ロッケンロールな道 ―虹の岬の喫茶店―

(読了目安12分)

以前、妻が「虹の岬の喫茶店」というマンガを借りてきました。
今回はそのマンガの話です。


これです。
表紙はきっと、喫茶店の店主とその飼い犬です。


この「虹の岬の喫茶店」というマンガは、千葉県に実在する「岬カフェ」を舞台にした心温まる物語です。

原作者は、「森沢明夫」という作家です。
彼はマスターと同年代で、バイクにも乗るらしく、親近感が湧きました。
しかしそれだけではなく、このマンガは、


「舞台が喫茶店」

「優しい女性店主がいる」

「店の真ん中に薪ストーブがある」

「バイク乗りのお客様が来る」

「店から海が見える」

「幼い女の子が登場する」

「店主の甥っ子が日曜大工をやる」

など、マスターの生活環境と似ていたため、とても興味深く読むことができました。


2011年の原作(小説)が映画化されたようで、吉永小百合・笑福亭鶴瓶さんらが演じた映画版では、タイトルが、「ふしぎな岬の物語」となっているようです。



自分のカフェを経営するために修行中のスタッフにこのマンガを渡したところ、「マスター、私この話、知ってます」と言っていましたから、noteの読者のみなさんの中にも、知っている人がいるかもしれませんね。



以下に沿ってマスターの視点から書いてみようと思います。


◎ロッケンロールな道

◎火災
◎バイク
◎コーヒー
◎まとめ
付録:コーヒーの味を決める要素


薪ストーブとコーヒーについて、少し専門的な話が混ざりますが、よかったらじっくり読んでみてください。

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◎ロッケンロールな道


マンガの中で、40代の男性(店主の甥っ子)が、進路に迷う20代の男子学生に、釣りをしながら言うんです。


「迷ったときはよ、ロッケンロールな道を行くとおもしれえぞ、いつもわくわくするほうの道を行くんだよ」


マスターはこの言葉が印象に残りました。
マスター自身、その生き方を選び、今があるからです。
みなさんも、もし迷ったときはロッケンロールな道がオススメです。
人生は一回だけの本番ですからね。


ただ、このセリフを言った40代の男性は、普段からタバコを吸っているんです。
人にはそれぞれ事情はあるにしても、もし特別な事情がないなら、彼の生き方は、大人のロッケンロールではないような気がしました。


彼はマンガの中では自分のライブハウスを建てていて、このライブハウスも喫茶店「岬カフェ」の隣に実在するようです。
店に行けば、どんな活動をしているかわかると思います。
ただ、タバコを吸うということは、物事の原因を外側に求める人ですから、争いの原因を作ってしまう可能性があります。
ライブハウスが順調に運営されていればいいんですが・・・


ロッケンロールな道を選ぶとき、注意しなければいけないことがあります。
人によっては、子どもの思考のままその道を歩き続けてしまうんです。
簡単に言えば、「オレ、ちょいワルおやじ」などと言いながら、お酒・タバコ・女遊び、そして犯罪ギリギリのことをやり、「オレってちょいワルでしょ・普通とは違うでしょ」みたいに自慢げな人もいます。
「ロッケンロールな道」でも「演歌の道」でも、目的地は同じ「愛」です。
愛にたどりつくために選ぶ道は人それぞれでいいですが、愛を見失うことはないようにしたいですね。


◎火災


ところで、マスターは薪ストーブが好きなんですが、このマンガにも薪ストーブが出てきます。
父親と幼い娘が喫茶店のドアを開けると、「いらっしゃいませ」と店主が迎えるシーンがあり、そのシーンに、薪ストーブが描いてあるんです
(喫茶店の外観の絵は、煙突があったりなかったりします・・・)。


・・・が、その絵を見た瞬間、「これじゃ火事になるぞ」とマスターはドキッとしました。


薪ストーブの煙突は、天井の板を抜けています。
そして、その煙突と、「木の板」と思われる天井に、「クリアランス(隙間)」がないんです。
もしマンガの絵が実際の状況を忠実に再現しているとしたら、「建築確認」は通らない構造です。
ですからこの薪ストーブは、「建築確認」の後に設置したことになります。
工事をしたのは明らかに薪ストーブに関して素人ですが、いったい誰が工事をしたんでしょうか・・・この煙突の取り回しを見たマスターは、不安が先立ち、わくわくできませんでした。
マスターにとっては、「ロッケンロール」というより、さらに激しい「デスメタル」の領域です。


気になってマンガの舞台になった「岬カフェ」を検索したところ、平成23年1月20日に「全焼」したとわかりました。
火災の原因が薪ストーブ関連だと思われるのが、以下のサイトやコメントでわかります。

