トマトを世界一美しく切ってみましょう 1 ―くし型トマトの比較―
(読了目安8分)
今回の投稿は、みなさんの技術のレベルアップだけでなく、外食のときにその店のシェフの腕前をチェックするのにも役立ちます。
では始めましょう。
もしできる人は、トマトのくし型切り(8等分)を切ってみてください。
そしてそれを観察しながらこの投稿を読んでください。
以下の2つのトマト、もしあなたの生き方そのものだとしたら、どっちを選びますか?
1:マスターが切ったトマト
2:フードコーディネーターの資格を持った21歳女子が切ったトマト
やっぱり1のトマトですよね。
人生も同じなんです。
もし選べるなら、みなさんは1のような人生を選んでください。
1が「長く愛される人生」を象徴する写真、2が「愛されない人生」を象徴する写真です。
言い換えると、1が「大人の思考の切り方」、2が「子どもの思考の切り方」です。
大人の思考の切り方というのは、トマトの気持ちを考えた切り方です。
トマトがどう切られたいと願っているか考え、その願いに沿うように実践する切り方です。
自分の都合や思いを通そうとするのではなく、あくまでもトマトの都合を察し、トマトが求めているように切ります。
一方、子どもの思考の切り方というのは、自分がやりたいようにやる切り方です。
トマトの都合を考えず切るので、2のような仕上がりになります。
長く愛されるためには、もちろん1のような人生を実践する必要があります。
口論が絶えず、昼間からお酒を飲んで毎日パチンコに通うような人生は2です。
大人の思考の切り方だと、4等分されたトマトをさらに4つに切り分けることもできます。
写真のように、4等分したトマトを・・・
さらに4等分し、16等分の大きさにします
もちろん種は出ていません
上から見るとこんな感じです
正面
ここまで薄く切ってもトマトはつぶれません
横から
トマトはつぶれず、まな板に対してほぼ「点」で接触しています
大人と子どもの切り方・・・並べてみると一目瞭然です
大人の思考の切り方は、やっぱり美しいんです。
以下、みなさんが切ったトマトとマスターが切ったトマトを細かく比較してみましょう。
マスターが切ったトマトと違いがあるとしたら、どこでしょうか。
違いを理解できると、きっと人生が変わるはずです。
※トマトの切り方は次回紹介します
◎7つのチェックポイント
トマトが美しいかどうか、見るべきところは大きく7点あります。
1:断面のツヤがあるか
2:直線部分が滑らかか
3:トマトの先端部分の皮が剥がれていないか
4:丸い部分がつぶれていないか
5:皮が身から剥がれていないか
6:ヘタの断面が美しいか(ツヤがあるか・皮が剥がれていないか)
7:種が身に包まれているか (まな板の上に種が出ていないか)
以下、1から順に写真を見ながら説明します。
写真は全て、「同じ包丁」で「同じトマト」を切ったものです。
切り方によって全然違う表情になることがわかると思います。
1:断面のツヤがあるか
左のトマトにはツヤがなく、右のトマトにはツヤがあります。
比べるとすぐに違いがわかると思います。
食材を切る時に、包丁の「刃渡り」を長く使うほどツヤが出ます。
みなさんのトマトの断面には「ツヤ」がありますか?
2:直線部分が滑らかか
この2枚の写真、画面上部の直線部分に大きな差があることがわかると思います。
上の写真はきれいな直線を保ち、下の写真は崩れてガタガタになっています。
切る時に刃渡りを長く使っているかがポイントになります。
トマトを優しくなでるように包丁の刃が入ることで、きれいな直線を保てます。
みなさんのトマトは、直線が滑らかでしょうか。
3:トマトの先端部分の皮が剥がれていないか
トマトの皮が身から剥がれないように切れれば上の写真のようになります。
みなさんのトマトは、トマトの先端部分の皮が剥がれていませんか?
4:丸い部分がつぶれていないか
トマトは丸いですから、まな板に触れている部分は、本来「点」のはずです。
しかし刃渡りを長く使わず、上から押し付けるように切ると、丸い部分がつぶれてしまい、つぶれ方がひどいほど、まな板に触れる部分が平らになってしまいます。
また、柔らかいトマトの場合は種が出てしまいます。
これが「良い例」です
まな板との接触部分が少ないことがわかります
みなさんのトマトは、丸い部分がつぶれていませんか?
5:皮が身から剥がれていないか
以下、2枚とも皮が剥がれた例です。
包丁を前後に動かす量が少ないほど、この現象が起こりやすくなります。
みなさんのトマトは、よく見ると皮が身から剥がれていませんか?
