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層雲峡ホステル 5年目の覚悟

層雲峡ホステルの5年目のシーズンが昨日からはじまった。

シーズン明けも5年目となれば、慣れた感覚でひょひょいとできると思いきや、「あれはどこにしまってたっけ?」「どのような仕組みでやるのがいいだろう」「改装が必要だ!」「これやりたいね」「やばい間に合わない」「い、いらっしゃいませ!(いらっしゃいませなんて言ってたっけ...)」なんて、今年も初年度の気持ちでオープンの日を迎えてしまった。


でも、なんだかんだで身体は覚えていて、自然とチェックインができたりもする。なんだか久しぶりに乗る自転車のよう。

そしてひと段落してふぅとフロントに座ったとき、「戻ってきたなあ」とふつふつこみ上げてくるエネルギーを感じた。

初めてのオープンは2018年。
LCCで気軽に海を渡れて、スマホで簡単に情報が取れて、インバウンド勢もたくさん来日していた時。
旅行者がそこかしこにいた、そんな年に『大雪山の拠点をつくろう』と友人やまちの方々の力を借りてなんとかオープンできた。


ゲストは「こんなところからも!?」というぐらい様々なところから来る。性別も年齢も文化も宗教もバラバラだ。
そんな人たちをひとつの建物で受け入れること。

そして住み込みで働いている我々スタッフがその生活を楽しめるのかということ。


初年度はあれもこれも未知すぎて、考える前にやってみることがほとんど。怖いけれど後には引けない、ビビりながら前だけ見ていた。

やることが山のようにふってきて、自分の時間は宿の時間、内にも外にも良い顔しようとしてたら髪が抜けた。その髪をコロコロで掃除するシマツ。はー大変。

そんな目まぐるしく日常が過ぎる中で、“何のために宿をやっているのか”ということがぶれないために理念をつくった。(当時は適当に決めたんだけど)

宿泊所でリネンといえば、シーツや枕カバーのことだけど、来る人も働く人も心地よい空間にするために掲げた理念は、

『自然を楽しむ全ての人へ』 というもの。

背景は違えど、同じ気持ちで晴れを待ったり、同じ道を歩く。ゲストの皆さんだけではなく、働く私たちももれなく。

そんな思いでつくった理念の下、変化を妥協せずに建物の改装を計画したり、物事を企画したり。

だんだんと予約が増え、大雪山の拠点宿として少しづつ機能し始めていた。


そして来年は勝負の年だぞというときに、コロナ。
まじでやばかったなあといまでも思い出す。

いま宿に求められるものはどんなことだろう。そして改めて僕たちがやりたいことはどんなことだろう。
いっそ宿をやらない方がいいんじゃないか。そう何度も思ったけど、「どんな状況でも自然を楽しむことを必要としている人がきっといるはず」と理念に戻ってコロナ禍での営業を決めた。

やってみたらゲストの皆さんの笑顔があったし、スタッフと豊かな毎日を送ることができて、心から良かったと今では思う。


おかげでいまもドシっと構えて営業ができる。
判断してきた回数が宿に積み重なって、なんだかうまく伝えられないが、進んでいる。

オープン当初は古い施設だし数年後には大きな壊れが出ると言われていたこともあって、とりあえず数年やってダメならやめようと思っていた。
そもそも自分自身が続けたいと思うかすらわからなかったから。

やってみよう。計画よりも勢いそのままに実行してきた。
やってみてどうだったか。振り返ることで反省をしてきた。


でも5年目、勢いばかりではいられない。

時代や世の流れとともに見える物事や視点が変わってきて、自分たちのできることできないことが見えてきた。
振り返るだけではなくて、そろそろ大きなものを考えるときなのかもしれない。


ゲストのみなさん

関わる人達

自分たちの生活


そこで今年から掲げる層雲峡ホステルの理念を切り替えた。


『人生の視野を広く持つことができ、生きやすい社会を目指す』


小さな宿だけど、ただの宿泊施設だけど、うちの宿で何かを経験したり、情報を見ることで考えの幅が少しでも広がったりすること。

何かに行き詰ったときに頭の片隅にその景色が出てきたり、あの人あの会話を思い出したりすることは選択肢の幅を少しでも広げることにつながっている気がしていて。

なんというか、知っていくことを続けていけば、自分という人間がわかってくるし相手側の気持ちにもなれる。
知らない世界を知ることで「自分はこのようなことが好きだったんだ」とか「そうじゃなくても大丈夫」と心が折れづらくなって生きやすいに少しはつながるんじゃないかと思っている。

社会へのアタックをできる範囲からやってみます。


そのために私たちは『ふもとと山頂、暮らしと観光、人の価値観をつなぐ宿』を目指して進む。

頂上の景色を知っているからふもとの生活が楽しかったり、暮らしている私たちが楽しいから観光として呼ぶことができたり。
そこに関わる全ての人の色々な価値観を拒み合うのではなく遠くからでも同じ景色を見ること。

無理やりではなくポジティブにゆったりと“つなぐこと”をやっていけばおのずと大きな目標に近づけると思うから。


そしてなにより、働く私たちが『胸を張って楽しく』暮らすこと。

こんな働き方があるんだ、と思ってもらえるような。
世捨て人だから山のふもとで働いているのではなく、楽しいから、やりがいがあるから働いている。
年収いくら?食っていけるの?と今まで幾度となく聞かれているけど、一応食っていけてるし、こんなに充実していることはない。

というよりまずは中が楽しくなければ。
もちろん大変なこともあるけれど、私たちが下を向いていてどうする。
流れは自分たちでもってくるものだ。

とまあ、そんなカッコいいことをほざいていても、結局やるのは掃除機をかけることだったり、お米を研いだりすることだったりする。


ただ、その目の前の物事が、遠くの大きな目標に繋がっていることを忘れないようにしたい。
逆に、大きなことを捉えようとしたときに、足元からということも。


私たちは私たちのペースと強みで。


山の宿には変わりませんし、緑に癒されたくなったり、なんか違う場所に行こうと思ったとき、宿はあります。

5年目の今年も、大雪山の入り口層雲峡でお待ちしてますね。

よし、今シーズンもやったるぞー!!!


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