愛をそそがない店はどうなるか

(読了目安8分)

以下、大手ドーナツ店についてのエピソードで、「やることをやらないと、相応の結果になる」という話です。
マスターも子どもたちも、ドーナツが好きです。
そしてマスターは飲食店を経営していて、20年ほどトイレ掃除をしてきました。
そんなことをふまえて読んでみてください。
この話は仕事や人間関係、恋愛、結婚生活に応用できると思います。

・・・

◎大手ドーナツ店の3重のミス

以前、それまで時々利用していた大手ドーナツ店に、その日の一番客として入店したことがありました。
妻と席に座ってドーナツを食べる前、トイレに行こうかと思っていたところ、ちょうどトイレから従業員が出てくる姿が見えました。


マスターはその従業員と入れ違いでトイレに入ったんですが、そこで不思議な光景を目にしました。


なんと、便器の内側が汚れていたんです。
便器を見れば誰にでも目につく場所ですから、その従業員はトイレ掃除をしないまま出てきたということです。


マスターは、マスターの次のお客様が不快になるのがイヤだったことや、飲食業界の評判が悪くなるのがイヤだったことなどがあり、その汚れを拭こうとしました。
しかし・・・その汚れは乾いていて、明らかに前日(またはそれよりも前)のものだったんです。
つまり前日の閉店後、従業員は閉店後のトイレ掃除をしなかったんです。
そして次の日、オープン直後にトイレから出てきた従業員も、開店前のトイレ掃除をしなかったんです。


リアルな話になってしまってすみませんが、便器についた乾いた汚れには少し「厚み」があり、きれいにするには、水を含ませたトイレットペーパーを張り付け、しばらく汚れをふやかす必要があったため、マスターは掃除することを諦めました。
ドーナツを食べる前だったこともあり、トイレについてそれ以上考えるのもイヤで、トイレの件は保留したまま妻とドーナツを食べました。


前日の掃除を怠り、開店前の掃除も怠ったということで、ドーナツ店はこの時点で、すでに2重のミスをしています。

また、マスターにとって致命的だったことは、そのドーナツ店の親会社が、清掃業大手企業なんです。
汚れたトイレは誰にとっても「愛」ではありませんよね。
清掃業大手が経営している飲食店なら、業界一の清潔さを誇るぐらいの実践が必要かもしれません。
それが親会社の実力を見せることでもあり、お客様への愛だからです。
そして知っている人もいると思いますがドーナツ店親会社の看板には「愛の店」と書いてあるものもあります。


清掃業大手企業が経営する飲食店のトイレが汚い・・・ここで3重のミスです。


考えられるのは以下のようなことです。


従業員は、「なんで私が掃除をする必要があるの?」と、仕事を押し付け合っているわけです。
押し付け合っている理由は、「なんで私がこんな仕事をしなければならないの?」という気持ちがあるからです。
そしてそんな気持ちになるのは、目先のことしか考えていなかったり、他の従業員と比較して割に合わない仕事だと考えているからです。

また、親会社が清掃業大手にもかかわらず、掃除の指導が徹底していないわけですが、従業員が掃除をしないのは、上層部が尊敬されていないからです。

つまり、組織内の人間関係に愛がないんです。
「愛の店」という看板を掲げている会社に、愛がないということです。


さて、「清掃業大手」が経営する飲食店で、「前日からトイレ掃除をしていない」という珍事があったことで、マスターはちょっとイヤな気持ちになってしまいました。
しかしその場ではマスターはなにも言わずに店を出ました。
愛のない従業員たちには、顧客の言葉は届きませんからね。
それどころか、もしマスターから指摘されたら、店員はトイレ掃除をしなければならなくなり、マスターのことを「あいつ、うざい」と考えますから、両者ともイヤな気分で終わります。



◎さらなるミス


帰宅後、マスターは、ネットでのサイトを見つけ、問い合わせフォームにその日の出来事を書いて送信しました。
ドーナツ店からの返信は、「電話でもメールでも可能」だとのことだったので、マスターは「メール」での返信を希望しました。


消費者がメールでの返信を希望する理由は主に以下の3つです。

1:お互い時間に縛られずにすむこと
2:回答が証拠に残ること
3:顧客側に言語障害や聴覚障害がある場合の対策として


さて、マスターは「メール」での返信を希望しました。
しかし、ドーナツ店からは、「電話」がかかってきたんです。


これで4重のミス・・・もうメチャメチャです。


ドーナツ店がメールでの返信をしなかった理由を尋ねると、「誠意をこめて直接お伝えしたかったからです」と言っていましたが、実際は、自分たちがやましいことをしているので、証拠に残したくないわけです。


本当に誠意を込めたいなら、「メールでお願いします」という顧客には、メールで返信する必要がありますよね。


また、「電話」では、マスターの時間的な都合を無視していますし、マスターに言語障害や聴覚障害があったとき、会話がギクシャクします。
自分の発音にコンプレックスがある人は、「電話」を避けたい人もいます。
「顧客のため」と言いながら保身に徹する企業は多いですが、このドーナツ店もそうでした。


