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お祭りの価値 ~幻のランタンフェスティバル~

先日、実行委員だけでランタンを上げ、2018年から続けてきた日本一寒いまちで1年に1度行われているお祭り『雪景色のランタンフェスティバル』に、いったん区切りをつけて終了させた。

実行委員長を務めていた僕としては、寂しいけどすがすがしいというか、荷が下りたような離れたくないような、北海道の冬が終わる時のような気持ちだ。


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ここ数年、冬が来るとそわそわしていた。

それは、「ランタンの時期が来たねえ」と、気の良い人たちとにやにやしながら集まれる楽しみと、今年もランタンが上手くあがるだろうかという不安からだ。


事の発端は5年前、僕が旭川市の宿で働いていた年に、地元民が雪をポジティブに捉えることのできる何かがあればいいなと思っていて、
同時期に美容コスメをつくっている人が石鹸の残りカスが何かを飛ばす固形燃料のようになるかもと考えていて、
これまた同時期に世界一のブルーチーズをつくる人が江丹別を盛り上げるために何かしたいと考えていて。

たまたま3人で話したときに、それぞれの想いが合わさって「江丹別でスカイランタンをやってみよう!」と遊ぶ予定を立てるように約束した。

スカイランタンとは、紙や竹で作られたランタン内に火をともし、内部の空気を暖めて放つ小さな熱気球のこと。もともとはアジアやヨーロッパ諸国のお祭りや無病息災を祈る民族風習として使われていたらしい。

そこから、同じ旭川で仕事をしている同世代に声をかけて、写真が好きな人、美味しいチョコレートをつくる人、WEBまわりが得意な人、ドローンが得意な人が "なんだか楽しそう" というだけで一緒にやってくれることに。

はじめは友人の範囲で小さくやろうと話していた。
やる人いますか~とSNSに投稿したらすぐに参加したいという声が上がり、あれよあれよと100人ほどの思ったより大きなイベントになった。

もちろん事業性なんて考えていなかったので、業者に頼むことはせず、自分たちのできることだけで作る利益はほぼなしのお祭り。


現地の調整と許可、参加者の申し込みと当日の誘導、小さな楽しみを重ねるコンテンツ、会場下見とリハーサル。

良いイベントにしようとそれぞれの仕事が終わった後に集まって考えた。
仕事もバラバラだから色んな意見が出てきて、あーでもないこーでもないと言いながら。

放課後活動のような、なんだかその時間が楽しかった。

イベント名は北海道の大雪原でやることから『雪景色のランタンフェスティバル』に。世代を問わずに参加できる ”冬の七夕” をテーマにした。
ランタンにそれぞれの願いを書き、広大な雪原に移動してランタンを放つ。そして冷えた体でホットチョコレートを飲む。というわかりやすいイベントである。


でも、良いメンバーと良い企画があっても、ランタンは風が強いとあがらない。

本番が近づくにつれて天気予報を株価のごとく細かくチェックして、変わらない強風予報にまじかよと頭を抱えた。100人を前にダメでした~なんて言えない。
好きでやってんのにこのプレッシャーなんなんだよと思ったりもしてた。笑



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そしてイベント当日。
続々と参加者の方が集まってくるが、予報通りの強風。やばい。

しかし、メンバーそれぞれが役割をまっとうしていたこともあり、ランタンをあげるまで順調にイベントが進んでいった。
なんだか本番の空気も相まって、チームがぐぐぐっと思いものを持ち上げるように動いていく感じがした。

風があろうが、きっと上手くいく。
根拠のない自信を感じさせる即席チームの力強さだった。

外に出るとその自信を表すように、びっくりするほどの無風になった。驚きとともにすでに喜びたかったが、頑張って当たり前のような顔をした。

そして温かな光が灯っていき、カウントダウンとともに願いを書いたランタンと歓声があがる。大成功だった。

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ランタンに願いを書いて飛ばす。それだけだけどみんながほころぶ。来年もやろうと全員が思った。




翌年の2回目は、定員200人分のチケットが申込開始直後に売り切れてしまうという嬉しすぎる状況。

たくさんの願い事であふれた会場、でもまたしても強風。
しかし、図ったようにまたも直前にピタッと風が止んで、たくさんの灯りが舞った。

運営陣のとばす直前の「今いける!いこう!」というコミュニケーションは今思い出しても震える。
その景色と飛ばした後のホットチョコレートは格別だった。

そして手作りのランタンフェスティバルは嬉しいことに市の広報紙の表紙にもなった。

旭川市広報


2020年の3回目。
このときはコロナが国内で確認し始めてきてマスクが品切れの時。
コロナが何なのかもわかっていない、ガイドラインも対応も何もかも不透明。直前のその状況に300人の申込に対して実際に来ていただけたのは91名。

慣れない感染症対策と参加者の温度感をそろえることは簡単ではなかったし。何度もダメかと思ったけど、それでもランタンはあがった。

(そして4回目は感染症拡大の中でイベントは難しいと断念。そして実行委員だけでやったこの間が5回目)



利益はほぼなしと言いながら、毎年ほんの少しだけ出るようにしていた。それはその日のお疲れ様会にみんなで焼肉に行くため。その分だけ。

写真とともにその日を振り返りながら、「まじで良かった~」「でも正直やばかったよね」と。

そこから自分の事業のことだったりプライベートのことだったり、イベントついでに話が広がって、仕事でも関係性が生まれたりしていった。

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いつも一緒にいないけど一緒の場所で頑張っている戦友のような人たち。そんな仲間と仕事ではないところで一体感を共有できること。そして参加した方々のほころんだ顔。

利益性とか損得とかじゃなく、それらの価値の大きさにこれまでの苦労の対価があると腑に落ちる。

単に協創することは気持ちがいい。お祭りはこれだから良いなと思う。

各地のお祭りも、みんなでつくってきたものなんだと身をもってわかった。

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そんなイベントも今年でひと区切り。なぜなら嬉しいことに立ち上げメンバーそれぞれが忙しくなってきたから。

そして何よりそれを継いでいきたいという若手たちが現れたから。

『雪景色のランタンフェスティバル』としては終了するけれど、やってきたことを江丹別の若手チームに引継ぎ、来年からは単なるイベントではなく、旭川市の、江丹別のお祭りとして新たに自分たちのものとしてやってくれるのだ。

心の底から嬉しい。

悲しいニュースばかりではない。自分たちのできることから嬉しいニュースはつくっていける。

とにもかくにも、いったんはひと段落。
実行委員の皆さんおつかれさまでした!


今度は参加者として。はー楽しみ。


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雪景色のランタンフェスティバル2022を楽しみにしていただいていた方々、参加の機会が作れずすみませんでした。
でも、江丹別でのランタンフェスティバルは2023年に開催予定です。一緒に創っていきましょう。

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【実行委員】
宿と山と書類 志水陽平
チーズとサウナのドリーマー 伊勢昇平さん
髪とコスメのアーティスト 志水洸一さん
着物カメラマン 目黒有季哉さん
ドローン&ジュエリー作家 斉藤直輝くん
得恋ショコラティエ 村本賢亮さん
WEBと企画のなんでも屋 小林尚人くん

【スペシャルサンクス】
イベントサポート 合田さん、定村くん
ビデオグラファー 畠山さん
焚火のきこり 清水さん
トーチのきこり 野中くん
学生ボランティア統括 小林くん
スノーアート監修 中嶋さん
東川町会場統括 中田さん
雪景色のランタンフェスティバルにご協力いただいた方々
江丹別若手チームのみんな


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