アーユルベーダ 2 ネパールでアーユルベーダを体験して

(読了目安8分)

◎アーユルベーダとは


一説には、5000年前からあるインド古来の学問だそうです。
現在知られている「アーユルベーダ」は、「予防医学」としての要素が強い学問だとマスターは感じています。
また「アーユルベーダ」は「生命科学」と訳されることもあって、「哲学・生活の知恵・健康法」などの総合的な考え方とも言えそうです。
ネットでいろいろと出てくるので、興味がある人は検索してみてください。



◎ネパールでアーユルベーダを体験して


マスターがネパールで体験したことについて書きます。


自己紹介にも書いたように、マスターは21歳から消化器系の病気を抱えています。
現在の西洋医学では、「治療方法がない」とされ、国の難病指定を受けた病気です。
大腸からの出血と、場合によっては強い痛みを伴うため、普段の生活に支障があります。
その病気の治療法を模索していたとき、父の知り合いのネパール人が言いました。

「ネパールにはアユベディック療法(アーユルベーダ)というものがあって、それならきっと治るから、ネパールに来ないか?」


西洋医学で治らないなら、アーユルベーダに頼るしかない・・・そう考えたマスターは、5ヶ月間の観光ビザで、ネパールに渡りました。
結論から書くと、難病は治りませんでしたが、ネパールでの体験は、その後の人生にとって大きな収穫だったと思います。


知人に紹介されたアーユルベーダ療法のクリニックに行くと、まずはいろいろと問診があり、脈をとったあと、


「肛門を見せろ(英語で)」


と言われました。


肛門を見せるのは医療行為としてですが、角度によっては他の患者に丸見えで、少し躊躇しました。


それでもドクターはマスターに指示を出します。


「オープン・・・オープン!」


マスターは両手で思いっきり肛門を開き、ドクターは中の方までチェックしました。
日本の医療現場でやっていたら、たぶん変態プレイです。
しかしマスターは必死でした・・・


診察が終わると、薬草を調合したものを渡され、それを毎日飲むように言われました。


しかし、数週間症状は変わらないことを伝えると、「もっといい薬があるから」と言われ、さらにいろいろと処方してもらいました。
それでも症状は変わらなかったんですが、ドクターには「もっと続けろ」と言われました。


そして滞在期限の5ヵ月が過ぎました・・・その間、入院をするようなことにはなりませんでしたが、55キロだったマスターの体重は49キロまで減り、ついでにお金も減ってしまいました。


ドクターは、「薬は用意するから日本に帰っても続けなさい」と言っていましたが、マスターは、滞在期間中の5ヶ月で、アーユルベーダの治療を終わらせることにしました。


みなさんは、あとどのぐらい続けていたら、マスターの難病が治ったと思いますか?
1週間続けていたら治ったでしょうか・・・それとも1ヶ月、もしくは10年かもしれません。
いずれにしても、ドクターは「続ければ治る」と言っていました。


・・・以上です。


ネパール滞在中、マスターの難病は悪化しませんでしたが、体重が6キロほど落ちて、気持ち的にフラフラになりました。


もちろんネパールの滞在は、「マイナスイメージ」が残りました。


しかし、今となってはいい経験をしたと思っています。
いろいろなものを見て、「人生・病気・自分」などについて考え直すことができたんです。


マスターにとって不発だったアーユルベーダ療法。
しかし、5ヶ月間で得たものは、「オレ、難病でもいいじゃん」という、さらに大きな財産だったのかもしれません。


病気を治そうとしてだれかに相談すると、多くの人がそれぞれの治療方法を薦めてくれます。
言ってみれば、10人が10通りの方法を薦めてくれ、それぞれが「これが本物です・これじゃないと病気は治らない」と言うんです。

いつ治るかわからない病気を治そうとしたら、一生不安が付きまといます。

マスターは、「病気を治そう」と思っていたときは、迷いの中にいました。
そして「この病気は治らなくてもいい」と決めたときから、病気から解放されたような気がします。
難病の痛みはもちろん辛いんです。
しかし不思議なことに、「病気のおかげで多くのものを手に入れた」なんて思うこともあります。


さて、話は戻ります。
5000年の歴史と言われる「アーユルベーダ」は、マスターには不発でした。
しかしこれは、「アーユルベーダが悪い・ニセモノだ」とかそういうことではありません。
「マスターが受けた治療は、アーユルベーダなのかわからない」ということが本質なんです。


