勘違い女の最後のチャンス 前編
(読了目安11分)
22歳で就職し、「いつか結婚したい」と願いながら、39歳になってしまった事務職員のK子さん。
いったいなぜK子さんは結婚できなかったんでしょうか。
そして彼女に訪れた「最後のチャンス」とは・・・
主人公は、39歳の独身女性「K子」さんです。
では始めましょう。
都会で事務職員として働くK子さんは、39歳のひとり暮らしです。
スタイルも顔立ちも、「外見」で言えばモテるタイプです。
田舎の実家には両親が健在です。
K子さんの妹はすでに嫁いでいて、小学生の子どもがいます。
K子さんも結婚を考えているんです。
考えてはいるんです・・・そして男性からモテるにはモテるんです。
・・・ですが、
男性に対して「年収だ・身長だ・年に一度の海外旅行だ・趣味も大切」などと「条件」をつけているうちに婚期を逃し、気付けば39歳でした。
いまだに、「イイ男がいないから私は結婚できない・縁があればいつかできる」と思っています。
普段は行動力もあり、言葉遣いにもキレがあり、仕事もできるK子さん。
実際より若く見えることもわかっていて、自分では「独身だけどイケてる女・仕事に生きるキャリアウーマン」だと思っています。
しかし現実はちょっと違いました・・・
結婚できない理由は、彼女に「悪いクセ」があるからでした。
そして仕事が「できる」理由は・・・たしかに彼女の才能もあったんですが、本当のところは周囲が「K子さんを怒らせると面倒」と思っていたため、自分の仕事時間を削り、K子さんの仕事がうまく回るように、陰で苦労していたからなんです。
周囲の5、6人が彼女に気を使うことで、彼女の仕事がうまく回っていた・・・
言い換えると、K子さんは周囲の足を引っ張ることで、表向きは自分の仕事を順調にこなしていたんです。
そんな裏事情も知らず、「私はイケてる・私は仕事ができる女」と勘違いしていたんです。
実際は、太文字で後述するように、「悪いクセ満載」のK子さんでした。
しかし本人はマイペースで、
「私、仕事もできるし、みんなも喜んで協力してくれるし、性格も決して暗くない。ブスでもデブでもないのに結婚できないなんて、世の中どうなってんの?」
などと思っていました。
さて、そんなK子さんに対して、みなさんはK子さんの「悪いクセ」を指摘できるでしょうか。
たとえば以下のようにです。
「相手によって態度をコロコロ変えないでよね」
「香水が強すぎるわよ」
「しょっちゅうため息つくのやめてくれない?」
「時間を守ってください」
「人の目を見て挨拶をしてください」
「足と汗が臭いです」
「お金を渡すときに投げないでください」
「照明をつけっぱなしにしないでよ」
「人の話を最後まで聞いてよね」
「人の言葉を全部否定するのはやめてよね」
「不都合を人のせいにするなって」
「あんたがイライラしてて周囲が困ってるよ」
「トイレをきれいに使うように」
「手を洗ったら水跳ねしたところをちゃんと拭いてよね」
「静かに歩いてください」
「クチャクチャと音をたてて食べるのをやめて」
「食事中に肘をつかないでよ」
どうです?
普通はこんなこと、言えませんよね。
言わないかわりに「こんな人と深く関わるのはやめよう」と思うはずです。
さて、K子さんはなぜ39歳で上記のようなことができないままなんでしょうか。
言ってみれば、なぜ「勘違い女」になってしまったんでしょうか。
そしてそんなK子さんに、結婚のチャンスは訪れるんでしょうか。
以下に続きます。
◎K子さん
以下、K子さんの18歳から39歳までを簡単に紹介します。
<18歳>
K子さんは高校を卒業すると両親の元を離れ、都会にある大学に入り、ひとり暮らしを始めます。
親元を離れたのは、都会に憧れていたこともありますが、口うるさい親の力の及ばないところで、のびのびと暮らしたかったという理由もあります。
大学時代、ひとり暮らしの仲間や友達の間で、お互いの部屋に泊まり、みんなで遊んでいた時期がありました。
そのころ、上に書いた太文字のようなことを友達から指摘されたことはあったんです。
しかし、「いちいちうるさいわね!そんなこと気にしなくても生きていけるわよ」「もう私は大人よ、親みたいなこと言わないでよね」「アンタ細かすぎ、男から嫌われるよ」などと反論し、友達から指摘されたことについて考えようとしませんでした。
むしろ指摘する友達をウザイとさえ思っていました。
大学時代、悪いクセを指摘してくれる友人がいたにもかかわらず、それを無視してしまったK子さん・・・
その結果、無視された友達は気分が悪くなり、K子さんから離れます。
