マスクと除菌の基本 ―ヘンなオバサンにならないために―

(読了目安11分)

「マスク」と「除菌」の基本についてです。

◎マスクをつける理由

一般的に売られている「マスク・除菌スプレー・除菌シート」について、その役割や本質を書きますね。
医療従事者が身に付ける「完全防備服」についての話ではないので、そこをふまえて読んでください、あくまでも一般生活の話です。


マスクをした方がいいのかどうかについては、状況によります。
どんなに安いものでも、ないよりはマシだと思いますが、マスク着用の本質について知れば、マスクの有無による不安はなくなると思います。

なにより、専門家の多くは、

「マスクよりも手洗いが大切」

「予防としてのマスクはほとんど役に立たない」

と言っています。

以下、その理由を簡単な言葉で書いてみます。



まず簡単な二択問題です。

問題:マスクをつける主な理由は?

1.ウイルスをまき散らさないため

2.ウイルスを吸い込まないため


・・・正解は1の「ウイルスをまき散らさないため」です。


これは医療従事者ならみんな知っていることですが、ウイルスの大きさは1万分の1ミリ前後ですから、通常のマスクでは、息を吸うときにマスクの網目や肌とのスキマを抜けてしまいます。
では、なぜ「ウイルスをまき散らさないため」には効果があるんでしょうか。
それは、体内のウイルスのほとんどは、体内の唾液や粘膜などの液体に包まれ、大きくなっているからです。
「くしゃみ」をしたときの「飛沫(ひまつ)」の映像を思い出してみてください。
見たことがない人は、「霧吹き」で吹いた水を想像してもいいです。
その小さな水の粒の中にウイルスがいるわけです。
噴霧した水の粒の大きさは、目に見える大きさがほとんどです。
見える粒はマスクの網の目より大きいですから、マスクをしていれば、咳やくしゃみで空気中に放出されるウイルスは、大幅に少なくなります。


試しにマスクに向けて霧吹きでスプレーしてみると、水の粒はマスクを抜けないことがわかると思います。
同じように、唾液や粘膜などの水分に包まれたウイルスは、体内から出るときにマスクで止まるため、その分、周囲の人が感染しにくくなるわけです。


一方、空気中のウイルスが水に包まれていない理由は、小さな飛沫が浮遊しているうちに水分が渇くことと、飛沫が床や地面に落ちた後に乾き、空気に乗って再び舞い上がるからです。
水分に包まれていないウイルスはマスクの網目よりかなり小さいため、息を吸い込むときの「ウイルスを防ぐ効果」はほとんどないんです。


「体内から出るウイルスはマスクを通れない」

「浮遊しているウイルスはマスクを通り抜ける」

これがわかっていれば、マスクをつけることの意味がわかるはずです。
さらに簡単に書けば、健常者と患者がいて、マスクが1枚しかない場合、マスクをつけるべきなのは患者、ということです。



◎予防には効果が低い


上記から、マスクをつけるのは「ウイルスに感染している人」だとわかります。
つまり健常者が「感染の予防のためにマスクをつける」ということは重要ではないわけです。
ただ、新型肺炎については潜伏期間が長いですから、自分が新型肺炎にかかっているかもしれないと思った人は、「ウイルスをまき散らさないためのマスク」としてつけておくべきかもしれません。





◎「感染予防のためにマスクを!」の意味


マスクを売る側は、「予防のためにマスクを!」と言いますが、実際はウイルスはマスクを通り抜けてしまうので、マスクをつけている人もウイルスを吸い込みます。


「感染している人」がマスクをつけることで他者への感染の拡大を小さくすることはできるので、「予防のためにマスクを!」というのは、周囲への感染をできるだけ小さくするための、感染者に対する言葉なんです。




◎看病する人がマスクをつける理由


看病する人はマスクが必要ですが、それには主に2つの理由があります。
看病する人がマスクをつける理由は、飛沫の吸引や、顔への付着を防ぐためです。
たとえば感染者が食事をするときはマスクを外しますが、そのとき、看病する側との会話の都合で、患者の飛沫を吸い込んでしまうことがありえます。
飛沫は大小さまざまあり、空気中を浮遊する軽い飛沫もあり、呼吸のタイミング次第では、口や鼻から吸い込んでしまう可能性があります。
また、ウイルスが看病する側の唇に付着した場合、その人が唇をなめたときや食事をするときに危険です。
ですから、予防策としてマスクをすることが重要なんです。