たとえば日本でも、「本物」の医師や職人に出会うのはとても難しいことですよね。
西洋医学のドクターはもちろん、整体・鍼灸のドクターもピンキリですし、武道の指導者や、寿司職人もピンキリです。
「理論」があっても、実践できる人がいないわけです。
また、人間は不完全ですから、理論そのものが不完全という大前提があります。
そんな状況を考えると、アーユルベーダについても同じで、「5000年の歴史に鍛えられた本物」を探しあてるのはとても難しいことだと思います。


また、マスターが体験したアーユルベーダは、料金も高かったようで、金額を知ったネパール人の知人から、「ずいぶん高いねえ」と言われました。
「お金があったら西洋医学で治したい」と言っているネパール人も多いようですから、アーユルベーダは「安さがウリ」と言っていいものですが、マスターの場合、一回の支払い額はネパール人の日給の数日分でした。
日本で言えば、1回数万円の治療費を払っていたわけです。
これじゃ、「病気を治すために働いてお金を稼がなければならない」という、おかしな状況になってしまいます。
良し悪しは別として、料金が高い理由を簡単に言えば、「相手がお金持ちの日本人だから」ということだったんだと思います。


アーユルベーダそのものは、確かに歴史があるのかもしれません。
また、「本物のアーユルベーダ」を受け継ぐ人がいたとしたら、マスターが世話になったドクターを「彼は本物ではない」と評価するかもしれません。
だからと言って、もしマスターが「本物のアーユルベーダ」を求めてインド中をさまよったら、「本物のアーユルベーダ」にたどり着く前に死んでしまうかもしれません。


また、多くのドクターが「われこそは本物のアーユルベーダのドクターです」と言います。
そして、本物のアーユルベーダがあったとしても、マスターの難病が治るかどうかはわからないんです。



◎宝くじのようなもの


マスターが求めた「本物のアーユルベーダ」は、外国人がポンとネパールに降り立ってすぐに出会えるものではなかったと思います。
アーユルベーダを受け継ぐ人がどれほどいるのか、そして、日本人が持つ「お金」を目の前にして、診察の目が狂わないドクターがどれだけいるのかわかりません。
インドやネパールに行ったことがあれば、「目先のお金に目がくらむ人が多い」「お金目当てに人をだます人が多い」などは経験済みだと思います。


「難病」の治療は、西洋医学では限界があります。
ですから純粋に「治癒の可能性を求めてアーユルベーダを試す」、というのはありだと思います。
しかし、アーユルベーダが残るネパールの国民の多くは、お金があったら西洋医学を選びたいんだそうです。
平均点が高いのは、現代医学かアーユルベーダか・・・考えるまでもないことかもしれません。


日本でもアーユルベーダの考えによる健康法や美容法がありますが、翻訳の都合や商業的な要素も強く、ニセモノの可能性が高くなります。
アーユルベーダの中にも、現代になって、全く逆の解釈がされている場合も充分にあるはずです。


マスターの経験上、たとえ「本物のアーユルベーダ」があるとしても、それにめぐり合えるのは、宝くじのような確率だと思います。


一方、西洋医学は、平均点が高いものだと言えます。
たとえば本物のアーユルベーダに出会う確率が1%、そしてアーユルベーダで病気が治る確率が10%だとしたら、1000分の1の確率で病気が治ります。
一方現代の西洋医学は、80%の確率で本物に出会い、病気が治る確率が80%だとしたら、2分の1以上の確率で病気が治ります。
病気が治る確率は、西洋医学の方が、はるかに高いと言えます。
実際、全ての医療をアーユルベーダにしたら、平均寿命は今の半分以下になってしまうかもしれません。
1000分の1の確率で当たる治療と、2分の1の確率で当たる治療があった場合、どちらを選ぶかということです。


◎難病は治らないけれど


西洋医学では、マスターの病気は「難病」に指定され、「西洋医学では治りません」と宣言しています。
それは病人にとっては辛い宣告ですが、「潔さ」という意味では評価できるような気がします。
また、「治らない」と宣言することで、患者は、「病気と共に生きる」という選択もできるようになります。
難病を治そうとしていた10年間は、マスターにとって難病は「敵」でした。
しかし今は、自分の一部のような存在かもしれません。


西洋医学でもアーユルベーダでも、治らないものは治りませんし、治るものは治ります。
常に治癒の確率が高い方を選ぶのが自分に対する愛ですが、結局のところ大切なのは、自分がやっているその治療法や健康法を信じるかどうか、ということかもしれません。


そんなことについて、今後もう少し書きたいと思います。
それから、みなさんが気になるであろう「美容」としてのアーユルベーダ。
実際はどうなんでしょうか。
やっぱり、ヨガと同じで「商業アーユルベーダ」もあるんでしょうか。

・・・

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