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BL・夜の踊り子

四夜

その日、僕は早くに
クラブに向かった。
無論一人でーー

「あらぁ、そんな事が
あったの」
オーナーの部屋で僕は
沈みこんでいた。
稜也の気持ちが分からない。
オーナーなら、ずっと僕達
二人を見てきたから助言を
貰えるかと思って相談をした。
「他人事と思え無いんじゃ
ないのかしら?稜也は
過去の話しを都羽ちゃんに
したのかしら」
稜也の過去?
「いいえ、何も聞いて
ません」
「私から言っても
いいのだけれど、都羽ちゃんは
どうしたい?」
「・・・・・・直接聞いて
みます、稜也に」
オーナーはニコリと微笑んだ。
「都羽ちゃんは頭のいい子だから
色々考えちゃうのよね。
でもね、考えるのと考え込むは
違うでしょ。ーーあら、そろそろ
ショーの時間よ。
今夜もエロい都羽ちゃんを
魅せてね」

ーーショータイム!!
打ち合わせ出来なかったけど
稜也の感を信じよう。
伊達に四年、ペアを組んで
やってきた訳じゃ無い!

ショーが無事終わり
オーナーからお給金を頂き
二人きりになると僕は
心に引っ掛かっていた事を
稜也に訊ねた。
「ーーウリ専、やってた事
あるの?」
稜也の瞳に陰が映った。
「ある」
ぽつりぽつりと、稜也は
自身の過去を話し出した。
幼稚園の頃から体操を習って
いた事
高校一年のとき両親が事故で
他界し、叔父夫婦に引き取られた事
体操を続けたくて工場でアルバイトを
始めたが、其処で事故に巻き込まれ
脊髄を損傷
「体操を演りたくて始めたバイトで
体操がやれない躰になっちまって。
もう何もかもどうでもよくなってーー」
夜の繁華街を彷徨いていたら
見知らぬ男に声をかけられ、
こんな躰でも金になるのかって
高校中退してハッテン場に
行くようになった・・・・・・
金貯めて独り暮らしして
毎夜男漁って金貰って自由気ままに
生きて、だけど苦しくて
心が悲鳴をあげていて、だけど
そんな生活から抜け出せなくて。

「もういい、もう・・・・・・」
僕は稜也を抱きしめた。
「ごめんね、稜也。
僕ーー」
其処からは声にならなかった。
稜也の躰が震えている・・・・・・
少し躰を離して、頬にキスした。
僕には此れくらいしか
出来ない。
すると、稜也がおでこにキスを
くれた。
そして、どちらからとも無く
唇を重ねた。

甘く、切ないキス。

続く