そしてもうひとつは、看病する側は自分も感染するリスクが高く、すでに肺炎を発症する前の潜伏期間である可能性があるからです。
感染症はウイルスの潜伏期間中でも感染すると言われていますから、マスクをして、少しでも周囲への感染を抑える必要があります。




◎手洗いで予防


健常者が感染症を予防する場合、マスクの着用はあまり意味がないですが、手を洗うことは大切です。
理由は、人は無意識に口や鼻に手を入れてしまい、手に付着したウイルスが広がってしまうからです。
口や鼻を触った手でドアノブやスイッチなどを触ると、そこにウイルスが付着します。
そのドアノブやスイッチを他の人が触ると、その人の指にウイルスが付着します。
そこでその人が鼻や口に手を入れると、ウイルスが感染するわけです。
毎年のように発生する「0-157」の感染死亡事故は、このパターンです。
無意識か手抜きかわかりませんが、マニュアルが徹底しているはずの大きな事業所でさえ、「トイレの蛇口に付着した0-157が感染源か」などのニュースがあります。
これを防ぐには、徹底した手洗いと、手が触れる部分の除菌です。



◎除菌スプレーや除菌シート


感染症予防については、「塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)」について勉強してみてください。
ドラッグストアで、1本60円~150円程度で売っています。
薄い緑色のボトルに、ピンク色のキャップの薬剤がそれです。
キッチンブリーチとかキッチンハイターという名前で売られています。
これは除菌の王様で、マスターは30年ほど使っています。
感染症の現場で除菌に使われるスプレーのほとんどが、この塩素系漂白剤系統のスプレーです。
酸と混ぜると毒性の強いガスが出るため、「まぜるな危険」と書いてあり、それが怖くて使わない人も多いようですが、逆に考えれば、混ぜなければ安全なんです。
そして除菌効果は強力です。


これはマスターが使っている経験からの話ですが、次亜塩素酸ナトリウムの殺菌効果ははっきりとわかります。
マスターは200倍程度の希釈液をスプレーボトルに入れ、いつもそれで台拭きの布を消毒したり、手を洗うようにしたりしています。
手洗いの時は指先に吹きかけ、軽く水洗いするとOKです。
この希釈度は、保健所からも感染症の予防として推奨されている濃度です。
マスターは以前からこの程度の希釈度で使っていたんですが、以前、妻が保健所での「感染症予防・食中毒予防」の講習で「エタノールよりも、200倍希釈の次亜塩素酸ナトリウムがオススメ」と言われ、「うちではずっと前から使ってたから驚いた」と言っていました。
行政も推奨する、優れものです。


このスプレーは、子どもたちも幼稚園に入ったころから手洗い用として使っていますが、肌にはなんの問題もなく生活しています。
ドアノブやスイッチの除菌も、このスプレーをティッシュにかけて使えば、エタノール系の除菌シートと同じ使い方で使えます。


ただひとつ注意が必要なのは、「色落ち」です。
ひたひたに濡らすと、その部分の色落ちがあるかもしれませんから、染めた衣類や木の壁など、色落ちすると困るものには使わない方がいいと思います。




◎ウイルスを防ぐマスクはあるの?


ウイルスの大きさを1万分の1ミリと想定して考えてみましょう。
人間の一回の呼吸時間と量を、3秒で500ccとすると、その条件に合うマスクを作る必要があります。
1万分の1ミリ以下の穴を集め、3秒で500ccの空気を通す布を作るには、膨大な面積が必要になります。
そして顔とマスクの隙間を1万分の1ミリ以下にする必要がありますが、呼吸をするだけで顔の形は変わりますし、喋れば隙間ができますから、隙間を埋める「接着剤」を使わない限り実現は不可能です。
また、吸入可能量が計算上ギリギリの面積では、運動して呼吸量が増えたときや目詰まりしたときに窒息に近い状態になります。
つまり、ウイルスを吸い込まないためのマスクは、仮に作れても、膨大なコストがかかることになります。
技術的には、1万分の1ミリ以下の穴を作ることは簡単です。
しかしマスクとして使うには、非現実的ということになります。


結論としては、

「ウイルスを通さないマスクは作れるが、携帯してマスクとしての性能を発揮することは不可能」

と言えます。
(「N95・N99・N100」などのマスクの効果には諸説あります)