同時に、助言を無視したK子さんの「悪いクセ」は直ることはありませんから、より一層友達は離れていきました。
やがてお互いが泊まり合うような付き合いもなくなり、K子さんの悪いクセについては誰からも指摘されなくなってしまいました。
<22歳>
K子さんは就職しました。
大学時代に友達からの指摘を受け止めず、自分を変えるチャンスを逃したK子さんですから、社会に出ても相変わらず「ちょっと変わった性格・自分勝手な性格」のままだったんです。
しかし社会人になると、学生時代と比べ、「あんたおかしいよそれ」とは言ってもらえなくなり、言ってもらえないかわりに、自分の周りから人が離れていくわけです。
ただしモテないわけではなく、短期間の付き合いなら、男性関係には恵まれていました。
<24歳>
徐々に女性友達との付き合いが減ってきたK子さん。
女友達の、「彼氏ができた・婚約した」、などのニュースを聞くようになったK子さんは、少しずつ寂しくなり、自然と、「私も結婚を意識した彼氏が欲しい」と思うようになります。
今の時代、SNSを使えば男女問わず出会いはいくらでもあります。
特に都会に住んでいると、周りの目を気にせず、気軽に多くの人と関わることができます。
寂しいK子さんは必然的に濃厚な人間関係を求め、男性との個人的な関わりに時間を割くようになります。
男性はいくらでも近づいてきました。
しかし「悪いクセ」は直っていませんから、そんなK子さんには、K子さんの身体目当ての男性ばかりが近づいてくるようになります。
そう、ちょっと変わった性格のK子さんですから、まともな男性ほど、短時間で離れていってしまうんです。
また、離れていかないまでも、身体の関係が続くだけでした。
男性と関わっては別れ・・・そんな感じで数年が過ぎていきました。
<27歳>
K子さんは考えます。
「私はモテる・・・でも彼氏と続かないのはなんで?私のファッションのツメが甘いのかも・・・いや、それとも料理が苦手なのが悪いのかな・・・」
実際は、初めの太文字のような、大学時代の友達からの指摘が本質だったんですが、それを忘れていたK子さんは、ファッション誌を買い、料理教室に通い、ネット上の動画も参考にしながら努力しました。
料理教室で知り合った友達や、SNSでの同性との繋がりは表面的なもので終わってしまうこともあり、やはりK子さんは「結婚」を考えながら、男性との出会いを求めました。
しかしK子さんに近づく男性は、結婚など考えていません。
そしてK子さんの身体目当てで近づいてくる男性たちは、K子さんを褒めちぎります。
男性 「K子、その服似合う、かわいいよ! K子の料理もおいしいよ!」
K子 「あーよかった、やっぱり女はファッションと料理ね!」
ひと安心するK子さんでしたが、男性の本心は、「K子に飽きたら離れよう」でした。
その理由は、いくらK子さんがファッションや料理をがんばっても、K子さんに対して結婚を考えるまでの魅力を感じられないからなんです。
もし男性たちが求めるとしたら、ファッションや料理ではなく、やはり「悪いクセを直すこと」だったんです。
しかし男性たちは本心を言いません。
なぜなら、K子さんを怒らせたり自信をなくさせたりすると、別れを切り出される可能性があり、セックスを楽しめなくなるからです。
これはマスターも体験したことなんですが、都市部でひとり暮らしの女性と付き合うと、その女性の両親の監視の目を気にせず、ホテル代がかからず、ほぼ無料でセックスが楽しめるんです。
ですから、ひとり暮らしの女性は、セックスを楽しみたい男性にとっては貴重な存在です。
男性の多くは30歳を過ぎたあたりでは結婚を考えていませんから、男性にとっては、K子さんの「悪いクセ」を指摘するより、K子さんとセックスできるかどうかが大切なんです。
怒らせてしまったら、自分にとって大きな損失ですから、K子さんに本心は伝えません。
そして、K子さんの悪いクセに我慢できなくなったり、他に彼女ができれば、K子さんから離れていきます。
また、K子さんは、付き合ったどの彼氏の家にも招かれることはありませんでした。
付き合う男性がK子さんを自宅に招かなかったのは、本命との鉢合わせを防ぐためや、K子さんの髪の毛や香水などの証拠を残さないためです。
つまり、1番の女性ではないからです。
<29歳>
学生時代の友達の半分は結婚し、結婚した友達の半分は子育てをしていました。
家族そろってリビングで団らん・・・
「都会での幸せな結婚生活」に憧れているK子さんは、30歳までに「一発逆転・玉の輿」を狙い、一層本気で婚活に乗り出しました。
・・・
・・・
・・・ところが!
