先人の知恵を受け継ぐ

(読了目安9分)


人類は、世代を重ねるごとに成長し、愛に近づいています。
人類の歴史を200万年とした場合、何万という世代を経て、住む場所は「洞窟」から「住宅」、そして移動手段は「徒歩」から「飛行機」になりました。


洞窟の中で、寒さと恐怖に震えていた時代から、なぜ人類がここまで成長したか、みなさんはわかりますか?
それは、先人の知恵を受け継いできたからです。
先人の知恵を次の世代が受け継ぎ、新しいひらめきを加えながら、一歩一歩成長を続けてきたんです。
先人の知恵を踏み台にしながら成長することが、人類の歴史です。


「先人の知恵」を受け継ぐことで、多くの人が、より早い段階で成長し、愛に近づけます。
たとえば、「パンを切る作業」について書いてみましょう。
マスターの家では、ほぼ毎日、朝食に焼きたての食パンを出しています。
焼きあがったらすぐに切り分け、アツアツの状態でテーブルに運びます。
その焼きたてパン、実は今まで何十人かのスタッフに切ってもらったんですが、初回でお客様に出せるような美しいレベルで切れた人は、ちょっとしたコツを知っていた数人だけでした。
焼きたてパンは、ある意味難しいからです。


たとえば、慣れていないA子さんに切ってもらうとします。
するとパンが潰れ、断面がガタガタになってしまって悲惨な状態です。
しかしA子さんは「キレイな完成形」を知りませんから、自分が切ったものが悲惨な状態かどうかは、あまり理解できないんです。
「なんとなく汚い?うまくいっていないのかなあ・・・」程度です。
彼女は焼きたてのパンを切ったことがないわけですから、うまくできなくていいですし、うまくできていないことがわからなくてもいいのかもしれません。

さて、そこでマスターが偉そうにパンを切って見せると、なぜかパンが潰れず、断面も滑らかです。
しかも短時間で仕上がります。
比べてみるとA子さんにも仕上がりの美しさがはっきりわかり、「うわー!」っとなります。


マスター 「食卓に出されるならどっちの方が嬉しい?」

A子さん 「マスターが切った方が嬉しいです!」


厨房ではこんな感じの会話になります。


キレイに切られたパンは、出されても嬉しいですが、切る側も楽しいんです。
自分も相手も嬉しいということですから、もちろん「愛」ですよね。


さて、パンを切るだけでなぜこれほどの違いが出るのか、この時点ではA子さんにはわかりません。
しかしマスターはA子さんの切り方を見ていますから、なぜ潰れたり断面がガタガタになるのか説明できるわけです。


刃物の仕組みや刃の動かし方について素直に説明を受け実践したA子さんは、練習を重ねるごとに上達し、数日後にはお客様に出せるレベルで切ることができるようになりました。


たった数日間の練習で「美しい仕上がり」になるわけです。


A子さんは自分に自信をつけることができましたし、そのパンを出された人も嬉しく、マスターも嬉しいですから、これが「私もあなたも周りも楽しい」という状況、つまり「愛」を発信できている状態です。
先人の知恵を受け継ぐことで、A子さんは愛を発信できるようになったわけです。


こんな状態をいかに多く作れるかが、「いかに多く愛したか」ということです。


さて、「パン切り」の話は続きます。
実はそれまでにA子さんは、マスターがパンを切っている姿を何度も見てきたんです。
しかもマスターも、「よく見ててね」と言っているんです。
しかし実際に自分がやってみると、よく見ているはずなのに、うまくできない・・・


なぜでしょうか・・・


その理由は、「目の付け所」が本質からずれているからなんです。


A子さんに限らず、マスターと同じように切っているつもりでも、実際は違うことをする女性が多くいます。
まず、パンを釜から出すときの動作が違い、パンの置き方、刃を乗せる場所、刃の動かし方など、きれいに切るために必要な数項目のポイントをマスターと違う方法でやってしまうんです。
しかしマスターの助言を受けると、すぐに改善され、数日後にはキレイに切れるようになります。
そしてキレイに切れるようになると、「自分がしてきた切り方」が、どう間違っていたか理解できるようになります。


まとめると

1:「パンをうまく切ることができない人は、うまく切れていないことに気付くことはできる」

2:「うまく切れる人の切り方を見ているだけではマネできない」


3:「うまく切れる人の助言を受けるとすぐに上達する」


4:「自分が上達すれば過去の自分の間違いが理解できる」


という感じです。


さて、では、ここからが大切なところです。
上記4項目を、みなさんの人生に当てはめて考えてみましょう。


1:「パンをうまく切ることができない人は、うまく切れていないことに気付くことはできる」

これは、「人生を美しく生きていない人は、美しく生きていないことに気付くことはできる」ということです。
「美しく生きたい」と願いながら、「なんかおかしい・求める人生とは違う気がする」という状態です。