日本酒とオートバイはやめられない
http://sakebike.blog.so-net.ne.jp/2011-01-29
(1年後に営業を再開したそうです)


マスターが想像した出火原因は、天井の木が煙突の熱で燃えたか、煙突の取り回しと燃やし方の不備による「煙道火災」、そしてその両方・・・つまり、煙突内に溜まった汚れによって煙道火災が起こり、その熱で煙突と木の板の接触部分から火災になった、というものです。


映画では、火災のシーンもあるようです。
しかし出火原因には触れていないようなんです。
マンガの第2巻以降で火災に触れることがあれば、出火原因がどうなるのか興味があるところです。
※第1巻に、火災を予感させる意味ありげなシーンがありました


余談ですが、以下の写真はマスターの店の薪ストーブです。
マスターの店にある2つを紹介します。
煙突まわりは火災にならないように処理しています。


1:店内の薪ストーブ
インテリアも兼ねて15年間使っています。
乾いた薪を使い、煙突温度が200度以上にならない燃やし方をします。
煙突からの液だれや、煙突の詰まりに困っている人も多いですが、マスターの店の薪ストーブは、煙突の取り回しと薪の燃やし方を工夫していることもあり、煙突掃除は3年に1回だけです。
もちろん煙道火災もありません。
周囲に積んである薪は、引火せず、薪に予熱がかかる位置関係です。

マスターの店の薪ストーブ


次に燃やす薪をストーブの中の手前に入れ、さらに余熱をかけます。
窓の左側の枝がそれですが、この位置でも引火はしません。

燃焼中






:屋根席の薪ストーブ
7年使用しているものです。
これも焼却炉、暖房、焼いもなどに使っています。
やっぱり屋外にあると錆びますね・・・




普段はこんなふうに使います。


では話を「虹の岬の喫茶店」に戻しましょう。


◎バイク

後半のバイクは、ホンダの「GB250クラブマン」です。
このバイクは35年ほど前のもので、数字的な走行性能よりも、ムードを大切にしています。
このバイクを選ぶ人は、きっと激しい性格ではなく、どちらかと言えば優しい性格なんだろうと想像できました。
マスターも乗ったことがあるバイクですが、森沢明夫さんも乗っていたんでしょうかね。


◎コーヒー

マンガには、店主の悦子さんがいれたコーヒーの味について、以下のような言葉があります。

「美味しい!例えようもないほどの優しい風味(30代?男性)」


「苦味の角のようなものがなくスッキリとしていて驚くほど美味しかった(20代前半男性)」


「息を飲むほどに美味しかった(20代前半男性)」


「なにか特別な豆でも?」というお客様からの質問に対し、店主の悦子さんは、「普通の豆よ、淹れ方にちょっとしたコツがあるの」と言っています。


ネット上の写真で見る実在の岬カフェには「KEYコーヒー」の看板があったので、マンガの悦子さんが言うように、使っている豆は特別なものではないと思います。
それに、20代前半の男性に、コーヒーの繊細な味がわかるとも思えません。
というか、味がわかるほどコーヒーの勉強なんかしていないはずですから、彼らにとっては、理屈ぬきで素直においしいんです。


ではなぜそんなにおいしいのか・・・


マスターにはわかります。


そう、心の問題なんです。
コーヒーの味を決定するには、「どんな豆を使っているか」以外に、少なくとも30以上の要素があり(最後に記載します)、ある程度の基準を満たし、かつ飲む側の心の状態が良ければ、豆がどうこうということはほとんど関係ありません。


興味がある人は、このnoteの「コーヒーあれこれ」マガジンと、「料理に愛を」マガジンを参考にしてください。
きっと店主の悦子さんも、マスターと似たような気持ちでコーヒーを淹れているはずです。




◎まとめ

「虹の岬の喫茶店」を読み、


「迷ったときはよ、ロッケンロールな道を行くとおもしれえぞ、いつもわくわくするほうの道を行くんだよ」


この言葉は、いい言葉だと思いました。
その他にも様々な名シーンがあり、感動を誘う内容でした。


ただ、マンガや映画の世界は、「万全の思考・万全の準備」の上に、とても美しく表現されています。
ですから、その美談だけを妄信すると、現実とのギャップに驚くことになります。


