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KokugoNote #43高1国語総合

授業復習ノート。今回は古文。定番の『宇治拾遺物語』は「ちごのそら寝」です。


〈古文の勉強方法〉

【良いやり方】
① 音読をする。* 現代仮名遣いに改められるようにする。  
② 動詞を蛍光ペンでマークする。 * 何が動詞かは先生に教わる。
③ ②について主語は誰かなのかを確認していく。*登場人物を整理する。
④ 現代語訳しにくい箇所を抜き出して憶える。*すべて現代語訳を書かない。                               ⑤ 文法事項は一度に学ぼうとしない。 * 段取りをつけて学ぶこと。

【ダメなやり方】
① 古文と現代語訳を並列して、書き写して憶える。
 * 定期考査でしか役に立たない勉強法なので、テストが終わればすべて忘れてしまう。
② 単語の意味を複数書き並べてしまう。* 憶え切ることができない。

③ 詳細に文法事項を書き並べてしまう。* やはり頭に残らない。

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 要は、〈ダメなやり方〉は参考書を丸写しするのと同じなので、頭の中には残らないということです。
 学校の勉強は、皆さんがひとりで学ぶときに〈何をどうしたら良いか〉が解るということを目指しています。知識を丸呑(の)みしても消化できないので、噛(か)み砕かないといけません。優先順位を付けて、噛み砕いていく必要があります。〈良いやり方〉はそのひとつの方法です。他にもやり方はありますが、古文が苦手な人が多いので、1年間はこのやり方でやってみようと思います。(二〇二〇年ももう半年が過ぎようとしていますが)
                              

■「児のそら寝」『宇治拾遺物語』 鎌倉時代前期に成立

 今は昔、比叡の山に児ありけり。僧たち、よひのつれづれに、「いざ、かいもちひせむ。」と言ひけるを、この児、心寄せに聞きけり。さりとて、し出ださむを待ちて寝ざらむも、わろかりなむと思ひて、片方に寄りて、寝たるよしにて、出で来るを待ちけるに、すでにし出だしたるさまにて、ひしめき合ひたり。
 この児、さだめておどろかさむずらむと待ちゐたるに、僧の、「もの申しさぶらはむ。おどろかせたまへ。」と言ふを、うれしとは思へども、ただ一度にいらへむも、待ちけるかともぞ思ふとて、いまひとこゑ呼ばれていらへむと、念じて寝たるほどに、「や、な起こしたてまつりそ。をさなき人は寝入りたまひにけり。」と言ふ声のしければ、あな、わびしと思ひて、いま一度起こせかしと思ひ寝に聞けば、ひしひしと、ただ食ひに食ふ音のしければ、ずちなくて、無期ののちに、「えい。」といらへたりければ、僧たち、笑ふこと限りなし。


 ① 歴史的仮名遣いを教科書260頁で確認する。
   → 教科書に、カタカナ表記になっているので、それ
をひらがなにすること。
   例:よひ → よい/かいもちひせむ → かいもちいせん
* かいもちいせ「む」も大丈夫。
    言ひける → 言いける
    ひしめき合ひたり → ひしめき合いたり
*すべてひらがなにせよ、という指示がない限り、漢字交じりで書くこと。

 ② 物語の流れを捉えるためには、動詞を追っていくことが大切。
     誰が? 何をした? & なぜ?を確認すること。
 
いつ? :「よひ」(夕暮れ)
どこで?:比叡山延暦寺で
誰が? : 僧たちが「かいもちひせむ」と言った。
      児は「心寄せに」聞いていた。
      児は「片方に寄りて、寝たるよし」をしていた。

 〔そうかと言って、出来上がるのを待って寝ないでいるようなのもよくないだろうと思って〕
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 なぜそう思ったのか? 