2:「うまく切れる人の切り方を見ているだけではマネできない」

これは「美しく生きている人の生き方を見ているだけではマネできない」と言い換えることができます。
美しく生きているように見える人を見ていても、彼らが具体的になにをしているのかよくわからない、自分との違いがよくわからない、ということです。




3:「うまく切れる人の助言を受けるとすぐに上達する」
「美しく生きている人から助言を受けると、美しく生きることができるようになる」ということです。
助言をもらうだけではなく、素直に聞き入れ、実践してはじめてパンがうまく切れるのと同じように、聞き入れて実践することで人生が好転していきます。
ただ、好転していることに気付くには、パンを切る練習よりも遥かに長い時間が必要になります。




4:「自分が上達すれば過去の自分の間違いが理解できる」
「自分が美しく生きることができれば、過去の自分の過ちが理解できる」ということです。
パンをきれいに切ることができるようになると、以前の切り方に戻る気は全くなくなります。
切る楽しみや仕上がりが明らかに違うからです。
同じように、美しく生きることができれば、以前の生き方に戻ることはなくなります。
充実感が明らかに違うからです。


以上4つの説明でした。


人は、「人間関係や仕事がどうもうまくいかない」と感じることはできても、自分がなにをしているからそうなってしまうのか、わからないんです。

「しなければいけないことをしているか」

「してはいけないことをしないでいるか」

これらがわからないんです。
なにをしているのかわからないから、改善もできません。


人生を美しく生きている人は、他人の行動を見ればどこが美しくないかわかります。

「パンを美しく切れる人は、パンを美しく切れない人に助言ができる」という話と同じです。

ですから、「人間関係や仕事がどうもうまくいかない」と思っている人は、美しく生きている人を見つけ、自分がなにをしているか指摘してもらい、その助言を聞き入れて実践すれば、「美しく生きられる」ということです。


自分という道具を正しく使うと人生は美しく平和になります。
自分という道具の使い方を間違えると、荒れた人生になります。


美しく生きることを実践すれば、自分の過去の間違いにも気付きますから、「今、この生き方でいい」とはっきり自覚でき、ストレスもなくなります。
パン切りで例えれば「今の切り方でいい」とはっきり自覚でき、昔の切り方に未練がなくなる、ということです。


さて、そうなると、美しく生きるためにまずやらなければならないことは、「美しく生きるとはどういうことか」について、はっきりと理解することです。


誤解しやすい例として、

「有機農業は美しい生き方!」

「私は人を癒して生きていきたい!」

などと熱くなると、実際の「有機農業」や「癒し系」の世界には、決して美しく生きている人ばかりではないと思い知らされることになります。
「地球にやさしい生活を」と言いながらケンカをしている有機農家の夫婦はたくさんいますし、人を癒すヒーラーが、愚痴や飲酒まみれになっていることもよくあります。

どこかで歯車が狂い、「有機農業なんてしなければよかった・癒しの仕事を続けていいんだろうか」と嘆いている人も多くいます。


また、一部の若い女性は、お酒に詳しい男性を見て、「イケてる大人よね」と勘違いし、「私もあんな人になりたーい!」と、目がハートになってしまうことがあります。
しかし、極端に言えばお酒を飲む男性と関わって楽しいのは初めだけで、最終的にはお酒を飲まされ、ストレス解消のために利用されて終わりです。


「美しい生き方」というのは、どんな場所でどんな仕事をしていても実現できるものです。
有機農業なら美しいとか、金融関係なら汚いとかそういうことではなく、「心の持ち方次第で美しく生きられる」ということなんです。
大切な人がいる人はお酒を飲みませんから、お酒に詳しい人(お酒を飲む人)が、美しい生き方をしているか書くまでもないことです。


まとめますね。
美しく生きるとは、ストレスなく生きること、ストレスなく生きることとは、愛をそそいで生きること、つまり、美しく生きるとは、愛をそそいで生きることです。
これをはっきり理解できたら、あなたの身の周りにいる「愛をそそいで生きている人」を探しましょう。
パンを美しく切るのと同様、美しく生きている先人の知恵を受け継ぐことができれば、早い段階で多くのことに気付き、美しく生きられるようになります。
そして美しく生きることを実践すれば、自分の過去の間違いにも気付きますから、「この生き方でいい!」とはっきり自覚でき、昔の生き方に未練はなくなります。


先人のパンの切り方を観察するだけではマネできないように、美しく生きている先人を観察するだけでは、美しく生きることは困難かもしれません。
美しく生きている先人から、直接言葉で具体的な知恵を受け継いでください。

・・・

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