たとえばマンガや映画を見て「岬カフェ」に行くと、期待が大きい分、期待外れになることもあるかもしれません。
接客では、なるべく高い点数を取るのがプロですが、実際の営業は、全ての接客が「1テイク」だけの本番で、やり直しができませんから、たとえば満席が続くような混雑時に行けば、マンガや映画のような接客は、まず受けられないわけです。
また、マンガや映画では、「キレイ」なところだけを見せますが、現実はそうもいきません。
トイレだって、前に使った人次第でキレイだとは限りませんし、設備の老朽化が進んだり、壊れてしまったりして、「直さないといけないなあ」と思いながら放置しているところも、お客様の目に入ることだってあります。

今、現実の中に生きているみなさんにとって大切なのは、マンガや映画の世界にのめりこむことではなく、人間の不完全性を信じ、自分というオリジナルブランドで生きることです。

「あの人が優しければ幸せになれるのに」

「理想のお店じゃないからショックを受けた」

など、外的な要因に一喜一憂するのではなく、あなたが「不動」のオリジナルブランドになってしまえばいいわけです。
自分がオリジナルブランドになってしまえば、「ロッケンロールな道」に限らず、どんな道を歩いても、あなたはいつだって幸せでいられます。



付録:コーヒーの味を決める要素
(コーヒーに興味がない人は読まずに一番下へどうぞ。マスターが犬になった写真があります)

以下の要素が複雑に絡み、コーヒーの味が決まります。


<豆の要素>
保管状態
新鮮さ
挽き方(粒の大きさと均一性)
豆の種類
豆の焙煎
ストレートコーヒー(単一品種)は年毎の味の違いを楽しむ
ブレンドコーヒーは味の安定感を楽しむ
臼式で挽いたか
羽根式で挽いたか
挽きたてか


<水の要素>
水の硬度
水のニオイ
水(お湯)の温度


<ドリップ方式>

ペーパー
ネル
サイフォン
フレンチプレス
など

マスターはペーパードリップを採用していますが、
ペーパーの種類
ペーパーの大きさ
蒸らし時間
ドリップの湯面の高さ
水の進入角度(勢いがあると豆が回転してしまう)
などの要素で味が変わります。


<ドリッパー>
たとえば、
メリタ
カリタ
コーノ
など、それぞれのドリッパーごとに適切な方法があり、
どの会社も、「自社が一番おいしい」と宣伝しています。



<カップ>
容量
深さ
飲み口の口径の大きさ
厚さ

におい(主にモラクセラ菌が発生する
生乾きのニオイがあると、コーヒーの全てが崩壊します)


<コーヒーの濃さ>
人によって好みの濃さがあり、
同じコーヒーでも濃さで味が変わる


<コーヒーの温度>
適温かどうか
「冷めると酸味が出やすくなる」
「カフェオレは熱すぎると味がわかりにくい」
など


<環境の要素>
店内の温度
店内の湿度
店内のにおい
店内の清潔感
店内の趣き(清潔感だけでは表現できない独自の雰囲気)
外の景色
屋内か屋外か(風速とニオイの関係)


<人間の要素>
体調
心のストレス度
店主との信頼関係
店に来るまでの思い
飲みたくて飲むのか付き合いで飲むのか



いま、パッと思いつく範囲でも50ぐらいの要素がありましたね。
これらを考えながら実験を繰り返すと、組み合わせは無数にあるということがわかると思います。
落ち着いた環境で100以上の実験をすれば、コーヒーのおいしさについて語れるようになるかもしれませんが、なんと言っても、人間の体調は日々変わっていて、クリーンな実験室で数字的に同じものを飲んだとしても、同じ味に感じるかどうかは別の話です。


マスターは20年間、ほとんど同じコーヒーを飲み続け、それを軸にコーヒーについて考えるようにしていますが、基本的に、インスタントコーヒー、缶コーヒー、豆のコーヒー、どれもおいしく飲めます。
豆のコーヒーは、値段が安いものでも高いものでも、挽き方や濃さ、温度、砂糖、ミルクなどで好みに調整します。


なんだかんだ言って、どんなコーヒーでも感謝しておいしく飲める人が、愛に近い人だと思います。
これは「紅茶」でも同じことが言えるでしょうし、結局、料理に関しても言えることだと思います。
そして最終的には、人生そのものにも言えるはずです。
「幸せの要素」を考えたとき、収入、職種、住む場所などがありますが、自分の心が「私は幸せです」と決めることができれば、収入や仕事、住む場所に関係なく、幸せになることができるんです。
ただ、いつも書くように、「私は幸せです」と本気で信じるには、相応の努力が必要になります。



今回は長い投稿でしたね。
最後までありがとうございました。


おまけ:
マスターの店の前の公園で、マンガの表紙のマネをしてみました。
マスター(犬役)と妻(主人役)です。

・・・

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