※ 「児」は上流貴族の子弟(してい)なので、ご飯を自ら作ったりすることはなく、また手伝うとなると、身分に相応しい行為とは言えない。起きて待っていると、かえって「僧たち」に気を遣わせてしまうので、彼なりに配慮したと思われる。そういう当時の社会常識を踏まえて読まないとダメなのでした。

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 その後、なんだかんだで、ぼたもちが出来上がっていたようで、「児」はその後、次のように展開を予想する。

 児
  「さだめて/おどろかさ/むず/らむ」
  (きっと自分のことを起こしてくれるだろう)

 僧A
  「もの申し/さぶらは/む。おどろか/せ/たまへ」
(もしもし。どうぞお目覚めください。)
 *「せ・たまふ」は最高尊敬と呼ばれ、身分が相当高い相手にしか用いない。「児」の出自(しゅつじ)が推測される。

 児:うれし
   一方で、
「ただ一度に/いらへ/む/も、待ち/ける/か/と/も・ぞ/思ふ」
 *ここは主語と動詞を丁寧に確認すること。

  (僧の呼びかけに対して)一度目で返答するようなのも、僧たちが「児はぼたもちの出来上がるのを待っていたのか」と思うと(私:〔児〕は)困るので

 いらふ:返事をする/もぞ:~すると困る
  * 特殊な訳し方をするので注意すること。

     なので「今ひとこゑ呼ばれて、いらへむ」と決意。
    「念じて寝たるほどに」(我慢して眠っていると)

 僧B
   「や、な起こしたてまつりそ」
    (これっ、お起こし申し上げるな)
   「をさなき人は寝入りたまひにけり」
    (幼い人はすっかり眠ってしまわれたのだ)
  と僧Bをたしなめる。
  *「な~そ」で「~するな」と禁止を表す。
  *「たまふ」(尊敬語:お~なさる)
    「たてまつる」(謙譲語:~申し上げる)
     と訳す。敬語表現は2学期に勉強しましょう。

  児:わびし・・・
     「今一度、起こせかし」
     (もう一回、起こしてくれよ!)
    *「かし」は「!」の意味。
 
  時間は無情に過ぎていき、ほかほかのぼたもちは、僧たちの胃袋の中に入っていく。「ひしひし」という音が聞こえて、空腹に耐える「児」。
 
    児の焦り・・・
   自分で「もう一回、呼ばれないと返事できない」というルールを作ってしまったので、、、「ずちなし」(どうしようもない・・・)困った。
 ぼたもちがなくなる・・・
 「無期ののちに」(ずいぶん経ってから)

ええーぃ!
 「えい!」(はいー!)
(「もの申しさぶらはむ。おどろかせたまへ」に対する返答)

 僧たち:大笑い
    (起きていたのにうそ寝していたのだね)

■ 内容は以上です。
「誰が何をしたのか?なぜなのか?」を丁寧に理解してください。


【文法篇】
   今回は、文中の変化した動詞を基本形に改めるという一点のみに絞って、試験に出題します。

「動詞を追う → 主語や目的語、理由などを周辺から読み取る」ということが、古文読解には求められるので、どの語句が動詞なのかを確かめられなければなりません。

 動詞は「自立語」(それだけで意味を為す)もので、活用します。「活用する」とは後に続く語に対して語尾を変化させるという意味です。

■ 例えば、現代語で、「言う」という動詞は、
   ・「言い」ます
   ・「言っ」た
   ・「言わ」ない
  などと変化しますが、いずれも「言う」:「言葉を発する」という意味は変わりません。辞書で調べるときも “言っ” で調べる人はいないと思います。「言う」で調べますね。古語も同様で、そういうのを基本形と呼びま
すが、基本形で調べるのです。現代語で当たり前のようにできている基本形を、古語でもできるようになりましょう。

■ 丸暗記しなくてはいけない特殊なものと、原則通りのものと、2種類に分けて考えました。以前に配信したプリントに詳しいので、ここは割愛 
(かつあい)します。 「徒然草」の ドリルトレーニングを授業中に行うので、早く慣れて、いつでも基本形に改められるようになってください。
     
  文法も試験に出るのは、「児のそら寝」のみです。

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