ちまたのマニュアルどおり、男性にモテそうにふるまっているつもりが、恋愛にはなっても、結婚まで話が発展しないんです。
なぜだろうと焦るばかりで、糸口が見つかりません。
数十万円のお金を出して結婚相談所にも登録しましたが、ダメなんです・・・
また、「どうでもいいわよこの人」と思うような男性からはひっきりなしに声がかかるんですが、「どうでもいい」と思っているだけに、結婚に踏み切る勇気は出ませんでした。
「出会い、付き合い、結婚までに1年かかるとして、もし3人と付き合ったら3年、5人と付き合う必要があるなら5年」
「ここまで引っ張ったらもう年収800万円以上じゃないと結婚できない、でも時間がない、どうしよう」
などと、自分を追い詰めてしまうK子さんでした。
この状況の背景には、明らかに親や友達が指摘してくれた「悪いクセ(冒頭の太文字部分)」がありました。
しかし本人には、自覚がない状態でした。
こんな状態で、数年が過ぎていきました。
<34歳>
友達のほとんどは、子育てで忙しく、K子さんの孤独感は徐々に深刻になっていきます。
K子さんは焦ります。
「いつまでも会社員なんてわけにいかないし、自営業に備えて資格でも取ろうかな」
「それともマンション買って、結婚まではペットと暮らしてみようか」
「お金をかけてアンチエイジングもしておかないと、男が逃げちゃうかもしれない」
(これらは全て愛を遠ざけます)
また、将来を心配する両親の誘いもあり、「実家に帰ってお見合い」という選択もありましたが、K子さんにとっては「敗北宣言」を意味するため、意地でも帰るわけにいかず、「都会での幸せな結婚生活」にこだわり続けました。
しかし男性は、常にK子さんの「身体」が目当てです・・・
34歳になったということもあり、付き合う男性の年齢層も上がりました。
そしてついに、50歳の妻子持ちの男性との不倫も体験します。
「彼氏ができたら別れればいいか」と気軽な気持ちで始めた不倫でしたが、「ひとまず寂しさは紛れているから彼氏を作る気になれない」という悪循環に入り、気付けばさらに数年が過ぎていたんです。
焦るほど見えなくなっていく将来。
結婚をあきらめかけたK子さんは、初めに書いたように、「私は独身だけどイケてる女・仕事に生きるキャリアウーマン」と思うことで現実を受け入れていました。
<そして39歳>
不倫をしていたためか、彼氏もできないまま5年が過ぎました。
さらに、不倫相手には34歳の新しい彼女ができ、39歳のK子さんは別れを告げられました。
しばらくは孤独感を味わうK子さんでしたが、それでもK子さんは自分を見ようとせず、「私は独身だけどイケてる女・仕事に生きるキャリアウーマン」という考え方は変えませんでした。
・・・K子さんは運が良かったのか、それとも悪かったのか、「妊娠」という体験をしないまま10人以上の男性、そして既婚者とも肉体関係を持ちながら、18歳で上京して以来21年間の都会生活が過ぎました。
ある晩、遅めの夕食を終えたK子さんが、「イイ男いないかなあ」と婚活サイトをのぞいていたときのことです。
K子さんは自分の誕生日が明日だということに気付きます。
独身のまま「40歳」になることが確定してしまったんです。
・・・
ということで、ここまでが18歳~39歳のK子さんでした。
以下に続きます。
◎「勘違い女」の最後のチャンス
「ドキッ! あたし・・・もうすぐ、40歳になるのか」
ひとり暮らしの小さな部屋の片隅で、婚活サイトをのぞきながら40歳を迎える・・・
K子さんにとって、思ってもみなかった人生の展開でした。
「家族そろってリビングで団らんしてるはずだったのに」
「結婚(初婚)・出産」を考えた場合、女性は40歳を過ぎると状況が一変します。子どもが欲しいと願っている初婚男性は、40歳を過ぎた女性を完全にスルーするからです(例外はあります)。
K子さんがこうなってしまったのは、他人からの助言を聞かず、やりたい放題やってしまったからです。
「自分を見つめる作業から逃げ回ったツケ」と言ってもいいかもしれません。
「あの時ああだったら、あの時こうしていれば」、と自分の過去に思いをめぐらせながらスマホの画面を見つめるK子さん。
時計の針は、あと1時間で夜の12時を回ろうとしていました。
「私、結婚したいし子どもだって欲しいの、やり直しができれば・・・ 」
・・・
人生は一回だけの本番でしたよね。
後悔して時間が戻るならいくらでも後悔すればいいですが、過ぎた時間は戻りません。
マスターもこれじゃお手上げです、「K子さん、さようなら」・・・
・・・
・・・
・・・と思いきや、その後のK子さんに明るい展開があったんです!
長くなるので後編に続きます。
・・・
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