そのキャンセルは愛?

(読了目安8分)

自分の目先の欲のために約束をキャンセルした場合、その「ツケ」はどうしても自分に返ってきます。


たとえばアルバイトの予定があるにもかかわらず、彼氏から遊びに誘われ、バイトを「ズル休み」してしまった場合がその典型です。


彼氏からは「オレの都合でどうにでもなる女」と軽く見られ、バイト先からは「あの子はドタキャンする子」というレッテルを貼られ、信用をなくします。
以後、信用を回復するために膨大な努力が必要になります。


では以下のような場合はどうでしょうか。
みなさんも考えてみてください。


主人公は、両親と自分、そして妹の4人家族の長女、A子さんです。
「大学の春休み直前」の設定です。


A子さんのお父さんがケガをし、治療のために入院しました。
命の危険はありません。
A子さんのお母さんと妹は元気です。


そんな中、A子さんは大学の春休みに、2週間の「リゾートバイト」に行く契約をしていました。
「憧れの場所に滞在し、お金も経験も手に入る」という、まさに夢のような楽しい計画でしたが、お父さんの入院を理由に、リゾートバイトに行くことをキャンセルし、家に残ることにしました。
父本人からも、そして家族からも「こんなときにバイトじゃないでしょ!」と言われ、「自分だけ楽しむわけにはいかない」と思ったのがその理由で、バイト先には正直に、以下のように伝えました。


「父がケガをして入院したため、バイトをキャンセルさせてください。残念ですが、父が大変な時に出かけるのは心苦しく、自宅に残ることにしました」


みなさんはこれを読んで、この家族関係をどう感じますか?


「お父さん思いの娘がいる、愛に満ちた家族」でしょうか。


マスターは・・・


・・・


この家族は・・・


・・・


愛のない家族だと思います。


この家族が愛のない家族だとすぐにわかった人は、愛に向かって歩いています。
わからない人は・・・以下、落ち着いてよく考えてみてください。


入院中のA子さんの父親には、奥さんと二女がいます。
お見舞いや世話をする健康な家族が他にもいるわけです。


家族全員に「A子さんに対する愛」があれば、お父さんは自分のケガのために娘の楽しみを奪うことを望むでしょうか。
娘の喜びこそ自分の喜びのはずです。
また、娘に「社会的信用を失うようなこと」をさせるでしょうか。


愛のある家族なら、きっと父親は娘に以下のようなことを言います。


「遠慮せず行ってきなさい、お父さんにはお母さんがいるし、全然寂しくないよ」


「アルバイトは君の夢だったよね。夢をかなえて、社会の役に立ってきなさい」


「A子は社会と約束したんだから、それを守らないと他人が迷惑するし、おまえの社会的信用も落ちることになるんだ。それだけじゃない。きっと先方は、若い女性に対して悪いイメージを持つだろう。だから、A子自身のためだけじゃなくて、みんなのためにも約束を守りなさい」



母や妹も、
「私たちがいるからだいじょうぶ、遠慮なく行ってきて」
と言うはずです。


しかしA子さんは、バイトをキャンセルする方法を選びました。
家族がそれを望み、A子さん自身も、そうすることを選んだんです。
つまり、A子さんが「私だけ楽しむわけにいかない」と本気で思うところが、その家庭の育児の方法だったわけです。


A子さんの父親は「オレが苦しい時になんでおまえだけ遊んでるんだ?」という考え方です。
この考え方は、自分の苦痛に相手を付き合わせる考え方であって、それは決して愛ではないということは、以前書きましたよね。


たとえば以下の3つの話を思い出してください。

1:
まずドライブで言えば、「オレが運転してるんだから、助手席のお前は寝るな」という考え方です。
愛する力がある男性は、二人で共同体ですから、「オレが運転してるうちに遠慮なく寝ていいよ」と考え、二人の合計睡眠時間を長く取る方法を選びます。
また、「私が寝たら悪い」と遠慮する女性は、もし自分が車を運転する彼の立場だったら、眠くて仕方ない彼女を起こそうとするか考えてみてください。
愛とは、「私もあなたも周囲も楽しい(周囲に迷惑をかけない)」という状態です。
ですから、気分よく眠る快感を味わってもらいたいと思う気持ちが「愛」なんです。
これで「私もあなたも楽しく、周囲に迷惑をかけていない」という状態になります。


2:
仕事などで忙しいとき、自分が食事を摂ることができない状況になると「私が食事抜きなんだから、あんたも我慢しなさいよ!」という考え方がありますが、これも愛ではありません。
愛する力がある女性は、「せめてあなたは食事を摂っておいてね」と、パートナーには食べてもらい、2人の合計摂取カロリーに目を向けます。
「彼女が食べてないからオレも食べられないよなあ」という考え方では、2人の合計の空腹感は2倍になってしまいます。
2人のうちせめて1人は食事を摂るのが愛です。


