230211土 通夜
前回は延びに延びたNSC地方校のネタ見せを時間通りに終え、ばあちゃんに会いに岡山へ。
初めて乗るバスは、寝心地が良かった。
ウキウキしながら葬儀会場へと入る。
知った顔が並ぶ。
喪服に着替えるのに、意外と時間がかかった。
何度もネクタイを結び直して、
やっとばあちゃんに会った。
棺の中で、よく痩せて、白くて綺麗な顔をしていた。
蓋があって触れない。
明日は触れたい。
お母さんが病院に着いた時は、まだ身体が温かかったらしい。
千の風になって、をスマホで何度も聞かせた。
棺に音が響いて微かに振動する。
ばあちゃんが一緒に歌っている。
口は開いている。
目はしっかり閉じている。
ばあちゃん、聞いとるか。
顔色が良くなったように見えた。
年末に10分間だけ会えた時、曲を聴かせると、マスクが動いた。
歌っていた。
顔色が良くなった、とお母さんが言った。
おでこが少し汗ばんだ感触もした。
通夜が始まり、読経がとても心地良かった。
ばあちゃんを探したけど、どこにいるのかわからない。
通夜はあっという間に終わって、普段会わない親族と話した。
家に帰ってから、お母さんと2人切りで、豪華な弁当やらお土産やらたくさん食べた。
修繕の裁縫をしてもらったり、持ってきてくれた枕を無言で受け取ったり、母親に甘えた。
育ての親のばあちゃん。
いつも座っていたところが空いていて、この場所で、千の風になってを嬉しそうに聴いて口ずさむ動画を再生した。
声が部屋に馴染む。
そこに私は居ません
ここで一緒に寝てや、ばあちゃん。
とても怖がりな子だったので、トイレに行く時も、寝る時も、ずっと一緒だった。
今どこにいるのか。
病院から葬儀場へ運ぶ際は一旦家に帰りたいか、と元気な時に尋ねたら、体だけになっとるから、あんたの都合の良いようにせられえ、と答えたんじゃ、とお母さんが教えてくれた。
手違いで、車は葬儀場へ直行し、お母さんだけ、家に帰ったらしい。
ばあちゃんは、いつもの助手席に座って、一緒に帰ったと思った。
ばあちゃんの体は今、通夜の会場にある。
久しぶりの実家は温かくて、帰ってきた気がする。
ばあちゃんが、自分一人で建てた家に、2人で住むことになって、育ててくれた。
どう思っていたのだろう。
なんでもしてくれた。
世話を焼いてくれた。
野球や闘いの相手もしてくれた。
去年のはじめも、ヤクルトでも飲むか、と聞いて、冷蔵庫まで取りに行ってくれた。
それを知っているから、うん、飲む、とお願いする。
ばあちゃん〇〇して、といつも頼んでいた。
よいさ、と言ってすぐに立ち上がり、自分の元気な掛け声に笑っていた。
よいさよいさ、と聞こえるように言いながら、走っていく。
棺の中はどうじゃ?
ええよ。
充分じゃ。
狭うねえか?
狭めえこたあねえ。
もうじき迎えが来らあ。
誰かわかるか?
正志じゃ!
あんた、正志じゃろ?
純か?
どっちでもええよ。
まあ明日も、千の風になって、聴かせに来らあ。
ばあちゃん、おるか?
おるよ。
そこに、おってえよ。
善は急げ🏃♀️