◎マスクの副産物としての利点


マスクをつける主な理由は、「ウイルスをまき散らさないため」ですから、健常者がマスクをつけたところで、ウイルスについてはほぼ意味がありません。
しかし、健常者がマスクをつける利点もあります。
それは「保温・保湿」の効果、さらに精神安定やファッションとしてのマスクです。
「保温・保湿」については、冬の寒いときにマスクがあれば、呼吸するとき温度と湿度が少し高い空気を吸い込むことができて楽です。
マスクの布の層と、マスクと顔のスキマに、温度と湿度が高い空気が保持され、それを吸うからです。
実際、冬にマスクをしないで呼吸するのと、マスクをして呼吸するのでは、違いがはっきりわかります。


また、湿度が高いとウイルスの活動が鈍化すると言われていますから、マスクなしで空気を吸うよりも、ウイルス性の感染症の予防効果が少しだけあるかもしれません。
保温・保湿としてのマスクの場合、強力なウイルスが付着しているわけではありませんから、ただの「衣類」としての役割と考え、使用感が不快になったら交換する、という考え方でもかまいません
(もちろんウイルス以外の無数の菌やカビがついていますので交換は必要です)。


あとは顔を隠すことで精神的に落ち着く人もいますし、色柄付きでファッションアイテムにもなりますし、また、化粧をしないときのごまかしに使うことも、マスクをつけることの副産物的な利点かもしれません。


◎花粉症対策なら


「花粉」はウイルスよりはるかに大きく、マスクの目の大きさより大きいものが多いですから、花粉を防ぐためならマスクは「あり」です。
ただ、花粉を完全に防ごうと思うなら、肌とマスクの間の隙間を花粉以下にする必要がありますが、それでも、マスクをしないより防げると思います。



◎実験室では効果があっても


除菌スプレーなどの除菌剤には、「99.9%除菌!」となどと大きく書いてあるものもあります。
しかしこれらは、「原液の中につけてしばらく置いた場合」などの過激な条件が小さく書いてあります。
マスクもそうです。
マスクに使う素材は、実験室では「ウイルスを通さないこと」が確認されたかもしれません。
ですから、うたい文句は「ウイルスを通しません!」となりますが、その素材が使われる面積が小さかったり、人間がつけた場合、呼吸するためには顔とマスクの隙間が、数ミリ必要になることについては触れません。
また、全てその素材で作って顔とマスクの間を接着すれば、呼吸が困難になります。
ウイルスを99.9%防ぐマスクの効果を出すと、ウイルス性の肺炎で死ぬことはありませんが、窒息して死ぬわけです。


除菌系の商品の多くは、宣伝文句は大げさで、実際の効果はほとんどないものが多いんです。
しかしなぜそんなあいまいな商品を売るんでしょうかね・・・
「99.9%カット!(ただし実験室で)」と、一番大切なことを小さな文字で記載し、99.9%安全だと勘違いして買った人たちが、病気になったらどうするつもりなんでしょう。
「日常生活レベルで最大30%カット!」のように、現実的な数字を正直に記載して売ってくれれば消費者もありがたいんですけどね。


企業は「それじゃ売れなくなるでしょ」と言うかもしれませんが、企業は「人に誤解させて商品を売るため」にあるわけではなく、「社会貢献のため・お客様の笑顔のため」にあるはずです。
そしてきっとその会社の「企業理念・設立理念」にはそう書いてあるんです。


いつのまにか「売るためなら大げさに書いてもいい」ということになり、それが社会の常識になっています。
マスターは人をだましてでもお金を得たいとは思いません。
大切な人をだましたくないんです。
企業にとって顧客は、自分たちの生活を支えてくれる「大切な人」ではないんでしょうかね。




◎まとめ


話をまとめましょう。

・かぜをひいている人はマスクをしましょう。
マスクは、ウイルスに感染している人が、飛沫をまき散らさないために使用するのが主な目的。

・健常者がウイルスの感染症を予防するためにマスクをしてもほぼ無意味。

・新型肺炎の人を看病する場合はマスクは有効。

・保温・保湿のためのマスクや、精神安定・ファッションのためのマスクはあり。

・花粉症にマスクは有効(花粉は大きいため、マスクで防げる場合がある)

・200倍希釈の次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)をスプレーに入れ、手洗いや除菌シートの代わりに使う

・ウイルスを通さないマスクは作れるが現実的ではない

・衛生用品の宣伝文句は少し割り引いて解釈する



以上です。

・・・

投稿タイトル一覧は以下です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?