4重のミスを重ねる企業ですから、ここからの対応はもうグダグダでした。
話してもムダだとわかったため、マスターはこのドーナツ店から離れることを選びました。


上にも書きましたが、ドーナツ店の従業員がトイレ掃除をしない理由は、

「トイレ掃除は私の仕事じゃない」

「汚い仕事はできるだけしたくない」

「気づかないフリをしていれば誰かがやるだろう」

などと考えているからです。


この考え方が蔓延した職場は、人間関係にひずみがあり、愛がベースではなく、従業員たちの目先の欲がベースの営業になっています。


◎この店はどうなったか


この体験を経てマスターは「この店の未来は暗い」と判断したんですが、みなさんは、このドーナツ店がどんな運命をたどるかわかりますか?


おそらく開店当初は盛大にオープニングセレモニーをやり、初めの数年は好調な営業だったかもしれません。
しかしその後、従業員の誰もがトイレ掃除をイヤがり、目先の利益を追求するようになっていったのかもしれません。
まるで子どもの思考の人同士が演じる「人間関係」のようです。


マスターはすでに興味をなくしていたので、その後を気にしていなかったんですが、久しぶりに近くを通ったら、ドーナツ店はコインランドリーになっていました。
マスターは思わず「うん、それでいい」とつぶやいていました。

調べてみたところ、約9年の営業だったようです。
意外と頑張ったと思いますが、やはりあの状態では閉店は見えていました。個人経営の店なら店主の体調不良で閉店される場合もありますが、チェーン店の閉店は、顧客に愛をそそげなかったことの状況証拠です。


「閉店の理由」については、表向きの理由と、本当の理由があります。
店長や本部から従業員に対して公式に発表される閉店の理由は、おそらく以下のようなものです。

・顧客ニーズの変化

・競合店の台頭

・ライバル商品の台頭

・原材料費の高騰

・人件費の高騰

・地域の人口の減少

・世界的景気の悪化

しかしこれらの理由では理由になりません。
店がどんな場所にあっても、たとえ同じものを売り続けても、顧客優先の仕事をし、顧客から必要とされれば閉店しなくて済むからです。


上記の理由は、原因を全て「外側」に求めています。
「他人のせいだ」と決めてしまえば楽ですが、実際は店長の経営方針や態度に問題がある場合がほとんどです。
20年間レストランを経営してきたマスターが考える理由はシンプルです。
単に、店長やスタッフに愛情をそそぐ力がなかったからです。


たとえば、男性の店長が自分がトイレ掃除をしたくなくて女性アルバイトに押し付ければ、「なんで私がやらないといけないの?」となります。
また、店長が女性のアルバイトに手を出したりすれば従業員の中で人間関係が乱れ、ミスの連発や飲酒が原因のトラブルなどが起こります。
従業員が職場の人間関係で悩み、中には仕事中にため息をついたり泣いたりする従業員が現れたかもしれませんし、顧客の前で不機嫌な態度が出てしまったりしたかもしれません。
その結果店員のモチベーションが下がり、マイナス感情がお客様に伝わったのかもしれません。


やがて顧客のリピート率が減り、会社は「コスト削減」に走ります。
コスト削減に走った結果、人件費の削減に手を付け、従業員はモチベーションがさらに低くなり、職場は愚痴を言う人の集まりになります。
そして経営上層部には、顧客と従業員の両方からクレームが殺到します。


これでは売り上げが伸びるはずもなく、やがて「閉店」です。


ドーナツ店とその母体の企業について名前がわからないと気持ち悪い人もいると思います。
直接書くことはしたくないのでヒントを書いておきますね。
ドーナツ店は「ミ○○ードーナツ」、母体の大手清掃業の企業は「〇ス〇ン」です。


◎トイレが汚い店


トイレが汚れるのは仕方ないですが、頻繁に掃除をすることはできるはずですよね。
つまり、店のトイレの汚れは、その店の人間関係や、経営者の精神状態などを表しているんです。
ドーナツ店の他にも、トイレが汚くて噂になっていたコンビニは、汚さが改善されないまま閉店になりました。


◎まとめ


たとえば個人飲食店の場合、3年で半分、5年で9割がつぶれると言われています。
理由は、顧客に対する愛を忘れ、目先の利益を追求するからです。
この数字は、人間関係にも似ています。
きっと結婚後3年で半分の夫婦は愛情が薄れ、結婚後5年たつと、9割の夫婦が結婚式での誓いを守らなくなってしまう・・・5年で離婚するかどうかは別として、これが現実と言えそうです。
店の経営も夫婦関係も、長く続けるポイントは、不都合の原因を外側のせいにせず、愛をそそぐことができるかどうかです。

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