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BL・一匙の夢

二、夢の間①

〈ザザーン ザザ 僕を抱いた
    其の腕であいつを
 ザザー  許さない〉

〈リーリリン リー〉
鈴虫?空き地から
聞こえる。
「おいおい、こんな夜中に
窓開けて」
「ねぇ、鳴き声
聞こえるよ」
「ん?鳴き声なら
毎日聞いてるぞ」
え?
「海音【かいね】の
可愛い鳴き声をさ」
「もぅ、高嗣【たかし】の
スケベ!」
「ふぅ。また元カレの
名前」
「ご、ごめんなさい
篤則【あつのり】さん!」
あーやっちゃった!
「さん付けも無し、
窓閉めるよ?」
「うん、寝室冷えちゃったね。」
窓を閉めながら、其の方が
俺は嬉しいと篤則が言った。
何でと聞くと『海音を抱く
理由が出来た』
「躰冷えてるよね?
暖めてあげる」
もぅ、理由なんか無くたって
毎日抱かれてますよぉーだ。

ーー高嗣は海で
死んだ。
僕の目の前で高波に
攫われて・・・・・・

「あっぁん」
篤則の指が僕の蕾を
なぞりながら開いてゆく。
其の唇で舌で僕の熱く
なったモノを弄びながら。
「だめ、イッちゃう」
「いいよ、何度イッても。
俺で感じてくれるのは
嬉しい」
うっく、んんぁぁぁ・・・・・・

篤則とは実家が近所で
幼馴染だった。
高嗣を失って荒れていた僕を
救ってくれたのは篤則だった。
其の日は、マンションの一室で
男ばかりの乱交パーティーを
やっていて皆精液まみれに
なっていた。
そんな中に飛び込んできて
僕に平手打ちし此処まで運んで
バスルームで爪の先まで
綺麗に洗ってくれた。
クスリで思う様に動けなかったが
『此の偽善者!』と怒鳴りつけた
覚えがある。
其れに対して篤則は『何でもいいさ、
俺はただお前を失いたくないだけだ』
と。

「スキ 篤則」
「愛してる」
そう言うと頬にキスして
くれた。
何だか嬉しくて抱きついて
〈おかわり〉をねだると
唇を重ねて躰の芯が溶ける様な
キス。
「おやすみ海音」
「おやすみなさい」
僕が眠りに堕ちるまで
篤則はずっと髪を撫でてくれていた。

続く