書評 村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』とはどのような物語か
『ダンス・ダンス・ダンス』は、「喪失感に苛まれていた『僕』が現実世界に自分の居場所を見出す」物語だ。
「僕」は、出会う人間に通過されゆく存在である。入口と出口を有しているが、長時間留まることのできる内部空間を有していない。「僕」を通過していったのは、妻、イワシ、キキ、メイ、五反田君である。皆、「僕」に留まることなく、そこを通り過ぎていった。
本作品の舞台である、新「ドルフィンホテル」は、「僕」と同様、長く留まることを考えて設計されていない場所である。「ホテル」というもの