でした。
襟を正されるような平井さんの素敵なお話でした。


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