6:ヘタの断面が美しいか(ツヤがあるか・皮が剥がれていないか)
ヘタを取り除いた断面部分が見えるように2つ並べたものですが、右側のトマトのヘタの部分が悪い例です。
ツヤがなくザラザラです。
以下の写真は総合的に悪い例です。
皮のめくれ、身のつぶれなどが目立ちます。
ここでは画面左、ヘタの部分の皮のめくれ方に注目してください。
「ツヤのある平面」だけで構成されていれば美しいはずです。
包丁の先端でヘタをくりぬく方法がありますが、その方法では、でき上がったトマトのヘタ部分がガタガタになります。
みなさんのトマトは、ヘタを取り除いた部分の断面が美しいでしょうか。
7:種が身に包まれているか (まな板の上に種が出ていないか)
これが「種が出ていない良好な状態」です。
硬いトマトなら、種が出ることはほとんどありませんが、柔らかいとまな板の上に種が出てしまうことが多くなります。
みなさんのトマトは、つぶれて種が出ていないでしょうか。
以下の写真を見てみてください。
上から順に、
子どもの思考
↓
子どもと大人の中間の思考
↓
大人の思考
の切り方です。
ポイントは、全て同じトマトを同じ包丁で切っているということです。
ひとつひとつ解説します。
1:子どもの思考の切り方
ツヤがなく、つぶれていて、皮も剥がれ、「バタバタしている」と言っていい切り方ですが、本人は気付いていないか、気付いていても改善できない状態です。
子どもの思考だと、人間関係もこんな感じになり、トラブルが絶えません。
ときどき、こんな生き方になっている大人がいます。
2:子どもと大人の中間の思考の切り方
1よりマシですが、断面にツヤがなく、直線部分が乱れ、皮が身から剥がれています。
ほとんどの人は、人生を改善できる余地があり、しかもその実力もありながら、この写真のような人生を送っています。
3:大人の思考の切り方
相手の都合を考え、実践した結果、このように切れるようになります。
ツヤ、ラインが整い、皮の剥がれもつぶれもありません。
切る側と切られる側の関係が良好だとわかると思います。
人生で言えば、「私もあなたも周りも楽しい・長く愛されている」という状態です。
もう一度、奥のトマトから順に大人になっていきます。
みなさんも自分で切ったトマトも含め、いろいろとチェックしてみてください。
写真を見て気がついたと思いますが、「同じトマト」を「同じ包丁」で切っているということは、「包丁という道具の使い方次第で、トマトは良くも悪くもなる」ということを示しています。
これは、
「あなた自身という道具の使い方次第で、あなたの人生は良くも悪くもなる」
ということを意味しているんです。
切ることの本質を考えずに切っている段階では、自分が食材に対してなにをしているのかわからず、食材からの声もなかなか聞こえてきません。
しかし「切る練習」をすると、野菜の声を理解できるようになり、切るのが楽しくなるんです。
人生でも同じことが言えます。
生きることの本質を考えずに生きている段階では、自分が他人に対してなにをしているのかわからず、他人からの声もなかなか聞こえてきません。
しかし「生きる練習」、つまり「愛する努力」をすると、人の心や社会の仕組みを理解できるようになり、生きるのが楽しくなるんです。
切る練習をすると、切るのが楽しくなる
生きる練習をすると、生きるのが楽しくなる
ということです。
「切る練習」はすぐに効果が現れますから、実感するのは簡単です。
しかし、「生きる練習」に関しては、時間がかかりますし、その場で効果が出たかどうか確認するのも大変です。
しかしマスターはわかっています。
「切る練習」も「生きる練習」も、本質は同じです。
「切る練習」は、「生きる練習の必要性」や、「生きる練習はムダにならない」ということを、わかりやすく示してくれるものです。
◎まとめ
トマトで言えば、自分の技術が上がらないと、他人の技術レベルがわからないだけでなく、自分がなにをしているのかもわかりませんし、他人が切ったトマトを見てもそれがどんなものなのか、本質が見えません。
人間関係で言えば、自分が美しく生きていないと、他人の美しさがわからないだけでなく、自分がなにをしているのかもわかりませんし、他人の生き方を見ても、本質が見えません。
「派手な演出」や「言葉」、それから、「有名大学卒・一流企業社員」などという肩書きに注目してしまい、その人の本質を見極められなくなります。
自分の技術が上がると、他人の技術が見えるようになります。
同じように、自分が美しく生きると、他人の美しさが見えるようになります。
・・・
今回は主に、トマトのくし型切りを見るときの、7つのチェックポイントの話でした。
外食に行ったとき、トマトのくし型切りがあったらチェックしてみてください。
その店のシェフの腕がわかり、ひいてはその店自体のレベルも見えてきます。
(人間を見るときのチェックポイントについては、このブログ全体に書いてあります)
次回は「切り方」を説明しますね。
きっと今より上手に切れるようになります。
お楽しみに。
・・・
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