3:
自分が疲れている時に彼氏からセックスをねだられた場合、「私は疲れてるんだから寝かせてよ!アンタ性欲ありすぎじゃないの?!」という考え方も愛から遠ざかります。
愛する力がある女性は、「フルコース」とまではいかなくても、2人の合計の快楽が高い方法を考えて実践します。
(女性が男性にねだる場合があれば、もちろん男性も協力してください)


上記のような考え方が大切な理由は、2人は敵対する関係ではなく、パートナーだからなんです。
これらは、相手の心と自分の心が一体なら、必然的に出てくる結論です。


ということで、A子さんがリゾートバイトに行かず家に残るということは、その家族に愛はなく、「力」や「緊張感」で支配された家族だと言えます。
A子さんがもし本気で「私だけ楽しむわけにいかない」と思っているなら、父親の機嫌や他の家族からのプレッシャーによるものでしょうし、また、父親が本気で「オレが苦しんでるときに楽しむのか!」と思うなら、娘の未来よりも自分の目先の欲をかなえること、苦痛から逃げることだけに固執する父親だということです。


子どもを自分の所有物のように扱う父親を持ってしまうと、娘の未来は暗くなります。
リゾートバイトの話で言えば、娘の社会的信用がなくなり、知恵を得るためになによりも大切な「人生経験」を積むことができなくなり、娘の新しい出会いも奪うことになります。
父親への恐怖の陰で他人と出会うことになれば、未熟な娘の判断だけで男性と出会うため、出会いの質が下がるのは当然で、質の低い出会いは悲劇につながります。


余談ですが、A子さんの父親は、子どもの将来よりも自分の目先のことを優先する人ですから、お酒、タバコ、ギャンブル、浮気、過食、過趣味などのどれかをやっているはずです。



◎ではなにが愛か


A子さんの場合、リゾートバイトをやり通すことが愛です。
リゾートバイトに行けば、きっと予想外の悪い出来事や期待外れの部分もあるはずです。
しかしやり通すことが、総合得点が最も高い愛です。
バイト中、イヤなことがあったとき、「お父さんの看病をしに帰ります」と言えば、誰も引き止めることはしないかもしれません。
しかしそれではリゾートに来るお客様に迷惑がかかり、A子さんだけでなく、A子さんの家族の評価も下がります。
一番愛に近い方法は、リゾートバイトをやり通すことです。



◎A子さんの未来


「知恵・大人の思考・愛」、これらに繋がる扉は、みなさんひとりひとりの心の中にあり、その扉には「あなたは無知ですか?」という質問が書いてあります。
自分の無知を認めなければ開かないんです。
お金や暴力では絶対に開けることができませんし、「はい」とウソをついても開きません。
知恵への扉は、唯一、自分の無知を本気で認めた時に開けることができるものです。


A子さんは、このまま自分の考えを変えなければ、その「扉」を開くことはできません。
彼氏ができても自分と同じ価値観の彼氏ですから、両親と同じ家庭を作ることになります。
しかし、もし「この状況ってなんかヘンだわ・これって愛じゃないでしょ」と気付くことができたら、その「扉」を開ける第一歩になるんです。


以下、「私には絶対に理解できない」という女性がいることを承知で書きます。


父親や彼氏の「オレが苦しんでるときにおまえだけ楽しむのか!」というプレッシャーに対して、または勝手にプレッシャーを感じて、「確かにそうだわ、私は楽しみを我慢する、父(彼)が苦しんでるんだもん」と考えるのは、一見「美徳」に感じるかもしれませんが、美徳ではありません。


もちろん一概には言えないんです。
しかしA子さんの場合で言えば、元気なお母さんも妹もいたわけです。
こんな状況であれば、A子さんの行動は愛ではありませんし、それをとがめることなく受け入れた父親の行動も愛ではないということです。
ですからこの家族に明るい未来はなく、また、表面上家族内では「和」を保っているように見えても、やがて破綻します。


「これは愛ではない」という状況に気付き、悪循環を断ち切ることができたとき、A子さんは愛に近づくわけです。
そのとき、A子さんの判断を理解できなかったり不快に思ったりする家族からは、なにかにつけて「猛反対」を受けるかもしれません。
しかし「愛」とはなにか考えて行動し、それが本当に愛であれば、A子さんは決して後悔しません。


A子さんのリゾートバイトのキャンセルは、愛ではありません。



この話、「私には絶対に理解できない」と思った女性は、よかったら5年後にもう一度読んでみてください。
違った感覚を味わえると思います。

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